100年の森、守り育てる 林業家5代目で新事業も展開 野中優佳さん

100年の森、守り育てる 林業家5代目で新事業も展開 野中優佳さん

【令和に咲く】新時代担う若者に同世代の記者がインタビュー

野中優佳さん

5代にわたり受け継ぐ山で、林業を営む野中優佳さん=山鹿市鹿北町

熊本日日新聞社の「平成生まれ」の記者たちが、IT業界やアート、音楽など、さまざまな分野で挑戦を続ける、熊本県出身や在住の同世代の若者を取り上げる連載「令和に咲く」。

今回は、熊本県山鹿市の林業家5代目の野中優佳(ゆか)さん(28)を取材しました。記事は文化生活部の平澤碧惟記者(22)、写真は写真映像部の上杉勇太(30)が担当しました。

3Kの印象が強かった林業 気持ちを変えた一冊の本

野中さん

さっそうと作業現場に向かう野中さん

杉の女王といわれる「あや杉」が立ち並ぶ山鹿市鹿北町の山林。野中優佳さんは、この地で100年以上続く林業家の5代目だ。自ら立ち上げた会社の社長としてチェーンソーを振るい、木材を削る。「仕事はめっちゃ大変。だけど気持ちいい」

5人姉妹の4番目。もともと林業に興味はなく、通信制高校を卒業後はパチンコ店のアルバイトなどを続けた。21歳の頃、「お小遣い稼ぎ」のつもりで父の手伝いを始めた。

家が代々受け継いできた山林は約50ヘクタール、東京ドーム10個分の広さ。だが、姉も妹も林業を継ぐ気はない。「漠然と『この山はどうなるんだろう』と考えてはいたが、3K(きつい・汚い・危険)の印象が強く、やりたいとは思えなかった」

気持ちが一変したのは23歳の時。父から渡された一冊の本がきっかけだった。木材を超低温の45度で乾燥させる機械を開発した技術者らが、原木の一本一本に愛情を注ぐさまに胸を打たれた。

「私の目の前にある木も、じいちゃんやたくさんの人の手で守られてきた。『3Kでもいい、守りたい』という気持ちが込み上げてきた」

取り巻く環境は厳しい だからこそ「新事業打ち出しやすい」

木材を運ぶ野中さん

加工前の大きな木材を運ぶのもなかなかの力仕事だ

2014年、県の「緑の新規就業支援研修」に参加。間伐や測量などの知識と技術を学び、研修中に「株式会社ゆうき」を設立した。社長の自分を含め3人の小所帯。間伐の請負のほか、ビルの内装に使う「置き板パネル」の製作などを手掛ける。通年の仕事を確保し「ようやく軌道に乗ってきた」と言う。

外国産材との価格競争や担い手不足など、林業を取り巻く環境は依然として厳しい。それでも「国内の同業者が少ないからこそ、新たな事業を打ち出しやすい」と意欲的だ。

いま力を入れているのは、森の魅力を伝えるイベント。月1回程度、SNSなどで参加者を募り、所有林を案内する。「森に入って『気持ち良かったー』と思ってくれるだけでいいんです」

(2019年12月6日付熊本日日新聞朝刊掲載)

野中優佳(のなか・ゆか) 略歴

野中優佳さん

小型の乾燥機に木材を運び終え、ちょっとひと息

1991(平成3)年生まれ。通信制のくまもと清陵高を卒業後、3年間のフリーター期間を経て家業の林業を継ぐ。2014年11月、株式会社ゆうきを設立。

〈取材を終えて〉 信念と情熱で林業界変革

平澤碧惟記者

電動工具を使った木材の切り方を野中優佳さんに教わる平澤碧惟記者

初めはチェーンソーを持ち上げるだけでもきつかったという。なぜ林業を続けているのかと聞くと「なんでだろう」と笑いながら、「うまく言葉にできないけど“使命感”かな」と、さらりと言った。切り出しから製材、販売まで一貫して扱う会社を立ち上げたのも、「大切な木を最後まで見届けたい」との思いから。揺るがぬ信念と情熱が、彼女いわく「絶望の林業界」に変革を起こしてくれると信じている。(平澤碧惟)

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