熊本市上通町で創業し113年「メガネの大宝堂」 今も受け継ぐ奉仕と進取の気性

熊本市上通町で創業し113年「メガネの大宝堂」 今も受け継ぐ奉仕と進取の気性

老舗とともに

メガネの大宝堂

メガネの大宝堂上通本店の正面=熊本市中央区上通町

熊本の街の移り変わりを、昔から見つめ続けてきた老舗。店と街の歴史、代々伝わる商売の心得や新たな挑戦について、店主に語ってもらう企画「老舗とともに」。

今回は、熊本市中央区上通町で創業して今年で113年、「メガネの大宝堂」を取材しました。その企業風土には、快適な視力を支える責任感と、創業者から受け継いだ“進取の気性”があるといいます。(熊本日日新聞社読者・NIEセンター 三國隆昌)

※2020年1月28日付熊日夕刊掲載。情報は掲載日時点のものです。

明治40年開業 新しもの好きだった創業者が眼鏡など扱う

メガネの大宝堂上通本店

メガネの大宝堂上通本店の売り場に立つ布田昭会長(左)と布田善久社長

創業者・布田龍一郎氏の実家は下通の、今のCOCOSA(ココサ)の場所にあった大衆宿「布屋」。質屋、貸家業も営み繁盛したといいます。次男だった龍一郎氏は1907(明治40)年、20代初めで大宝堂を開業。熊本ではまだ珍しかった眼鏡のほか舶来品、時計、貴金属なども扱いました。

地道なアフターサービスが評判を呼び、店は繁盛。熊本県内一円から事業家らが人力車で乗り付け、高価なべっ甲製の眼鏡を求めました。龍一郎氏は貴重品の冷蔵庫をいち早く購入したり、息子の龍吉氏(前会長、2006年に94歳で死去)に自動車のダットサンを買い与えたりしたそうです。

親分肌で、市会議員も務めた龍一郎氏。その孫で3代目社長を務めた布田昭会長(72)は「祖父は新しもの好きだったのを覚えています。新しいことに取り組む姿勢は現在も受け継がれています」と話します。

進取の気性と同時にもう一つ、今の大宝堂で大事にされているのは「顧客の視力や聴力をサポートすることを通じて社会に貢献する」という考え方です。

布田会長は大学卒業後、名古屋市のキクチメガネで修業。社長だった熊本県出身の故・森文雄さんから「人生は奉仕であり、職業は奉仕への道である」と薫陶を受けました。また、大切な視力にかかわる仕事であり、専門的な知識や技術が必須との考えも教わったといいます。

熊本地震・本震から4日目に営業再開 来店できない被災者へ支援も

熊本地震の被害から営業を再開したことを伝える2016年4月26日付熊本日日新聞朝刊

4代目の布田善久社長(37)は2015年に就任。翌年、熊本地震に見舞われました。下通のVisio店が全壊。上通本店もショーウインドーのガラスが破損するなどしました。

「眼鏡が壊れて困っている」と被災者から電話が相次ぎ、本震から4日目に営業再開。被害の大きかった益城町へは社長自ら出向き、老眼鏡や近視用の眼鏡、補聴器の電池を届けました。

眼鏡の補修をする社員

大宝堂の社員たちは経営理念を記したカードを携帯しているそうです。そこに書かれた「新しい老舗になろう 新しい自分になろう」という言葉は、社長や社員が一緒に考えたといいます。

「時代が大きく変わる中、新しい取り組みにスピーディーに挑んでいくことが重要。専門店としてこれからも信頼され、愛される企業であり続けたい」と布田社長は話しています。

地下の美術ギャラリー 作品展など文化交流の場に

アートスペース大宝堂

2019年12月、アートスペース大宝堂で開かれたミニ四駆のレース大会(メガネの大宝堂提供)

メガネの大宝堂・上通本店の地下には美術ギャラリー「アートスペース大宝堂」があります。約250平方メートルのゆったりした空間。画家や書家、愛好家グループなどの作品展が開かれ、文化交流の場として長年愛されています。

同店舗を1977(昭和52)年に改築した際、地階はしばらく物置のように使われていたといいます。コンクリート打ちっ放しの空間に目を付けたのが、改築の設計を手掛けた建築家の緒方理一郎さん(故人)。2年後に緒方さんが開いたアントニオ・ガウディ展を皮切りに、一般の作品展向けに貸し出すようになりました。

最近は子ども向けのさまざまなイベントをアートスペースで開くことも多く、2019年12月にはミニ四駆のレース大会と視力に関する講演会を同時開催。親子で楽しみながら、子どもの視力についても関心を高めてもらおうという試みです。

「老舗というと敷居の高いイメージがあるかもしれないが、作品展やイベントを機に気軽に来ていただければ」と布田昭会長は話しています。

「メガネの大宝堂」のあゆみ

1907(明治40)年 布田龍一郎氏が上通町4丁目(当時)で大宝堂を創業

創業当時の大宝堂(提供写真)

創業当時の大宝堂(メガネの大宝堂提供)

1926年 現在の上通本店所在地に移転

大宝堂店内(提供写真)

昭和初期の大宝堂店内(メガネの大宝堂提供)

1951年 合資会社・大宝堂眼鏡舗を設立、2代目・龍吉氏が代表社員に就任

「大宝堂」の屋号

明治時代の書家、前田黙鳳の筆による「大宝堂」の屋号。上通本店の待合スペースに掲示されている

1953年 6・26熊本大水害で被災
1972年 下通店がオープン。その後県内各地に最大12店舗出店し、現在は6店舗
2003年 昭氏が社長就任
2015年 善久氏が社長就任。昭氏は会長に
2016年 熊本地震で下通のVisio店が入る建物が全壊
2018年 Visio店が新装オープン

メガネの大宝堂・上通本店

住所 熊本市中央区上通町5-6

アクセス 電車通り側の上通入口から徒歩2分
営業時間 10時~19時半
定休日 なし
電話 096-354-2155
公式HP https://www.taihodo.net/
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