熊本の観光地巡る人気漫画「今日どこさん行くと?」 地震からの復興を応援 作者・鹿子木灯さんに思いを聞いてみた

熊本の観光地巡る人気漫画「今日どこさん行くと?」 地震からの復興を応援 作者・鹿子木灯さんに思いを聞いてみた

漫画を通して熊本地震からの復興に役立ちたい-。

熊本県在住の漫画家、鹿子木灯(かなこぎ・ともり)さんは、主人公が熊本の観光地を巡る漫画「今日どこさん行くと?」を漫画誌に連載中です。ファンの間では「今日D」の愛称で親しまれている人気作品で、地震の被害が大きかった熊本城などの観光スポットや被災地の風景と復興していく姿が、柔らかく繊細なタッチで描かれています。鹿子木さんに「今日D」誕生の背景や作品に込めた思いなどを聞きました。(熊本日日新聞社合志支局 木村恭士)

※この記事は、2019年10月11日付熊本日日新聞朝刊掲載の記事を基に加筆、再構成。紙面未掲載のシーンも追加しました。

自宅で被災 「自分に何ができるか」自問自答

「今日D」は、2017年12月に月刊誌「コミックキューン」(KADOKAWA)で連載が始まりました。男性会社員と女性上司が、車で県内各地を訪ねるストーリー。タイトルや会話に熊本弁が使われ、県民おなじみのスポットが登場するなど、「熊本愛」にあふれた内容です。

水前寺江津湖公園を訪れたシーン

第1巻の第6話で男性会社員と女性上司がドライブで、熊本市民憩いの場である水前寺江津湖公園を訪れたシーン©鹿子木灯

鹿子木さんは熊本市東区出身。2016年4月、家族と暮らす自宅で、前震、本震と熊本地震の2度の大きな揺れを経験しました。約千冊の漫画のコレクションが並んでいた本棚は倒れ、本が散乱。家族は無事でしたが、余震におびえ、眠れない日々が続きました。

被災地で暮らす自分と、当時連載していたコメディー漫画の内容との落差は大きく、次第に違和感を感じるようになったそうです。

「被災者として、漫画家として、自分に何ができるだろうか」。そんな自問自答をしていると、ある言葉が頭に浮かびました。「観光に訪れてもらうことが一番の復興だ」。東日本大震災後、報道を通じて聞いた現地の声。「それが『今日D』誕生の原点です」と鹿子木さん。こうして、ふるさとの観光地を全国にPRしようと、2017年11月から制作に取り掛かりました。

鹿子木灯さん顔
鹿子木灯さん

当初のタイトルは「今日どこ行くと?」に決まっていました。いざ漫画制作にとりかかろうとしたときに、定規がないことに気付き「あれ? 定規、どこさん行ったかな?」と思わずひとり言が出たんです。それがきっかけで、「『どこ』は熊本弁なら『どこさん』だな」と、急きょ変更を出版社の担当者に提案。担当者も「その方がかわいいので変えましょう」となり、「今日どこさん行くと?」に決まりました。

熊本城、動植物園、益城町…「復興していく姿、記録に残したい」

単行本1巻では、被災して一時全面休園していた熊本市動植物園が、部分開園していた頃の様子を取り上げています。

熊本市動植物園を訪れたシーン

第1巻の第6話で熊本市動植物園を訪れたシーン©鹿子木灯

同巻では、宅地や農地など広い範囲で大きな被害が出た益城町の2018年5月時点の姿も紹介。地震後、多くの人が車中泊をした産業展示場「グランメッセ熊本」にこいのぼりが飾り付けられる様子や、復旧工事が進む幹線道路を走る2人が「随分きれいになったよね」と話すエピソードが描かれています。

益城町を通るシーン

第1巻の第5話で益城町を通るシーン©鹿子木灯

2巻では、加藤神社から望む熊本城が登場。当時一帯は立ち入り禁止で、工事用の足場に囲まれた2018年9月の天守閣の姿が詳細に描写されています。鹿子木さんは、「復興していく熊本を記録に残したい」と話しています。

熊本城を訪れたシーン

第2巻の第10話で熊本城を訪れたシーン©鹿子木灯

このほか主人公たちは、西南戦争激戦地の田原坂公園や山都町の蘇陽峡、世界文化遺産の三角西港なども次々に訪れています。

ところで、「今日D」の取材、制作はどのような形で進められているのでしょうか。鹿子木さんに聞きました。

鹿子木灯さん顔
鹿子木灯さん

計画を立てるのは苦手なので、ふらーっと各地を訪ねて取材しています。車載カメラで走行中の動画を撮影したり、歩いて写真を撮影したりします。風景は写真をパソコンに取り込み、下描きしています。熊本城天守閣は撮影した写真から線を1本1本描いたので、とても大変でした。

「作品の内容と、実際の復興を見比べて」

「今日D」は、主人公たちがドライブしながらを県内各地を巡るという展開で、女性上司がマニュアル車を運転します。鹿子木さん自身もドライブが趣味だそうです。

鹿子木灯さん顔
鹿子木灯さん

車でドライブするたびに、熊本の地名や広さを知ることができ、自分の世界が広がりました。一時期は毎日のように一人でドライブしていました。車があったから今があると思います。ちなみに私の車もマニュアル車です。

熊本地震からの復興は、道半ばですが、各地で進んでいます。熊本市動植物園は全面開園にこぎつけ、熊本城は日曜・祝日に特別公開をしています。

「旅行で熊本を訪れた人には、漫画の中の被災状況と、復興が進む今の姿を見比べてほしい」と鹿子木さん。

「今日D」を読んだ後に、作品に登場したスポットを訪れると、復興の進み方がより分かり、見た印象も違ってくるかもしれませんね。

「今日どこさん行くと?」(KADOKAWA)はB6判、1冊660円(税込み)。

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