〝究極の平地〟八代海干拓地を自転車で走る 広大な農地に先人の苦労

〝究極の平地〟八代海干拓地を自転車で走る 広大な農地に先人の苦労

ゆるっとチャリ旅

自転車でゆっくりペースで熊本市近郊などを走り、立ち寄りスポットを紹介するシリーズ「ゆるっとチャリ旅」。

坂道は嫌いです。ならば“究極の平地”を走るコースはと考えて、思い付いたのが干拓地。宇城市から八代市にかけて広がる農業地帯を、干拓の史跡を訪ねながら走りました。(熊本日日新聞社読者・新聞学習センター 鹿本成人)

赤い線が今回の走行ルート。番号で表示しているのが、写真入りで紹介する立ち寄りスポット(各写真の説明文に番号)

※2020年4月10日付熊日夕刊掲載。文中の情報は掲載日時点のものです。

宇城市不知火町をスタート 江戸後期の樋門連なる

沖塘の樋門群

①6基が連なる「沖塘の樋門群」の樋門の一つ。1852年の完成から150年以上たつ=氷川町

スタートは、八代海の北端にあたる宇城市不知火町。県道338号を南下すると、眼前に農地が広がっていました。ほとんど起伏のない道は快適で、追い風にも恵まれ楽ちんです。

最初にペダルを止めたのは、氷川町の「沖塘(おきども)の樋門群」。県道に沿うように樋門が連なり、周囲には広大な農地が広がります。江戸時代後期、1852年に完成した干拓地に造られた樋門です。重機の無い時代、人力で築いた先人の努力に頭が下がります。

見渡す限りの農地 海だった痕跡も残る

「大鞘樋門群」の樋門の一つ

②「大鞘樋門群」の樋門の一つ。熊本地震で損傷した姿が痛々しい=八代市

さらに南下して八代市鏡町に入り、大鞘(おざや)川をさかのぼるように走ったところにあるのが「大鞘樋門群」。1819年に干拓された「四百町新地」に設けられ、激しい潮流や川の流れに耐えるため、大きな石を使った堅固な構造が特徴です。

近くの千丁漁協で、職員の有馬理恵さん(46)と話すと、「大鞘川ではボラが群れ、日によっては潮の香りがしますよ」。周囲は見渡す限り農地ですが、海だった痕跡は残っています。

漁協前には、労働歌「大鞘節」の記念碑があります。干拓事業に従事した人々が歌ったもので、飲み水がない苦しさなどが歌い込まれています。先人の労苦は、200年たった今も伝わっています。そういえば、八代海を挟んだ上天草市松島町にも、同じような歌が残っています。干拓は、対岸の住民も巻き込んだ一大事業だったのです。

明治、大正期の干拓地進み、ゴールの八代港へ

新大鞘樋門

③大鞘川と八代海を隔てる近代的な「新大鞘樋門」=八代市

大鞘川沿いに八代海へ向かって走ると、近代的な「新大鞘樋門」が見えてきました。周囲は大正時代の干拓地です。ハウスで作業中の高見晶一さん(51)に声をかけると、「ミネラル豊富な干拓地で30年、おいしいトマトを育てています」。ただ「毎年、試行錯誤の繰り返し」とも。熊本県のトマト出荷日本一の座は、農家の努力のたまものと言えそうです。

南下を続けて水無川を越え、明治時代の干拓「郡築新地」に入りました。海沿いの道を気持ち良く進むと「旧郡築新地甲号樋門」が現れました。明治時代に入ってから築造されただけあり、れんが造りの10連アーチは立派。近くの郡築二番町樋門も見学しました。

旧郡築新地甲号樋門

④国指定重要文化財の「旧郡築新地甲号樋門」=八代市

ゴールは八代港。八代港もまた、海だった場所です。人口が増え、産業が急激に発達した時代、土地を求めるエネルギーはどれほどのものだったのでしょう。そんなことを考えながら、旅を終えました。

【お気に入りの1枚】区画整理された農地に「農業県・熊本」実感

八代市鏡町の大鞘川沿いを走っていると、植えられたばかりのイ草と連棟ハウスが目に入りました。広々とした農地は整然と区画整理され、高い生産力を誇るかのようです。干拓地が、「農業県・熊本」を支えているのだと感じました。

走行ルートと立ち寄りスポット

【走行MEMO】
走行距離   29キロ
走行時間   1時間30分
平均時速   19キロ
高低差    5メートル
所要時間   2時間40分
(サイクルコンピューターなどによる)

【サイクリング楽しむためのプチ助言】 自転車倒れない理由は? ハンドルでバランス保つ

自転車

自転車は、回転する車輪とハンドル操作で倒れずに走ることができる

「どうして自転車は倒れずに進めるの?」と素朴な疑問を持ったことはありませんか? 幼児期は補助輪が頼りですが、いつの間にか2輪で走れるようになるものです。

倒れずに進める理由は、回転する車輪に自立する性質があることと、乗る人がハンドルを左右に絶妙に動かしてバランスを保っているからです。

自転車の種類によって、バランスは異なります。シティーサイクルは直進安定性を優先した設計で、ハンドル操作で曲がれます。一方、スポーツ車は、ハンドリングが鋭く、体を自転車ごと倒し込んで曲がります。また、知らず知らずに目線の方向へ進もうとする性質もあります。

真っ直ぐ走っているように見える自転車も、実際にはペダルを右左交互に踏み下ろすため少し蛇行しています。ハンドルから手を放さず乗ってください。むろん、スマートフォンを見たり傘をさしたりしながら走るのは、もってのほかです。(熊本県サイクリング協会・岩永茂利)

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