初秋の熊本の風物詩 「藤崎八旛宮例大祭」 勢子になって馬と練り歩く

初秋の熊本の風物詩 「藤崎八旛宮例大祭」 勢子になって馬と練り歩く

勢子(せこ)として飾り馬を追った。加藤清正の時代から続くという藤崎八旛宮の例大祭。一新校区飾馬一新会の一員に交ぜていただき、藤崎宮と御旅所の往復を練り歩いた。

一新会の奉納順は67団体のうち54番目。朝9時。「一新会」と描かれた法被に帯を締めると「さあ行くぞ」と気合が入った。

先頭を切るのは優しい顔つきの裕祭号(雄、2歳)だ。子孫繁栄を願う紅白の飾り物ものを背に載せる。前垂れの「一新」が町内の結束を強める。

朝随兵

朝随兵。下通を新市街方面へ=熊本市中央区

「ドーカイ、ドーカイ」「ドーカイ、ドーカイ」。マイク係のかけ声とラッパと太鼓の大音量に気持ちが高まる。かけ声は差別的なニュアンスがあるとも言われた3文字から「ドーカイ」に変わった。

見物客であふれる上通、下通を過ぎて、日銀熊本支店前で古町方面に。快晴で気温が30度ほどもあり、法被の下のシャツが汗ばむ。

「踊れ、踊れ」と、太鼓の後ろでマイクを持つ古内隆起さん、台車の上の森蛍さんから、かけ声が飛ぶ。見よう見まねでうちわを振って、体を左右に動かした。特に決まった踊り方はなく、個々人が好きなように踊る。一体感があるような、ないような感じが熊本っぽいのか。

勢子の威勢の良さを競った時代に比べると、今は「やってはいけないこと」が、たくさん増えたそうだ。下品なかけ声もご法度。「随分お上品になった」「神事なので、当たり前」と反応はさまざま。物足りなさを感じる勢子もいるようだ。

裕祭号は西原村からやってきた。1080キロもある巨体。馬を引く口取頭の森裕二さんは「馬の虐待と思われるようなことはしないよう注意しています」と真剣な面持ちだ。

口取にとっては、週に3度ほど馬を引く訓練をしてきた成果を出す場でもある。人のかけ声やラッパの音、アスファルトにも慣れさせてきた。森裕二さんは「きょうは馬の体調もいい」と表情を引き締めた。

口取のみなさん

口取のみなさん

唐人町通りに入って、なじみの「唐人町のケーキ店屋さん」前でご夫婦がうちわであおいでくれて、うれしかった。

いよいよ地元新町へ。「地元に戻って参りました!」とマイク係。全員で万歳三唱した。

一新校区の住民は、「地元の祭り」という思いが強いという。藤崎宮はもともと今の藤崎台球場の場所にあったことから、「自分たちは氏子」という意識が高いのだそうだ。

実際、一新校区では、熊本新町獅子保存会が獅子舞を、校区自治協議会町鉾保存会が「武者頭」をそれぞれ奉納するなど、古くから例大祭に深くかかわってきた。加えて「400年続く祭りを子どもたちに引き継ぎたい」と5年前に、飾り馬奉納にも新たな気持ちで参加することになった。今年からは小学生も参加。小4の奥村心優ちゃん(10)は「踊りが面白い」、妹の茉菜ちゃん(9)は、はにかみながらも「たのしい」と笑顔だった。

朝随兵(ずいびょう)は一新幼稚園に着くまで1時間半を要した。

夕随兵

夕随兵。元気よく、船場橋を過ぎる。

藤崎宮に戻る夕随兵は、藤崎台球場から北風が吹いた夕方6時に始まった。「お待たせしました一新会!」とマイク係のかけ声で、藤崎宮を目指す。朝よりも勢子がずっと多い。約170人いる。新市街に入ったころには日が暮れた。ネオン街で、飲食店の従業員が水分補給にお茶を出してくれた。下通では水打ちにかかり、すがすがしくなった。

新市街方面

新市街方面へ向かう

藤崎宮の鳥居をくぐったのは午後7時半ごろ。「いやさか、いやさか」。出店が連なる参道をかけ声に合わせて跳ねた。一新会の森久裕会長は「熊本の風物詩をみんなで残しましょう」と締めた。

汗をかいたのに蒸し暑さは感じられなかった。まさに随兵寒合(がんや)。例大祭の時期になると、朝晩はひんやりしてくるという県民の言葉だ。熊本の秋は彩りを深めていった。

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