熊本のスナックめぐり 八代市本町「フレンチカンカン」編 「当たり前の気配り、積み重ねたい」

熊本のスナックめぐり 八代市本町「フレンチカンカン」編 「当たり前の気配り、積み重ねたい」

スナックのママ物語

熊本のネオン街にあるスナックのママさんたちが、月替わりで、夜の街のエピソードを語る、大好評の熊日連載「ママさんぽ~熊本のスナックめぐり」(毎週金曜夕刊「街・まち」面)。

「cross kumamoto」では、各月分を1回にまとめ、未掲載の写真や、お店に関する情報、熊日紙面に登場したことへの感想などをプラスしてお届けします。

今回は2019年12月に掲載した八代市本町の「フレンチカンカン」オーナーの村上節子さん(71)の「ママ語り」です。

※店舗情報は、2020年3月20日時点です。来店する際は事前に確認してください。

〈第1話〉 ベテラン経営者に教えられた「商売の楽しさ」

「フレンチカンカン」店内のカウンター

この店を始めたのは昭和63年11月。それまでの12年間は「暖家(だんけ)」という喫茶店をやっておりました。

若い頃はデパートの化粧品コーナーで働く「チャームガール」に憧れましたが、あれは東京本社採用なんです。私は一人っ子でしたから母がどうしても八代から出さない。それで地元の資生堂チェーンストアに就職しました。

そこの経営者のおじいちゃまが、本当にお客さまを大事にされる、すごい商売人だったんです。「商品を売るんじゃなくて自分を売るんだよ。この人が売るから買ってあげようと思う、それが商売なんだよ」と教えられました。心からやったらこんなにお客さまに届くんだ、商売って楽しいなあって思ったんです。

結婚して退職しましたが、どうしても商売をやりたいという気持ちがあり、喫茶店を開業。その後離婚し、1人で子どもたちを育てていかなくちゃということで、40歳の時、夜のお店を始めたんです。

(2019年12月6日付掲載)

〈第2話〉 誠心誠意で繁盛 銀行から「ビル買いませんか」

天井が高い店内

このスナックを最初に開業したのは、バブル景気の昭和63年。現在の店のすぐ近くにある9階建ての料飲店ビルでした。すごく繁盛させていただいたんですよ。お客の出入りが4回転することもありました。誠心誠意、一生懸命でしたから。あの場所には神様がいると思っていました。

ある時、現在のこのビルを中古で買わないかというお話が来て、そんな大それたことは考えられませんといったんお断りしました。そしたら銀行さんがうちの店のことを調べて、「錚々(そうそう)たるお客さまがいらっしゃるお店なので、保証人は要りませんから」って言ってくださったんです。涙がぼろぼろ出て、「よろしくお願いします」と後日お返事しました。

それで現在の場所に移ることになりました。内装をお願いしたのは東京芸大出で、京都祇園や銀座のお店を手掛けていらっしゃる先生。ここはディスコとして造られたので天井がすごく高いんです。それを生かした素晴らしい空間をつくっていただきました。

(2019年12月13日付掲載)

〈第3話〉 小児まひ 母の一念で「奇跡の完治」

店内のVIP席

私は八代の日奈久で育ちましたが、生まれは熊本の河内・白浜です。母は6人きょうだいの長女で、15歳の時に祖父が亡くなったため芸妓になりました。自分の働きだけでおじ、おばたちを育て上げ、結婚させたんです。戸籍上は父親はいませんが、おばあちゃんとおじ、おばに愛情いっぱいに育てられました。

ところが、3歳の時に小児まひになったんです。全く歩けず、母は夜ごと本妙寺にお百度参りをしました。ある時、母は温泉治療を思い付いて日奈久に引っ越したんです。毎日私を温泉に入れて、お座敷で働き、夜中に帰ってからはマッサージ師さんを呼んでくれていました。

