障害児のロールモデルに 共生社会めざす「車いすJK」 岩下唯愛さん

障害児のロールモデルに 共生社会めざす「車いすJK」 岩下唯愛さん

【令和に咲く】新時代担う若者に同世代の記者がインタビュー

岩下唯愛さん

笑顔で取材に応じる第一高2年の岩下唯愛さん=熊本市東区

熊本日日新聞社の「平成生まれ」の記者たちが、IT業界やアート、音楽など、さまざまな分野で挑戦を続ける、熊本県出身や在住の同世代の若者を取り上げる連載「令和に咲く」。

今回は、「車いすJK(女子高生)」として活動する岩下唯愛(ゆめ)さん(16)を取材しました。記事は社会部の渡具知萌絵記者(25)、写真は宇土支局の西國祥太記者(29)が担当しました。

3歳から車いす でも「障害を恨んだことは一度もない」

「扉を押さえてくれてありがとう」。車いすを使う第一高2年の岩下唯愛さん=熊本市東区=は、手を貸してくれた人へのお礼にあめ玉をプレゼントする。「健常者と共生するためには、障害者から歩み寄ることも大切」。信念を日々の行動に移している。

あめ玉

岩下唯愛さんが手を貸してくれた方にお礼として渡すあめ玉

脳性まひによる障害で、3歳から車いすユーザー。小学生に絵本の読み聞かせをしたり、母祐子さん(50)が携わる子育て支援サロンで中高生の相談相手を務めたりと、「車いすJK(女子高生)」として活動中だ。

障害を恨んだことは一度もない。ただ、小学生の時は友達づくりが難しかった。先生が付き添い手助けしてくれることで、1人で行動することが少なかったからだ。「サポートがありすぎることで、クラスメートと近づく機会を摘み取ってしまうこともあるのでは」。今の日本の特別支援教育では、障害者がうまく交友関係を築けないと思い始めた。

相互理解の大切さ 辛抱強く訴えたい

ヘルシンキ中央図書館

フィンランドのヘルシンキ中央図書館を見学に訪れた岩下唯愛さん=2019年10月23日

「特別支援教育の先進国、アメリカはどうなのだろう」。来年3月、春休みを利用して単身渡米し、普通学校や脳性まひ患者の施設を訪ねることにした。今月は祐子さんとフィンランドの教育機関を見学するツアーにも参加。「日本との違いを学びたい」と意気込む。

障害の有無にかかわらず互いを理解することの大切さを、辛抱強く訴えていきたいと思う。8月には、小学生対象の福祉ワークショップで講師役を務めた。驚いたのは、同じく車いすの参加者がいたこと。思いがけず「ゆめちゃんのようになりたい」との声をもらい、励まされた。

ワークショップ

講師役を務めた福祉ワークショップで自己紹介をする岩下唯愛さん=2019年8月2日、熊本市中央区

「障害が理由でできないことはない」ときっぱり。子どもの発達支援に携わったり、福祉や法律の勉強をしたり…やりたいことがたくさんあって、将来の夢は絞り切れていない。だが、一つだけ決めていることがある。「障害がある子どもたちのロールモデルになりたい」。この目標がきょうも彼女を支えている。

(2019年10月25日付熊本日日新聞朝刊掲載)

岩下唯愛(いわした・ゆめ) 略歴

岩下唯愛さん

2002(平成14)年生まれ。ルーテル学院中卒業後、第一高英語コースに進学。マイブームは「歌詞が心に染みる」昭和歌謡を聴くこと。幼い頃から大の本好きで、好きな作家は東野圭吾さん。

岩下唯愛さんのインスタグラムはこちら(@wheelchair_abroad)

〈取材を終えて〉 果敢に挑む姿勢に感銘

岩下唯愛さん(手前)と渡具知萌絵記者

水前寺江津湖公園を歩く岩下唯愛さん(手前)と渡具知萌絵記者

「車いすに乗っていない私は私じゃない」と言い切る岩下さん。あまりにも堂々としていて、周囲からの視線が気になった、などの苦労話を聞こうとした自分が恥ずかしくなった。10歳近く年下だが、障害をものともせず、何ごとにも果敢に挑む姿勢には感銘を受けた。

障害者としてではなく、一人の娘として向き合ってくれた母祐子さんの教育方針に、ひそかに感謝しているという。取材中も岩下さんの意志を尊重し、行動を制限せずに適度な距離から見守る祐子さんの姿が印象に残った。ポジティブで行動力が高いところはまさに母親譲り。「この母にこの子あり」だと感じた。

「障害は個性」と言う人もいるが、実際に個性として受け止めるには相当な覚悟が必要だ。目標に向かって自分らしく突き進む彼女の生き方は、素直にかっこいいと思った。もうすでに私もゆめちゃんファンの一人。今後はどの分野で活躍するのか、将来が楽しみで仕方ない。(渡具知萌絵)

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