女子世界ハンド観戦、より楽しむポイント 各ポジションの「仕事」は? オムロン選手が分かりやすく解説

女子世界ハンド観戦、より楽しむポイント 各ポジションの「仕事」は? オムロン選手が分かりやすく解説

CB、RW、LB、PV…これでピンときた人は、ハンドボールに詳しい人ですね。

CBはセンターバック、RWはライトウイング、LBはレフトバック、PVはページビューではなくピボット。いずれもポジションの名前です。

24カ国が激突する女子ハンドボール世界選手権が、2019年11月30日から12月15日まで、熊本県内5会場で開催されます。

女子ハンドボール世界選手権をPRする懸垂幕

鶴屋百貨店に掲げられた女子ハンドボール世界選手権をPRする懸垂幕=熊本市中央区

世界のトッププレーヤーたちが繰り広げる、スピードある攻防、華麗な空中のシュート、体をぶつけ合う肉弾戦を見逃すなんて、もったいない!

「でもハンドのことよく知らないし…」という方は、ぜひこの記事を読んでほしいです。日本リーグ女子の強豪で、世界女子選手権の日本代表「おりひめジャパン」に4選手を送り出しているオムロン(熊本県山鹿市)の選手たちが、ポジション別の見どころを初心者にも分かりやすく紹介してくれます。

オムロンの選手たち

日本リーグ女子で最多の17度の優勝を誇る強豪のオムロンの選手たち=2019年10月21日撮影、山鹿市のオムロン鹿陽センター(以下の写真も同じです)

これを読んで、各ポジションの役割や見どころを押さえれば、ハンドボール観戦がグッと面白くなること間違いなしです。

※2019年10月30日付熊本日日新聞掲載の「世界女子ハンド 開幕まで1カ月特集」の記事を加筆、再構成しました。文は、熊日運動部の植山茂、後藤幸樹の両記者、写真は写真映像部の上杉勇太、池田祐介の両記者です。

守備の要、攻撃のスタート役も ゴールキーパー(GK)

ハンドボールは、サッカーと同様に自陣のゴールを守るキーパーがいるのが大きな特徴です。速いボールを全身を使ってひたすら止め続ける姿は、見ていて痛そうです。そんなゴールキーパー(GK)の仕事について、白石さと選手に語ってもらいます。

白石さと選手

強烈なシュートを全身を使って防ぐ白石さと選手

GKはディフェンス陣と連係してシュートを止め、素早くパスを出して速攻につなげます。守備の要であり、攻撃のスタート役も担っています。ロングシュートに対する基本の守り方は、ディフェンスが相手の利き手側のコースをふさぎ、GKがその逆を受け持ちます。もちろん相手の位置取りや特徴によって防ぎ方は変わります。シュートを止めたら、ボールを素早く拾い、ゴールに直結する位置にいる味方を探します。迷っていると、その後の攻撃が停滞してしまいます。パスの距離は30メートルになることもあります。種類もライナーや山なりなど、相手守備の状況に応じて使い分けます。

速攻はお任せ! ループ、スピン…シュートテクにも注目 ライトウイング(RW)・レフトウイング(LW)

ハンドボールの醍醐味であるスピードとシュートテクニックを思う存分に披露するのが、ライトウイング(RW、相手ゴールに向かって右サイド)とレフトウイング(LW、同左サイド)です。役割を教えてくれるのは、RWの尾崎佳奈選手。

コートの最も端に位置取るRW、LWにとって、一番の腕の見せどころは速攻です。中央を守る選手より守備の負担は少ないので、守っている最中は相手の攻撃パターンをなるべく観察。守りから攻めに切り替わるタイミングを素早く予測することが肝心です。

態勢を整えてじっくり攻める時は、味方が中央でゲームを組み立ててマークをずらしてくれるので、相手コートプレーヤーよりも、GKとの勝負になります。角度のないところからのシュートが多く、相手GKの特徴を映像などで分析して攻めます。頭上を狙うループ、回転をかけてボールを弾ませるスピンなど、シュートテクニックにも注目してほしいですね。

江藤美佳選手

スピンシュートを放つLWの江藤美佳選手(合成写真)

司令塔、相手陣形見て作戦指示 センターバック(CB)

ハンドボールで攻撃の起点となるポジションが、センターバック(CB)です。ラグビーでいえばスタンドオフ(SO)やスクラムハーフ(SH)、バスケットではガードの役割です。解説してくれるのは西尾瑠那選手。

センターバックはチームの司令塔です。コート全体を見渡しながら、相手守備の陣形や弱点を見抜き、点差など状況に応じて作戦を指示します。的確な判断力や冷静さが必要です。ボールはバック陣だけで回さずに、サイドやポストも使って相手に的を絞らせないようにします。攻撃を組み立てるだけではなく、自ら仕掛けたり、ゴールを狙うことも重要です。そうすることで相手守備を引きつけられるので、味方の得点を引き出すことにもつながります。GKに見えにくい角度から放つブラインドシュートやGKのタイミングを外すランニングシュートなど、多彩なシュートもぜひ見てほしいです。