そしたら何ということでしょう。5歳前くらいに小児まひは跡形もなく治ったんです。お医者さんが「奇跡」とおっしゃいました。学校では卓球でも何でもして、全く後遺症もありませんでした。本当に、母の一念です。言葉にならないほど、感謝しています。

(2019年12月20日付掲載)

〈第4話〉 自分は後回し 母の気配り受け継いで

母は私が「芸者の子」といじめられないよう、小中学校では先生といつもコンタクトをとり、私の友達や周りの方々も大事にしてくれました。芸妓を引退して置き屋をやり、八代の本町で割烹(かっぽう)を営んだあと18年前に80歳で亡くなりました。

今でも、誰に会っても「お母さん元気?」って聞かれます。本当に気配りがすごくて、人によくしていました。自分のことはいつも後回しにして、ひと様のことを考える人でした。今でも、とても尊敬しています。

私は一人っ子でわがまま放題。でもこまやかな気配りはちゃんと受け継いでいるんですね、知らない間に。私には100パーセント母の血が流れているんです。

といっても、何も特別なことができるわけじゃありません。当たり前のことの積み重ねが特別になるんです。お酒はどこで飲んでも味は変わりません。後は誠心誠意のサービスが問われる商売。こんな素晴らしい仕事はないと思いますね。

(2019年12月27日付掲載)

節子ママにインタビュー

村上節子ママに、熊日紙面に登場した反響などを聞きました。(2020年2月26日)

――小児まひを患った幼少時代のこと、尊敬する母親のエピソードなど、熊日の紙上で、赤裸々に語っていただきました。反響はありましたか?

節子ママ 八代でも熊日の夕刊読んだ方が結構いて、数人から「記事読んだよ。苦労したんだね」と。私たちはお客さまの話を聞くのが仕事なので、普段、自分の過去など話さないものですから、新鮮だったみたい。もっとも私は「苦労した」とは思っていませんけれども(笑い)。うれしかったのは、熊本市在住のかつての常連さんたちからも「読んだよ」とお電話をいただいたことです。お話しするのも20年以上ぶり、という方もいて感激しました。うちの店が成り立ってきたのは、いいお客さまのつながりがあってこそ。本当に感謝しています。

――「フレンチカンカン」という店名にした理由は?

節子ママ 「フレンチカンカン」は本来、フランスの女性のショーダンス。店名にしたのには、いきさつがあって。私が喫茶店を経営していたころ、自営業のお客さんが「節ちゃん、売れ筋の商品は名前に『ン(ん)』が入っているんだよ」と話していました。そして、「スナックを始めよう」と考えていた時、常連客の販売員さんから、ある香水を薦められました。その香水名が「フレンチカンカン」。「『ン』が三つも。これだ!」とすぐ店名に決めました。その時に買った香水は、今でも自宅に大切に置いています。

「フレンチカンカン」の看板

――「フレンチカンカン」はどんなお店ですか?

節子ママ 落ち着いたムードで、お酒と会話を楽しんでいただくお店です。カラオケもありますよ。かつて、接待で利用された企業の上役さんから、「うちの社員のような接客してくれてありがとう」と感謝されたことがありましたが、スタッフには「接待する社員さんの気持ちで、誠心誠意おもてなしを」とお願いしています。今回の記事でも書きましたが、(昔では)当たり前の気配り、心配りをきちんと積み重ねることで、お客さまに「特別な店」と感じていただきたいと思います。

店の入り口で、マスターの長男・浩亮さん(46)と

店舗情報

住所 八代市本町1丁目3-19、「夢カンカン」ビル5階

アクセス 本町1丁目アーケード東側入り口そば

  • JR八代駅からタクシーで7分
  • JR新八代駅からタクシーで15分弱
  • 八代市役所から徒歩10分弱
営業時間 20時~25時
定休日 日曜・祝日
電話 0965-32-3319
システム セット料金4000円(90分)、飲み放題3000円(90分、5人以上)

 

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