即位礼の首相万歳で再注目!? 〝熊本発〟のニセ布告「万歳三唱令」 熊日記事まとめ

即位礼の首相万歳で再注目!? 〝熊本発〟のニセ布告「万歳三唱令」 熊日記事まとめ

2019年10月22日に皇居・宮殿で行われた「即位礼正殿の儀」。安倍晋三首相が国民を代表して発声した「万歳三唱」の手のひらの向きが、ネット上で話題を呼んでいます。熊本が発祥の地とされるニセの太政官布告「万歳三唱令」の動作に似ていたためで、熊本日日新聞が報じています。

太政官布告「万歳三唱令」は〝正しい万歳〟の作法を記した架空の布告で、熊本から全国に広まったと言われています。先の記事にあるように、2018年2月の熊本日日新聞で、「自分たちが万歳三唱令を創作した」と名乗りを上げていた匿名グループが、経緯を詳細に証言しています。

当時もSNSなどで話題となりました。クロスくまもとでは、熊本日日新聞のそれ以前の記事も含め、ニセ「万歳三唱令」流行の経緯をまとめました。

※情報は2019年10月25日時点、記事内の情報は掲載時点です。

2017年12月、熊日に匿名の手紙届く 「実は私が…」

熊本日日新聞にニセ「万歳三唱令」の創作を告白する手紙が届いたのは、2017年12月。同年12月27日付の熊日朝刊で「ニセ『万歳令』実は私が…」との見出しで報じています。

 「万歳の発声とともに右足を踏み出し両腕を垂直に高々と…」。明治政府の太政官布告という触れ込みで、全国に出回ったニセ文書「万歳三唱令」のきっかけが、県内在住者らが開いたゴルフコンペの打ち上げだった可能性が26日までに浮上した。19日付本紙1面コラム「新生面」が「万歳三唱令」を取り上げたところ、「私たちが創作した」と“告白”する匿名の手紙が届いた。

2017年12月27日付熊本日日新聞朝刊より
2017年12月27日付熊本日日新聞朝刊の記事

2017(平成29)年12月27日付熊本日日新聞朝刊の記事

“告白”のきっかけとなったのは、その1週間前の12月19日付熊日朝刊1面のコラム「新生面」が取り上げたことでした。

 忘年会真っ盛りの時季、中締めはバンザイか、「いよー」の一本締めか。以前ある宴会で、「万歳にも正式な作法がある」と教わったことを思い出す▼<明治12(1879)年施行の太政官布告「万歳三唱令」によれば、直立不動の姿勢からバンザイ発声と同時に右足を半歩踏み出す。掲げた両手は指先を真っすぐに伸ばし、手のひらは前方でなく内側に向ける>。ただし、これは全くのでたらめ。万歳三唱令は架空の布告だ▼1999年12月の本紙夕刊が「万歳は右足半歩前?ニセ『太政官布告』出回る」の見出しで報じている。当時、布告文を装った怪文書が全国に広がり、国立国会図書館に問い合わせが相次いだ (略)

2017年12月19日付熊本日日新聞朝刊「新生面」より
新生面

2017年12月19日付熊本日日新聞朝刊「新生面」

熊日紙面初出は1999年12月 当時すでに全国的波及か?

この新生面からさかのぼること18年前の1999年12月6の熊日夕刊に「ニセ『太政官布告』出回る」との記事が載っています。その記事がこちらです。

1999(平成11)年12月11日付

1999(平成11)年12月11日付熊本日日新聞夕刊の記事

「万歳の発声とともに右足を半歩踏み出し同時に両腕を高々と」―。「万歳三唱令」と題した「太政官布告」が全国的に出回り、自治体などから国立国会図書館に問い合わせが相次いでいる。実は真っ赤な偽物で何者かの手の込んだいたずららしく、同図書館の担当者はうっかり信じないよう呼び掛けている。

文書は「施行明治十二年四月一日 太政官布告第百六十八号」として万歳の趣旨や姿勢、手の挙げ方を細かく書き、片仮名を使って当時の法令に見せ掛けている。該当する布告はなく、形式も当時の法令とやや食い違っているが一般の人には分からない出来だ。(略)

1999年12月11日付熊本日日新聞夕刊より

これが熊日に「万歳三唱令」が初登場した記事でした。記事には「国会図書館には三年前から問い合わせが始まり、北海道から九州まで数十件の照会があった」とあり、当時から全国に波及していたことが分かります。

万歳三唱令は熊本発!? 2018年2月、創作者が取材に応じる

ニセ「万歳三唱令」の創作を告白する手紙が熊日に届いてから2カ月後、ついに「私たちが創作した」という匿名グループが熊日の取材に応じました。2018年2月27日付熊日朝刊で報じています。

2018年2月27日付熊本日日新聞朝刊の記事

「万歳三唱令」創作者たちの証言を報じる2018(平成30)年2月27日付熊本日日新聞朝刊の記事

記事では創作者の匿名グループに「万歳三唱令」が生まれた経緯を詳しく聞いています。

証言したのは熊本市と合志市に住む60~70代の3人。公務員らの仲良しグループで、現職時代に遊びで作った「正しい萬歳(ばんざい)三唱を普及する国民会議」(正萬会議)の初代事務局長ら。昨年12月、本紙1面「新生面」が万歳三唱令に触れたことから匿名の手紙を寄せ、その後の報道を受け取材に応じた。

3人によると、右足を半歩踏み出し両の手のひらを内側に向けて掲げる独特の動作は、1985(昭和60)年前後の酒席で「出席者がたまたま酔いに任せてやったのがはしり」で、完全な創作。

文書の万歳三唱令は平成に入った89年ごろ原形が生まれた。少しずつもっともらしい体裁を整え、最終的に「太政官布告 萬歳三唱令」と「萬歳三唱実施に関する勅令」となった。

3人は職場が近かった熊本市健軍かいわいを皮切りに、その後の九州内の転勤先などで“普及活動”。次第に仲間以外でも評判になり、特に健軍の飲み屋では、やり方を教えてくれという人が相次いだという。(略)

2018年2月27日付熊本日日新聞朝刊より

さらに熊日では、同年2月27日と翌28日に「万歳三唱令のヒミツ」とのタイトルで〝緊急〟連載を掲載しました。

この連載はコンテンツ投稿・購入サイト「note(ノート)」で読むことができます。価格は100円で、noteの会員登録をすることで購入できます。

noteでは、架空の万歳三唱令がどのように権威づけられていったかの秘密や、熊日に名乗り出た3人が本物の創作者である「証拠」となる、実際に文書に使用した手作りの印鑑の写真などがあります。

インターネットの流行前にこれだけ全国に広まり、さらにその発生源が熊本だったと思われることに驚きを感じます。口頭による伝承ではなく、文書とともに広まったことが要因としてありそうです。思わずやってみたくなる何とも言えない魅力もありますね。

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