「感涙」は、妥協せず夢追い続けた証し 小柄な「桜の戦士」SH流大選手 全試合先発し8強入り貢献 ラグビーW杯活躍まとめ

「感涙」は、妥協せず夢追い続けた証し 小柄な「桜の戦士」SH流大選手 全試合先発し8強入り貢献 ラグビーW杯活躍まとめ

テレビを見て、思わずもらい泣きした人もいたのではないでしょうか。

2019年10月20日、東京・味の素スタジアムで開催されたラグビーW杯準々決勝・日本-南アフリカ戦。国歌斉唱で、整列する日本代表チームの中、小柄な選手が高ぶる気持ちを抑えきれず、見開いた目を潤ませている様子が映像でクローズアップされました。

ラグビーW杯準々決勝・日本-南アフリカ戦

ラグビーW杯準々決勝・日本-南アフリカ戦、流選手(中央)は国歌斉唱時、感極まって涙ぐんでいた=2019年10月20日、東京・味の素スタジアム

涙を流していたのはチームの司令塔、スクラムハーフ(SH)の流大(ながれ・ゆたか)選手=サントリー所属、27歳=です。166センチ、69キロながら、スピードあるパスワークと優れた判断力で日本代表入り。熊本県立荒尾高校(現・岱志高校)時代に「ジャパン」のあだ名がつくほど、ずっと掲げてきた目標を実現しました。さらに今回のW杯では5試合すべてに先発出場。早い球出しで展開ラグビーの起点となるなど、日本史上初のベスト8入りに大きく貢献しました。

日本-南アフリカ戦の後半

日本-南アフリカ戦の後半、スクラムからバックスにボールを展開する流選手

健闘をたたえ合う流選手

準々決勝で敗れ、試合後、南アフリカの選手(右)と健闘をたたえ合う流選手

W杯準々決勝という日本ラグビー史に残るひのき舞台で感極まったのも、高校時代から妥協せず、夢に向かって自身を奮い立たせてきたからに違いありません。

日本は南アフリカに敗れ、快進撃は終わりましたが、「ジャパン不動の9番」は大会を通じて輝きを放ち、世界の強豪相手に存在感を示しました。

W杯日本大会での流選手の活躍ぶりを熊本日日新聞掲載の記事や未掲載写真で振り返ります。

※情報は2019年10月23日時点、記事内の情報は掲載時点です

重圧かかった初戦 冷静に試合コントロール

世界を代表するスポーツの祭典で、アジア初開催となるラグビーW杯日本大会は2019年9月20日に開幕。44日間にわたる熱戦の火ぶたが切られました。日本代表は、東京・味の素スタジアムで行われた開幕戦となる1次リーグ初戦、ロシアを30-10で下し、白星発進。先発出場した流選手が、重圧がかかる初戦で期待通りの活躍をみせました。

パスを出す流選手

ラグビーW杯1次リーグ・日本-ロシア戦で、スピーディーにパスを出す流選手=2019年9月20日、東京・味の素スタジアム

前半のキックオフ後、日本は硬さからか、いきなりのミスで0-7と先制を許す展開となりました。重苦しい雰囲気の中、流選手は持ち味の素早いパス回しで攻撃のリズムを生み出し、冷静にゲームをコントロールしました。「プレッシャーのかかる試合では、彼のような存在が必要」。大役を任せたジェイミー・ジョセフヘッドコーチの期待に応えました。流選手自身も、「緊張で波に乗れないところもあったが、結果としてボーナスポイントも得て、勝利することができた」と納得の表情を見せました。

2019年9月21日付掲載の記事

「流 冷静に攻撃指揮」の見出しで、ロシア戦での活躍を報じた2019年9月21日付掲載の記事

優勝候補のアイルランドを撃破 恩師との約束果たす

続く9月28日、静岡スタジアムで開催された1次リーグ第2戦。日本は、この時点で世界2位の優勝候補、アイルランドを19-12の逆転で破る大金星を挙げました。先発出場した流選手は、自在のパスワークと的確な判断力でスピードを攻撃陣に吹き込み、ゲームをコントロールしました。試合後に流選手が「こっちがボールを支配すれば、やれると信じていた」と振り返ったように、相手にリードされてもあせらず、後半の逆転劇への流れをつくりました。

ボールを持って突進する流選手

日本-アイルランドで、前半、ボールを持って突進する流選手=2019年9月28日、静岡スタジアム

アイルランド戦での流選手の活躍を報じた2019年9月29日付掲載の記事

この試合、流選手の荒尾高時代の恩師である徳井清明監督がスタジアムで観戦し、躍動する教え子の姿に目を細めました。観戦チケットは流選手から贈られたもの。流選手が日本代表に決まる前でしたが、「おまえが出て歴史を変える試合を見に行きたい」とアイルランド戦を選んだそうです。深い絆で結ばれた恩師と教え子の「約束」は、見事果たされました。

