昔ながらの「ゲーセン」 閉店相次ぐ理由は? ゲーム愛好者の記者が、背景を探ってみたら…

昔ながらの「ゲーセン」 閉店相次ぐ理由は? ゲーム愛好者の記者が、背景を探ってみたら…

ここ数年、「昔ながらのゲームセンター」の閉店が熊本県内で相次いでいます。私は10代から、熊本市内などのゲームセンターを巡り、店内の雰囲気を味わったり、あまり見かけないゲーム機で遊んだりするのが趣味。28歳の今も月3回ほど気分転換に訪れます。

2019年の秋、私用で天草市中心部へ行った際、以前から気になっていた「グリーンモンスター」に行ってみました。「グリーンモンスター」は米大リーグの球場ではなく、天草のゲームセンターです。ところが到着してガッカリ。店内の電気がついておらず、入り口も閉まっていました。天草の知り合いに聞くと、この年の春ごろに閉店したそうです。

グリーンモンスター

2019年春ごろに閉店したというゲームセンター「グリーンモンスター」=同年11月、天草市

若いときからの大切な「居場所」だったゲームセンターが姿を消していくのは残念でたまりません。閉店が相次ぐ理由について、自分なりに調べてみました。(熊本日日新聞・木村馨一記者)

※情報は2020年2月20日時点です。

薄暗い店内、夜遅くまで営業

本題に入る前に、「昔ながらのゲームセンター」について整理したいと思います。一般的に「ゲームセンター」の範囲は広いです。独立した店構えのほか、ボウリング場や温泉施設内などのゲームコーナーも含め、業務用ゲーム機を置いて営業する形態すべてを指します。業界では「アミューズメント施設」などとも言うそうです。最近では、商業施設内の一角にある、子ども向け遊具が充実して家族連れで楽しめるメーカー運営のタイプ、人気のクレーンゲームに特化した店も目立っています。

その中、今回取り上げる「昔ながらのゲームセンター」(以下「ゲーセン」)は、道路沿いや繁華街に立地し、若者向けのビデオゲームをそろえる店です。概して店内は薄暗く、夜遅くまで営業しているタイプです。

インベーダー、ゼビウス、パックマン…ヒット作相次ぐ

そんな「ゲーセン」は、時代とともに、どう様変わりしているのでしょうか。

ゲーム機メーカーなどでつくる「日本アミューズメント産業協会」によると、業務用ゲームを楽しむ場所は、1960年代を中心とするボウリングブームとともに全国に広がりました。ビデオゲームは70年代に出回りはじめ、78年に登場したインベーダーゲームの大流行により、喫茶店や文具店など幅広い店に設置されるようになりました。

さらに80年代に入ると「ゼビウス」「パックマン」などのヒット作が相次ぎ、独立した「ゲーセン」も増えていきました。

平成元年ごろは熊本県内に30店以上

私より上の世代のゲーム愛好者に話を聞くと、「ゲーセン」が特に活況だったのが、1990年代前半ごろ。「ストリートファイターⅡ」「ザ・キング・オブ・ファイターズ」といった対戦格闘ゲームが人気を博し、熊本県内で30店以上が営業していたそうです。

熊本市白山通りにあったゲームセンター「P」。2003年9月の閉店日には多数の客が詰め掛けた(提供)

それから30年後、年号も平成から令和に変わった現在、県内で営業している「ゲーセン」は十数店とほぼ半減。2000年代後半から閉店の動きが目立ち、ここ数年でみると、天草市のグリーンモンスターのほか、熊本市でも、白山通りにあった「J」、上熊本の県立総合体育館近くの「G」、下通の商業ビル地下にあった「F」などが相次ぎ閉店しました。私もよく出入りしていた、浜線バイパス沿いの「A」も、熊本地震の前に営業をやめたそうです。

もっとも「ゲーセン」の減少は全国的な傾向のようです。2018年度の警察白書によると、さまざまな形態のゲームセンターの店舗数は全国で約4千店と、89年の約2万店から大幅に減っています。

1台で100万円以上、ネット接続費も

では、「ゲーセン」の閉店が続く理由は何でしょうか。背景に「利益を出しにくい」経営環境があるようです。

ゲーム好きの知人で、熊本市内の「ゲーセン」でアルバイト経験もある40代の自営業男性によると、次のような状況です。

筐体(きょうたい)の業務用ビデオゲームは、価格が1台100万円を超えるものがほとんど。大型機になると500万円する筐体も…。ゲーム代が100円とすると、単純計算で1万回以上の利用がないと購入費もまかなえません。客のニーズにこたえるためには、次々と登場する新作を購入する必要もあります。
ゲーム筐体

さらに最近の主流は、インターネットで全国のプレーヤーと対戦したり、自分の戦績データを更新したりするタイプのため、ネット使用料(通信手数料)もかかります。消費増税による電気代やメンテナンス費の値上げも経営を圧迫。ゲーム代は「1回100円」など切りの良い価格で定着しており、増税分の転嫁が難しいそうです。確かに「1回110円」では、10円玉を用意するのが煩わしくて、興ざめしますね。

今の若者にとって「ゲーセン」とは?

