地域住民の暮らし支えて120年 JR三角線 駅・沿線の風景まとめ

地域住民の暮らし支えて120年 JR三角線 駅・沿線の風景まとめ

「地域の線路、いつまでも」-。2019年12月21日、熊本県の熊本市と宇土市、宇城市三角(みすみ)町を結ぶJR三角線の開通120年式典が三角駅であり、関係者や保育園児らが節目を祝いました。沿線の網田駅でも式典があり、地元住民らの暮らしを支える鉄路に感謝しました。

三角線開通120周年記念式

出発式で合図を出す守田憲史宇城市長(左)と木村信治三角駅長=2019年12月21日、宇城市

三角線は1899年12月25日に開通。天草方面への観光や、宇土市方面への通勤・通学の足となっています。2011年からは観光特急「A列車で行こう」も運行しており、外国人観光客の利用も目立ちます。2018年に三角駅から乗車した人は約14万5千人に上ります。

三角線宇土-三角間の25.6キロの路線は、生活を支え、海あり山ありの風光明媚(めいび)な観光ルートとしても愛されています。駅のある光景を紹介します。(熊本日日新聞社宇城支局・内田秀夫、宇土支局・西國祥太)

※熊本日日新聞朝刊で2019年12月23日~28日に連載された「海行き山行き三角線 開通120年」を再構成しました。情報は掲載日時点です。

JR三角線の終点「三角駅」 駅舎は“南蛮風”に

線路が途切れた部分から見た三角駅構内。特急到着時などの普通列車待避線として使われている=2019年12月20日、宇城市

JR三角線の終点、三角駅(宇城市三角町)は宇土半島の先端にあり、駅舎の目の前には三角東港が広がっています。同線開通後、陸海を結ぶ交通の要衝として栄えました。今では昔日のにぎわいはありませんが、港ならではの独特の開放感が漂います。

1938年建築の駅舎は2011年、観光特急「A列車で行こう」の運行開始に合わせ“南蛮風”に改修。レトロな外観にベージュ色の壁は、港町の街並みにもマッチし、南国気分を高めてくれます。

夜の三角駅

夜の三角駅。通勤・通学客の姿が目立つ

対岸の戸馳島(とばせじま)から眺めると「海のピラミッド」と駅舎が、まるで海に浮かんでいるように見えました。

JR三角駅

三角東港に面したJR三角駅。右は「海のピラミッド」

(2019年12月23日掲載)

鹿児島線と三角線の分岐点「宇土駅」 石垣イメージのモダンな建物

R宇土駅で停車する列車

JR宇土駅で停車する列車。上は九州新幹線の高架線路=宇土市

鹿児島線と三角線の分岐点・JR宇土駅(熊本県宇土市三拾町)は、三角線より一足早い1895年、現在の鹿児島線の駅として完成しました。朝夕の通勤・通学時間帯は多くの利用者でにぎわいます。

九州新幹線高架下の黒いモダンな建物は、市が自由通路などを整備して2010年3月に完成。国道3号側の東口は宇土城跡石垣をイメージしました。ホームセンターが出店するなど発展しています。西口のイメージは有明海のノリ網です。

JR宇土駅東口

九州新幹線高架下のJR宇土駅東口。宇土城跡石垣をイメージしている

西口近くで80年以上続く角屋食堂を1人で営む馬場みち子さん(73)は「駅東側が整備され、人の流れが変わった。常連が多い、うちの店はこれくらいでよかバッテン」と笑います。

(2019年12月24日掲載)

かつては絶好の潮干狩りスポット「肥後長浜駅」

肥後長浜駅

港町にある肥後長浜駅近く。線路の横を国道57号が通る=宇土市

国道57号が通り、有明海に面した肥後長浜駅(宇土市長浜町)の近くには、軌道を支える石垣が並びます。一部には、かつては潮受け堤防だったと思われる波返しも残っています。

肥後長浜駅近くの石垣

肥後長浜駅近くの石垣。潮受け堤防だった名残と思われる波返しも残る

周辺はかつて絶好の潮干狩りスポットとして知られ、十数軒の休憩旅館が立ち並んでいました。しかし、環境変化などでアサリは激減。6年前から地元漁協が資源回復の取り組みを始め、2018年には観光潮干狩りも復活しました。

2018年4月28日付熊本日日新聞朝刊

観光潮干狩りの再開を伝える2018年4月28日付熊本日日新聞朝刊

地元区長の園田正弘さん(75)は「潮干狩り客用の臨時列車も出るほどにぎわっていた。かつてのにぎわいが少しでも戻ってほしい」と願っています。

(2019年12月25日掲載)

熊本県内最古の木造駅舎「網田駅」 三角線開業時の姿残す

網田駅

網田駅で観光列車「A列車で行こう」(左)の通過待ちをする三角線の普通列車=宇土市

熊本県内最古の木造駅舎で国登録有形文化財のJR網田(おうだ)駅舎(宇土市下網田町)は、三角線開業時からの姿が唯一残ります。赤い屋根が特徴的です。

宇土市が2012年、駅舎をJR九州から購入。地元住民でつくるNPO法人「網田倶楽部(くらぶ)」が管理・運営し、駅を核にしたまちづくりに取り組みます。週末にはレトロな雰囲気を生かしたカフェを開いています。取材した日は、駅で出会った移住者カップルの結婚式もありました。

網田駅舎で結婚式を開くため、列車からホームに降り立ったカップル

網田倶楽部の益田信明代表(67)は「駅には住民それぞれに思い出がある。これからも守っていきたい」。

(2019年12月26日掲載)

木々に囲まれた「赤瀬駅」 “秘境駅”と評する鉄道ファンも

赤瀬駅

緑に囲まれた赤瀬駅。海沿いの駅とは思えない=宇土市

赤瀬駅(宇土市赤瀬町)は、赤瀬海岸沿いの国道57号から細い急坂を上った場所にあります。海からわずかの距離ですが海抜40メートル強。駅周辺は木々に囲まれていて、むしろ山中の駅のような静けさが漂っています。

昭和50年代までは夏場の海水浴客でにぎわっていましたが、今では朝夕に通勤・通学客がわずかに利用するのみ。急な上り坂も高齢の利用者を遠ざけているようです。

昼間は人影もなく、緑に囲まれたその風情から、中には「秘境駅」と評する鉄道ファンも。午後4時すぎ、三角方面からの列車が到着しましたが、乗降客はないまま発車。すぐに静寂が戻りました。

(2019年12月27日掲載)

通学客支えるインフラ「波多浦駅」

波多浦駅

ホーム1本だけの波多浦駅。駅横の踏切を中学生が渡っていた=宇城市

赤瀬駅(宇土市)を出た下り列車は、それまでの海岸沿いから一転、山中を進みます。石打ダム駅(宇城市三角町)を経て半島の南側に出たところで、波多浦駅(同)に着きました。

波多浦は1959年に開業した同線では新しい駅。周辺には三角中や専門学校、総合病院などがあり、早朝は宇土方面への通学客の姿も多くあります。

「三角線は“高校難民”の流出を防いでくれている」と住民は声をそろえます。「地域に欠かせないインフラ。いつまでも続いてほしい」。駅横の踏切を、将来の通学客である中学生が自転車を押して渡っていました。

(2019年12月28日掲載)

JR三角線のルート

路線図は平成30年の国土数値情報の鉄道データより作成。このデータは公式の路線情報ではありません。

【グーグルアースによるルート動画】

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