食べても、食べても… 大盛りちゃんぽんで有名「みちば食堂」 地域に愛される店

食べても、食べても… 大盛りちゃんぽんで有名「みちば食堂」 地域に愛される店

ぶらり新町・古町

みちば食堂

「みちば食堂」のお店の前。のれんは、学生たちの感謝が込められている=熊本市中央区新町

熊本市の新町・古町をぶらぶらと歩く。大盛りちゃんぽんを出す店があるという話を聞きつけた。熊本市電の蔚山電停を藤崎台県営野球場方面に向かって、薬局の先の路地を左に入る。赤のれんに黒字で堂々と「ちゃんぽん」と書かれた、「みちば食堂」(熊本市中央区新町)があった。

腹すかせた苦学生への親心 くせになるとんこつ味

「名代 大盛りちゃんぽん」(700円)。約30年間値上げしていない

さっそく頼んだ「名代 大盛りちゃんぽん」は、その名の通りすごい量だった。キャベツ、モヤシ、エビ、ちくわ…食べても、食べても、麺にたどり着かない。

昔、近くにあった学生会館の苦学生がよく腹をすかして食べに来ていて、親心で大盛りにしたのだという。お代の700円は約30年間値上げしていない。これからも値上げするつもりはないようだ。

「大盛りだけじゃないよ。長崎から来た人が『これぞちゃんぽん』と言ってくれるからね」と店主の道庭ノブ子さん(80)。戦中からあるこの店で働くこと60年近く。豚骨味がくせになりそうだ。

半端ない量のモヤシ 具の大きいおでんも人気

店主の道庭ノブ子さんにちゃんぽんの作り方を見せてもらう。モヤシの量が半端ない

厨房(ちゅうぼう)で作り方をみせてもらった。注文が入ってから野菜を切る。エビ、いかげそ、豚バラ、練りものを用意。モヤシの量が半端ない。中華鍋で具材を炒める。「キャベツの炒め具合が難しいところ」とノブ子さん。

塩をけっこう入れた。秘伝のスープをさっとかける。味を確かめ、もう少し炒める。湯を通した麺に具を載せて出来上がり。1日50杯はつくる。

おでんも人気

おでんも人気だ。こちらも、ひとつひとつの具が大きい。「一口サイズに切ってね、と言っても、大きいんだよなあ」と常連客はうれしそうだ。ダイコン、こんにゃく、馬すじ。干したけのこも出される。

のれんは学生たちの贈り物 帰省客、子どもにも人気

近くに住む森本昭憲さん(78)は娘の美希さん(40)とやってきた。美希さんは帰省すると必ず食べに来る。

以前は電車通りに店があった。美希さんは「小さい頃から通ってます。市電の音を聞きながら食べたのが懐かしい」と語る。

ノブ子さんは近所の子どもたちに人気者だ。お小遣いをもらった子どももいる。子どもたちは愛嬌(あいきょう)を込めて「みちばばあ」と呼ぶ。ノブ子さんは「新町は人情がある街」と語る。

ノブ子さんは山深い水上村で生まれ育った。木と木の間を1時間半ほど歩いて小学校に通った。学校はダムに沈んだ。10代だったある日、姉に「おいしいちゃんぽんを食べよう」と誘われて、みちば食堂に連れて行かれた。村に戻ると、毎日のように食堂から手伝いを求める電報が来た。後の夫となる輝政さん(2014年死去)が出したものだった。

店は夕方6時から朝4時まで開けている。以前は学生が多かった。夢を語る学生を見て楽しかった。卒業証書を持ってくる学生がいた。卒業する学生を国鉄(当時)熊本駅まで見送りに行った。

店にかかるのれんは学生会館の卒業生からの贈り物だ。喜寿のお祝いの会もしてもらった。

「ただいま」「おかえり」 常連客とは家族のような関係

笑顔でちゃんぽんを出す

今はいろいろなお客さんがやってくる。「ただいま」「おかえり」。常連が多く、のれんをくぐってのあいさつは家族のようだ。

日付が変わると店を終えた水商売の人が多い。タクシー運転手が客に「どこかおいしい店、知ってる?」と聞かれて運ぶことで有名だ。明け方にのれんを下ろす時は「きょうも楽しく終わりました。ありがとうございました」と感謝を口にする。

「いい商売をさせていただきました。本を読むより、毎日勉強になります」。ノブ子さんはきょうも笑顔でちゃんぽんをつくる。

店舗情報

住所 熊本市中央区新町3丁目3-33

アクセス 熊本市電「蔚山町」電停より徒歩1分
営業時間 午後6時~午前4時
定休日 月曜(祝日は営業)
電話 096-355-1072

※情報は2020年7月20日時点です。

CATEGORIES
TAGS