もちろん、経費分をカバーできるほど店がにぎわえば問題ないのでしょうが、むしろ客数は減少の一途。少子化の影響もありますが、それ以上に若い人の「ゲーセン離れ」が進んでいるようです。

今の若い人は、「ゲーセン」をどう捉えているのでしょうか。崇城大(熊本市)でアニメやゲームといったポップカルチャーを活用した地域おこしに取り組むサークル「PTP」の大学生12人に集まってもらい、話を聞きました。

基本無料で手軽 スマホゲームに夢中

このサークルのメンバーはゲームに興味を持つ人がほとんどですが、普段はスマートフォンや家庭用のゲーム機で楽しんでいるようです。

高校時代、毎日のように「ゲーセン」に通っていたという4年生の男子学生(22)は「スマホなど、いろんなことにお金を使う機会が増えた」として、週1、2回に減ったそうです。1年生の男性学生(19)も「高校時代はよく行っていたが、1人暮らしでお金の使い方を考えるようになり行かなくなった。スマホのゲームは基本無料の種類が多いし、いつでも、どこでも楽しめるのがいい」と話してくれました。


今回集まってもらった学生のうち半数の6人が「『ゲーセン』に行ったことがない」とのこと。そのうちの一人、1年生の女子学生(19)は、ゲームは好きでも「ゲーセン」に関心がなかったそうです。「親から出入りを禁止されていたし、一緒に行く友達もいない。一人で気軽にスマホゲームを楽しむ方がいい」

今や「元若者」が集う場所に

では逆風の中、今も営業を続ける「ゲーセン」は、どんな状況なのでしょうか。近隣に高校や大学が多い文教地区の熊本市中央区大江で40年以上稼働している「大江ゲームセンター」(下の写真)を訪ねてみました。

ここは「ストリートファイター」「鉄拳」などのゲームやスロットマシンなど約100台を設置。節電とブラウン管の消耗を抑えようと、客が利用しない時はビデオゲームの電源をオフにしています(下の写真)。


店内を見回すと、中年のお客さんが数人、マージャンゲームやスロットマシンに興じていました。2011年に経営権を引き継いだというオーナーの男性(59)は「うちは若い人はほとんど来ません」ときっぱり。「常連客は、ひと昔前のゲームを楽しみたいという中年のお客さんがほとんど。『ゲーセン』が一番元気があったころのお客さんばかりです」

かつて若者を熱中させた「ゲーセン」の継続、個人経営での新規開店は難しいことなのでしょうか。このオーナーさんは「電気代も高いし、難しいと思います。利益を求めず、楽しく経営したいというなら別でしょうけど」と話していました。

大江ゲームセンターの店内。空席のゲーム機が目立つ=2019年11月、熊本市中央区

年齢や学校違う友人との出会いも

私が「ゲーセン」にはまったのは、高校時代。レバーとボタンを駆使して、格闘ゲームやクイズゲームを楽みました。当時の小遣い月2千円から100円、200円をゲーム代にひねり出し、見知らぬ人と対戦する「ヒリヒリした感覚」が何とも心地よかったです。店内は薄暗く、たばこの臭いが漂い、騒がしかったけれども、不思議と心が落ち着く空間でした。


「ゲーセン」は出入りを校則で禁止する高校があるように、「不良のたまり場」「非行の温床」とのイメージも強いです。ただ私自身の経験では、さほどトラブルが多い場所という印象はありません。

むしろ、私は「ゲーセン」で、年齢や学校が違う何人かの友人ができました。一部の人とは大人になっても付き合いが続き、時折、お酒を飲みながら、昔遊んでいたゲームの話などで盛り上がっています。

「とっておきの場所」一店でも多く存続を

「若いころ『ゲーセン』に行けば、友だちが何人かいた。友だちに会うために『ゲーセン』に行く、という一面もあった。携帯電話が普及した今は、待ち合わせる必要もなくなった」

今回の記事で紹介した、「ゲーセン」でアルバイト経験がある40代自営業男性が、こう語ったことがありました。

「若者の交流の場」だった「ゲーセン」は、今や「元若者」の息抜きの場になっています。「大江ゲームセンター」とは別の「ゲーセン」経営者は、「個人経営店は、どこも苦しいと思う。店舗数はもっと減っていくだろう」と寂しそうに話していました。

今は、「eスポーツ」の世界的な人気により、「ゲーム」というコンテンツに、若者を中心にかつてないほど注目が集まっています。しかし、そのうねりは、「ゲーセン」にまで、届いていないように感じます。せっかくのチャンス、生かせる手はないものでしょうか。私にとって「とってきおきの場所」である「ゲーセン」が、一店でも多く営業を続けてくれることを、願ってやみません。

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