西尾瑠那選手

空中でパスを受けシュートする「スカイプレー」を見せる西尾瑠那選手(合成写真)

点取り屋、迫力満点のロングシュートも ライトバック(RB)・レフトバック(LB)

ハンドボールの魅力は何といっても、試合を通して迫力あるゴールラッシュが続くこと。攻撃陣の中でも「点取り屋」となるのがライトバック(RB、相手ゴールに向かって右45度)とレフトバック(LB、同左45度)です。見どころをLB伊地知美姫選手に語ってもらいます。

LBとRBはチームのエースです。得点を量産すれば盛り上がります。厳しいマークを受けるので、1対1で負けない個人技も必要。ジャンプ力やシュート力が求められ、迫力満点のロングシュートは必見です。

ロングシュート

ロングシュートを放つLBの吉田起子選手

大事なことはゴールへの意識。シュートコースが空けば迷わず狙います。相手を複数引きつけられれば、その分味方をフリーにできます。また得点できなくても、エースならばシュートを打ち続ける気概を持たないといけません。その姿勢がチームを鼓舞することにつながります。相手守備が高い位置に敷かれた時は、裏のスペースを突くパスを出すなど、状況に応じた柔軟なプレーも必要です。

〝黒子役〟、体張って味方をサポート ピボット(PV)

ハンドボールの攻撃時、ゴールエリアライン付近で、ディフェンスに体を寄せられたり押されたりして、バスを受けるのに苦労しているポストプレーヤーがいます。そのポジションがピボット(PV)。解説してくれるのは山下真里奈選手です。

PVは、主に体を張って味方をサポートする、いわば黒子です。好ポジションを確保するにはパワーが必要で、背が高く大柄な選手が担います。ボールを持たない時間が多いですが、攻撃のスペースをつくるために相手守備と常に駆け引きをします。体全体で相手の動きを止めたり、サイドに走り込んで引きつけたり。ポストの動き次第で攻め方も変わります。

竹原千賀選手

ディフェンス同士の間で、パスを受けてゴールを狙うPVの竹原千賀選手

ゴールに一番近いので、パスをもらったら迷わずシュートを狙います。点が入らなくても反則で相手が一時退場したり、7メートルスローを得たりする確率が高いので大チャンス。「ピボットがボールを持つと何かが起きる」と期待してください。

これで七つのポジションの役割を紹介しました。攻撃時の各ポジションの基本位置は下の通りです。

ポジション図

各ポジションのプレー動画

これであなたも「ハンド通」 独特のルール紹介

次は、観戦中に「これどうなっているの?」と混乱することがないよう、ハンドボール独特のルールをいつくか紹介します。解説してくれるのは、熊本県ハンドボール協会の広報担当の三村圭司さんです(下の写真)。

三村圭司さん

ゴールエリアライン内は〝立ち入り禁止〟

ゴールエリアライン(ゴール前の半径6メートルの半円)内はGK以外の選手は敵味方問わず“立ち入り禁止”。ただし、空中でボールを扱うことは許されています。ジャンプしながらパスを受けてシュートする「スカイプレー」は見どころの一つです。

「ファウル」は、ナイスディフェンス

バスケットボールなどに比べて身体接触が許されているので、軽いファウルは相手の攻撃の流れを止める「ナイスディフェンス」。ただし、悪質なものには警告や2分間退場、失格が科されます。得点機での反則は相手に7メートルスロー(サッカーでいうPK)が与えられます。歩ける歩数はボールを受けて3歩です。

熊本で開催された女子アジア選手権決勝・日本-韓国戦で、体を張ってディフェンスする日本の永田しおり選手(左、オムロン)ら=2018年12月9日、熊本県立総合体育館

シュートをGKが弾いて…ゴールライン割ったら攻守交代

味方が放ったシュートを、相手のGKが弾きゴールラインを割った場合、試合は相手ボールから再開されます。サッカーでは味方のコーナーキックになりますが、確実性が高いハンドボールではサッカーと同じルールにすると、一方のチームの攻撃がなかなか終わらなくなるからです。

選手の交代はプレー中断せず自由

選手交代は審判への申告なしで、いつでも何度でも可能です。攻守が逆転すると、同時に攻撃専門と守備専門の選手が入れ替わります。流れを変える切り札の投入や、主力の体力を温存させることもできます。GKをほかにプレーヤーを代える「7人攻撃」も戦術の一つで、日本代表「おりひめジャパン」も勝負どころで使います。

 

ここまで読んだ方は、「にわかハンドボールファン」を超えて、立派な「ハンド通」です。世界トッププレーヤーが集結する世界女子ハンドを心行くまで、楽しんでください。

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