伝統工芸の新しい可能性探る 最年少の山鹿灯籠師・中村潤弥さん

伝統工芸の新しい可能性探る 最年少の山鹿灯籠師・中村潤弥さん

【令和に咲く】新時代担う若者に同世代の記者がインタビュー

中村潤弥さん

和紙でインテリアモビール「TouRou」の部材を作る中村潤弥さん=山鹿市

熊本日日新聞社の「平成生まれ」の記者たちが、IT業界やアート、音楽など、さまざまな分野で挑戦を続ける、熊本県出身や在住の同世代の若者を取り上げる連載「令和に咲く」。

今回は、山鹿灯籠師の中村潤弥さん(30)を取材しました。記事は政経部の丸山伸太郎記者(23)、写真は写真映像部の上杉勇太記者(30)が担当しました。

きっかけは中学の職場体験 10代で第一人者に弟子入り

歩紙

山鹿灯籠を制作する際、和紙に針で印を付けるために用いる「歩紙(ぶがみ)」。「灯籠師にしか分かりませんが、楽譜のようなものです」と中村さん

山鹿市の大衆浴場さくら湯から古い民家や商店が並ぶ路地を10分ほど歩いたところに、中村潤弥さん=同市=の工房「中村制作所」がある。2階の作業部屋で、中村さんが慎重な手つきで和紙を貼り合わせていた。

2年半前、最年少の27歳で灯籠師になった中村さん。50、60代が多い灯籠師の中では異例の若さだ。

灯籠師を志したきっかけは、中学のときに職場体験で訪れた山鹿灯籠の工房。紙のみでできた精巧な造形に魅了された。

高校卒業後に弟子入りを志願したが、「他の仕事をしてからでも遅くない」と断られた。「灯籠師は収入が不安定だし、10代での弟子入りはほぼない。もし自分のところに同じような若者が来たら、自分も断りますね」と苦笑する。

山鹿温泉観光協会で1年間勤務。その間に知り合った第一人者の故徳永正弘さんが弟子入りを受け入れてくれた。「当時は収入や将来性など頭になく、灯籠を作りたいという気持ちだけだった」。8年間みっちり修業し、灯籠師組合から一人前の灯籠師として認定された。

新商品開発や作業効率化も 目標は「灯籠師の収入を安定させること」

灯籠の新たな可能性を探ろうと、5年前から他の灯籠師と新商品の開発に取り組む。伝統的な「金灯籠」の部材を使ったインテリアモビール「TouRou」などを商品化。今年春には人気漫画「ONE PIECE(ワンピース)」に登場する海賊船も和紙で作った。

2019年4月9日付

中村さんが和紙で人気漫画「ONE PIECE」に登場する海賊船の制作に取り組んでいることを報じる2019年4月9日付の熊本日日新聞の記事

「昔の灯籠師は、戦闘機なども題材にして自分の技量を自慢していた。自分たちのやっていることは、新しいことというより、むしろ山鹿灯籠らしいんじゃないでしょうか」

目標は「後に続く人のため灯籠師の収入を安定させること」。TouRouもその一環だ。作業を仲間で分担して制作を効率化し、関東や九州の百貨店で販売。来年に向け新作も準備中だ。「やりたいことをしているだけ」と語るその先に、伝統工芸の新しい形が見える。

TouRou

金灯籠(左)の部材を取り入れたインテリアモビール「TouRou」。風や光の具合で壁に映し出される影がさまざまに変化するのも魅力という

(2019年10月18日付 熊本日日新聞朝刊掲載)

中村潤弥(なかむら・じゅんや) 略歴

インテリアモビール「TouRou」は、金灯籠(奥)の部材を取り入れた新たな山鹿灯籠

1989(平成元)年生まれ。鹿本高卒。19歳から8年間の修業を経て灯籠師に認定された。その後構えた工房の1階には、妻の京(みさと)さん(30)が営む灯籠や竹製品の販売店「ヤマノテ」がある。

〈取材を終えて〉 「作りたい一心」感じた

丸山伸太郎記者

中村潤弥さん(左)の手ほどきを受けながら部材作りに挑戦する丸山伸太郎記者

「料理と一緒で、慣れれば誰でもできますよ」と言いながら、厚さ2ミリにも満たない紙の切断面同士をのりで貼り付けていた中村さん。両親の反対を押し切ってこの道に進んだといい、柔らかな物腰ながら、心(しん)の強さも感じた。灯籠を作りたい一心で突き進んできた中村さんの姿に、「自分のしたいことをすればいいんだ」と勇気づけられた。(丸山伸太郎)

山鹿灯籠や竹製品の販売店「ヤマノテ」

住所 熊本県山鹿市山鹿1375

アクセス 国道3号の山鹿警察署前交差点から車で3分
営業時間 10時~17時
定休日 火・水曜
電話 0968-41-8405
公式HP http://yamaga-yamanote.com/
メモ 無料駐車場有り
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