2019年9月29日付掲載の記事

アイルランド戦を観戦した徳井監督が、教え子である流選手の活躍を喜ぶ姿を報じた2019年9月29日付掲載の記事

世界最高の舞台で、日本の快進撃は続きます。10月5日、愛知県豊田市の豊田スタジアムで行われた1次リーグ第3戦でサモアを38-19で退け、無傷の3連勝。流選手はこの試合も早いパス回しで攻撃にリズムを与え、勝利に貢献しました。

ラグビーW杯1次リーグ・日本-サモア戦

ラグビーW杯1次リーグ・日本-サモア戦。前半、パスを出す流選手=10月5日、愛知・豊田スタジアム

キックする流選手

日本-サモア戦の後半、キックする流選手

4連勝で決勝トーナメント進出 「ラグビー人生で最高の日」

そして10月13日、日本は横浜市の日産スタジアムで、運命の一戦を迎えました。対戦相手は、前回の2015年大会1次リーグで対戦し、決勝トーナメント進出を阻まれたスコットランド。因縁の相手に日本は前半途中から主導権を握り、終盤の猛攻にも耐えて見事28-21で破りました。これで1次リーグ無傷の4連勝とし、9度目のW杯の出場で初めて8強入りする歴史的快挙を成し遂げました。

この日詰め掛けた観客は6万7千人以上。この日も先発出場した流選手は、速いテンポでパスを回し、前半だけで3トライを挙げた日本の攻撃に推進力を与えました。これで1次リーグの4試合すべてに先発出場し、悲願だった決勝トーナメント進出を果たす立役者の1人になりました。

日本-アイルランド戦の前半

日本-アイルランド戦の前半、パスを出す流選手=2019年10月13日、横浜・日産スタジアム

2019年10月14日付掲載の記事

「流 ゲームプラン完遂」の見出しで、スコットランド戦での流選手の活躍を報じた2019年10月14日付掲載の記事

トライを決めた松島選手を祝福する流選手

日本-スコットランド戦の前半、トライを決めた松島選手(14)を祝福する流選手

流選手は試合後、「ラグビー人生の中で最高の日。ファンの皆さんがパワーを与えてくれた」と感謝しました。

4強に届かず 次回見据え「もう一個上のレベルに」

1次リーグA組を1位で通過した日本は10月20日、東京・味の素スタジアムでの準々決勝で、過去2度の優勝を誇る強豪の南アフリカ(B組2位)に3-26で敗れ、初のベスト4入りはなりませんでした。

1次リーグに続き5度目の先発出場となった流選手は、持ち前のスピードを生かして攻守で懸命にチームをリード。密集地点へ鋭くダッシュし、小気味よくバックスにパスを出しました。

相手選手をマークする流選手

日本-南アフリカ戦の前半、相手選手をマークする流選手=2019年10月20日、東京・味の素スタジアム

スピーディーな球出しをする流選手

日本-南アフリカ戦の後半、スピーディーな球出しをする流選手

後半、地力に勝る南アフリカに相次いでトライされて主導権を奪われますが、流選手はチームの司令塔として仲間を鼓舞し続けました。

チームメイトを鼓舞する流選手

日本-南アフリカ戦の後半、相手にトライされた直後、チームメイトを鼓舞する流選手

流選手は後半もピッチを駆けまわり、終盤、ベテランSHの田中史朗選手と交代し、ベンチに下がります。

ピッチを後にする流選手

試合終盤、交代する田中選手(左)と抱き合い、ピッチを後にする流選手

そしてノーサイドの笛が鳴り、日本代表と流選手のW杯が終わりました。試合終了後、大会を通じて世界の強豪相手に素晴らしいプレーを披露し、史上初のベスト8入りを達成した流選手ら日本代表メンバーに、スタンドから大きな拍手が送られました。

観客の声援に応える流選手

南アフリカ戦の後、観客の声援に応える流選手

記念写真に収まる流選手

南アフリカとの試合後、リーチ・マイケル主将の肩に手を置き、記念写真に収まる流選手(中央)

流選手は試合後、「この経験を、もう一個上のレベルに生かしていく」と語り、4年後となる次回フランスW杯を見据えました。

2019年10月21日付掲載の記事

W杯日本大会の戦いを終え、流選手が次回のW杯フランス大会に向け飛躍を誓ったことを報じた2019年10月21日付掲載の記事

今大会、存在感が際立った小柄な「桜の戦士」は、日本中に大きな勇気を与えてくれました。さらなる高みを目指し、新たな挑戦が始まる流選手の活躍にこれからも目が離せません。

CATEGORIES
TAGS