お客さまとの「縁」大事にしたい 光琳寺通り「ル・クール」編

お客さまとの「縁」大事にしたい 光琳寺通り「ル・クール」編

熊本のバー探訪

熊本市のバーテンダーたちの「ちょっといい話、クスッとする話」を、それにまつわるお酒とともに紹介する「熊本のバー探訪」シリーズ。今回は「ル・クール」(熊本市中央区下通 光琳寺通り)のオーナー石田潤さん(38)に登場してもらいます。

「ル・クール」のオーナー石田潤さん

「お客さまとのご縁を大切にしています」と話す「ル・クール」のオーナー石田潤さん =2019年12月4日、熊本市中央区下通

このコンテンツは、熊本日日新聞夕刊で連載した「夜話(やわ)カクテル」(2015年3月~2017年6月)を再構成し、インタビューや店舗情報などを加えました。

(記事中の情報は掲載時点、後段の店舗情報は2019年12月4日時点です。変更されている場合がありますので、来店前に電話でご確認ください)

アマレット】 見た目だけでも

アマレット

アマレット

「男はいつでも格好つけてないと」。40代男性会社員のお客さまの口癖です。男性は大抵、仕事上お付き合いでお酒を飲まれた後に「締め」として来店されます。

その日も来店は深夜。だいぶ飲み疲れていらっしゃいました。「さっぱりしたものをお出ししましょうか」と水を向けると、「いやいや、大丈夫」と男性。しかし、注文は「アマレットをロックで」。

アマレット? このお酒はアンズの種を原料としたリキュールで、甘くてほろ苦いアーモンドのような風味がします。ウイスキーよりアルコール度数が低くて飲みやすい、女性にお薦めの酒です。

私が「いつもの口癖は何だったのか」といぶかしがっていると、男性は見透かしたように「琥珀(こはく)色だから、ウイスキーのロックに見えるでしょ。見た目だけでも格好つけないとね」。

その時、確かカウンターの端には女性が一人で座ってらっしゃいましたっけ。

(2016年11月4日掲載)

【アードベッグ 10年】 今夜は「水割り」を

アードベッグ10年物の水割りとシェイカー

アードベッグ10年物の水割りとシェイカー

自由な発想の大切さを教えていただいたお客さまがいらっしゃいます。その方は50代の紳士。街なかのバーを飲み歩かれていて、お酒やカクテルにも詳しい方です。

いつも最初にジントニックを飲まれるので、その日も「いつものヤツですね」と尋ねたら、男性は「今夜は水割りをくれないか。酒はアードベッグの10年物かな」と注文されました。この酒は磯臭い香りと、パンチの利いた味わいのスコッチウイスキー。

「珍しいな」と思いましたが、ご注文通りグラスに氷を入れウイスキーを注ごうとしたら、「おまえさん、それじゃ面白くないだろう」と男性。水割りをシェイクするよう〝指示〟されました。少し戸惑いましたが、出来上がった水割りを男性からお裾分けしてもらうと、びっくり。通常より丸みのある味わいになって、口当たりもいいんです。

レシピや固定観念にとらわれない「水割りシェイク」。この体験が私のカクテルづくりの基礎になっています。

(2016年11月11日掲載)

メロンフィズ】  忘れられない味

メロンフィズ

メロンフィズ

子どものころに「おいしい」と思った味は、忘れられないものです。今回は、その味をカクテルで懐かしんでいらっしゃるお客さまの話をしたいと思います。

お客さまは40代後半の男性で、1杯目は必ず「メロンフィズ」を注文されます。メロンリキュールにレモン果汁と砂糖を加え炭酸水で割る、甘ざっぱりしたカクテルです。

男性が注文されるのは珍しいので尋ねると、「メロンはあんまり食べないんだけどね…」と首をかしげる男性。その後、確かめるように一口飲まれて「あっ、メロンのかき氷だよ。子どものころ祭りで、よく食べてた」。

なるほど、子どものころの忘れられない味か、と納得。私もかき氷を食べた後、緑色になった舌を出して、「何を食べたか」を、友達と〝当てっこ〟していたのを思い出しました。

男性とは10年来のお付き合い。この店も「忘れられない店」になるように努力していきたいと思います。

(2016年11月18日掲載)

アルハンブラローヤル】 刺激し合って

アルハンブラローヤル

アルハンブラローヤル

テレビでココアのCMを見るようになると、冬だなと思うのは私だけでしょうか?

私の店で「冬の主役」となっている「アルハンブラローヤル」というカクテルがあります。ホットグラスにココアを入れ、ブランデーを注ぎます。本来はレモンスライスを飾るのですが、私はホイップクリームを乗せます。そうすると、ココアの濃厚な香りと味わいが引き立ち、心も体も温めてくれるんです。

〝偉そうに〟このカクテルについて語りましたが、私が知ったのは数年前。実は従業員に教えてもらったんです。「温まるカクテルを」などと注文を受けると、このカクテルをつくっていたんです。

初めのうちは気にしていなかったのですが、「ハリーポッターの呪文みたいな名前のヤツおいしかった」などお客さまの受けもいいので、ついにレシピを聞いた次第です。

カクテルは何百とありますが、すべて知っている訳ではありません。従業員と2人で教え合い、刺激し合っていい店にしていきたいと思っています。

(2016年11月25日掲載)

石田さんにインタビュー

「ル・クール」をお伺いして、石田潤さんにお話を聞きました。(2019年12月4日)

「ル・クール」の店内

ウッディな雰囲気が漂う「ル・クール」の店内

ビルの地下1階にある「ル・クール」はウッディな雰囲気の店内に、カウンター(9席)と5つのテーブル(計18席)。カウンター席に腰掛けると、「苺(いちご)」、「安納芋」と書かれたカクテルのお品書きが目に入りました。

季節のフルーツを使ったカクテルなどが書かれたお品書きのプレート

――お品書きがあるバーは珍しいですね。

石田さん 多くのバーに「お品書き」がないのは、バーテンダーから「今日は何を召し上がりますか?」とお客さんに尋ねて、会話のきっかけを作る意味もあります。一方で、バーが初めての方などは、何を注文すればいいか戸惑うことも。お品書きはそうした方でも気軽にカクテルを注文できるよう、季節の果物を使ったものや人気のものをご案内しています。安納芋のカクテルは、オーブンで焼いた芋をミキサーにかけてスムージーにしたデザートカクテルで、男女問わず人気ですよ。

――「ル・クール」の名前の由来は。

石田さん フランス語の「LE COEUR」で「心」という意味です。最初はフランス語で「縁」という意味の「LE LIEN」(ル・リアン)にしようと思ったのですが、「LIEN」が「りえん(=離縁)」とも読めるので、結局「LE COEUR」に落ち着きました。

「モヒート」を作る石田さん

ミントとライムを使ったカクテル「モヒート」を作る石田さん

――ウイスキーの種類が多いですね。

石田さん 最初はそんなに多くなかったんです。ふだん朝の5時まで営業していて、ほかのバーでお酒を飲む機会が少ないので、試飲用にと世界各地のウイスキーを買っているうちに増えました。お店にある約400種類のお酒のうち、約半分はスコッチなどのウイスキー。お客さまも次第にウイスキーの注文が増えてきました。

「ル・クール」のカウンターに並ぶお酒。石田さんが試飲のため少しずつ買ったウイスキーは200本を超える

――バーテンダーとして大事にしていることは。

石田さん やっぱり、お客さまとの「縁」です。バーテンダーの仕事も自分から始めたというより、周囲の人との出会いで自然とそうなった、という感じでしたので、人との縁って大事だな、と思います。常連の方もいちげんの方も、街にあまたあるバーの中からうちを選んで来てくださるのですから、ひとときの出会いを大事にしたい。お客さまがお帰りになる時は、できる限り外までお見送りしています。人混みに消えていくお客さまの背中を見ながら、「今日は喜んでいただけたかなあ」と自問自答するんですよ。

バー「ル・クール」の入り口

「ル・クール」店舗情報

住所 熊本市中央区下通1丁目11-8 甲斐ビル地下1階(光琳寺通り)

アクセス 熊本市電「花畑町」電停から徒歩4分
営業時間 20時~翌朝5時
定休日 不定休
電話 096-327-2282
システム カクテル800円~、チャージ料金500円(いずれも税込)
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