甲子園への道なくとも輝いた「夏」! 代替の熊本県高校野球、全試合振り返り

甲子園への道なくとも輝いた「夏」! 代替の熊本県高校野球、全試合振り返り

新型コロナウイルスの影響で中止になった第102回全国高校選手権熊本大会の代替となる、2020夏季熊本県高校野球大会が7月16日から8月3日まで、熊本市中央区のリブワーク藤崎台などで開催されました。当初は、城北と熊本市内、城南の3地区予選を経て県大会(決勝トーナメント)を行う予定でしたが、熊本豪雨の影響を受け、各地区で優勝を競う方式に変更。城北地区は有明、熊本市内地区は文徳、城南地区は秀岳館がそれぞれ優勝しました。

城北地区の優勝を決め、両手を広げて喜ぶ有明ナイン=8月2日、リブワーク藤崎台

熊本市内地区で優勝しマウンドに駆け寄る文徳ナイン=8月2日、リブワーク藤崎台

城南地区決勝の南稜ー秀岳館から。秀岳館は序盤から得点を重ね、優勝した=8月3日、リブワーク藤崎台

学校の臨時休校、練習や各種大会の中止、さらには熊本豪雨と、困難が続いた選手たちにとって待望の晴れ舞台となった大会を、熊本日日新聞は連日詳しく紙面で伝えました。「クロスくまもと」では未掲載写真も加え、「特別な夏」の熱戦をまとめて振り返ります。

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※記事中の情報は、各試合開催時です。写真の数は試合によって異なります。ご了承ください。

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【7月16日】熊本市内大会1回戦

<必由館 5-1 済々黌>中村、12奪三振で完投

必由館-済々黌から

必由館 000041000|5
済々黌 000000001|1

(必)中村-寺尾(済)猿渡、津出、西、甲斐-金山

▽三塁打 園、平良(必)▽盗塁 必4▽失策 必2

【評】必由館は五回、四死球を足掛かりに長短打で攻め立て4得点。六回にも追加点を奪って押し切った。先発中村は力のある直球で押し、12奪三振で完投。済々黌は継投で食い下がったが、九回に1点を返すのがやっとだった。

必由館-済々黌から

◆済々黌 意地の最終回、連打で得点

真剣勝負で臨んだからこそ、悔しさが涙となってこみ上げた。「甲子園はなくなったけど、この大会に懸けて練習してきた。でも相手が上だった」。力負けを喫し、済々黌の甲斐敬太郎主将は声を落とした。

130キロ台後半の直球を繰り出す必由館のエース中村真を捉えきれなかった。初回に四球と失策で1死一、二塁の先制機をつくったが後続が打ち取られた。荒巻智弘監督は「力のある相手だが、あそこで1点取れていれば…」と天を仰いだ。

一方、守備では序盤から走者を背負いながらも二つの併殺などで無失点でしのいだ。しかし、五回に四死球で走者を出すと三塁打を浴びて先制を許す。ここで継投に出たが、相手の勢いを止められず4点を失った。

必由館-済々黌から

新型コロナウイルスの影響で春の県大会などが中止となったため、公式戦は昨年の秋以来。この日の試合は放課後の午後5時からだったため、「授業中もワクワクしていた」と甲斐主将。その思いはチームメートも同じ。打席では全員が最後まで積極性を失わなかった。最終回は連打から1点をもぎ取り、「気持ちを見せてくれた」と指揮官を喜ばせた。

約3カ月にわたった練習休止期間に思いを巡らせ、甲斐主将は「最後にみんなと藤崎台で試合ができて良かった」と晴れやかな表情を浮かべた。

【7月17日】熊本市内大会1回戦

<第一 14-0 真和(五回コールド)>第一の打線爆発、初回10得点

真和-第一から

真和 00000 |0
第一 10022×|14
(五回コールド)

▽二塁打 坂川3、坂口(第)▽暴投 真3▽失策 真1

【評】第一は初回、5四死球に長短6安打を絡めるなど、打者15人を送る猛攻で10得点。坂本と谷本の投手陣も、5回を1安打無失点で締めた。真和は先発の制球難を突かれて守勢に回り、打線もつながりを欠き三塁を踏めなかった。

真和-第一から

◆真和バッテリー、全力プレー

真和は初回の大量失点が響いてコールド負け。それでも野村亮太朗主将は「(3年間)好きなように野球をやらせもらった。感謝しかない」と晴れやかな表情だった。

一回裏。制球の定まらない先発の2年投手の立ち上がりを第一に攻められた。「ボール先行で相手打線がなかなか振らず苦しかった」と桑田哲也監督。5四死球と2本の二塁打などで4失点を喫した。

さらに無死満塁とピンチは続き、捕手の野村主将がマウンドへ。代わってマスクを被ったのは右翼手の蛯原怜司だった。高校の公式戦で初めて組むバッテリーだったが、野村主将は「自分が投げる時は蛯原を捕手に」と指揮官に直訴していた。

真和-第一から

2人は出水中時代からのチームメートで、当時は投手・蛯原、捕手・野村。立場は入れ替わっても勝手を知るバッテリーだった。

そのコンバートも奏功せず、この回で10失点。早々と大勢は決した。だが、「球種は直球とスローボールぐらい」という野村は打者ごとにプレートを踏む位置を変えながら踏ん張った。二回は三者凡退、三回以降も大量失点を許さず、「試合をつくった」と桑田監督はたたえた。

蛯原は「相手が一枚も二枚も上手だった」と悔しがったが、粘投した野村主将は「ナイスリード」と長年の仲間をねぎらった。長雨が続いた今季だが、2人の最後の夏は快晴の下、幕を閉じた。

【7月18日】熊本市内地区1回戦

<熊本西 5-3 第二>熊本西、小刻みに加点し接戦制す

熊本西-第二から

熊本西 011200001|5
第二  101010000|3

▽三塁打 江崎(熊)山下、木村(第)▽二塁打 江崎、川越(熊)▽盗塁 熊3、第1▽暴投 第1▽失策 第2▽捕逸 第1

【評】小刻みに加点した熊本西が競り勝った。積極的な走塁で好機をつくり、1番末永、3番川越、6番江崎が適時打を放った。六回から登板した中山は無失点で締めた。第二は先制したが、中盤以降は得点機であと一押しを欠いた。

◆第二 3年生で総力戦、最後まで競り合い

最後の夏は3年生全員で戦い抜いた。第二は3年生17人のうち半数近くが、学業を優先するため一度は“引退”。だが、仲間の待つグラウンドに戻ってきた。木村健一郎主将は惜敗を悔しがりながらも、「今までで一番面白い試合ができた」とチームメイトをたたえるようにつぶやいた。

6月1日の学校再開から1週間たった頃、3年生でミーティングを開いた。目標とした全国高校野球選手権(甲子園)の中止でモチベーションを保てない選手もおり、悩み抜いた末に7、8人が野球から離れた。

遊撃手のレギュラーだった山下凌矢もその1人。しかし、仲間が練習する姿を見て未練を断ち切れずに2週間後に復帰。他の部員も次々に続き、「本当にうれしかった」と木村主将。今大会に向け、チームが再び一つになった。

熊本西-第二から

初戦の相手は昨春の全国選抜大会に出場した熊本西。初回、右前打で出塁後に生還した山下は、ベンチで待つ仲間の祝福に笑顔で応えた。「やっぱりこのメンバーで野球をするのは楽しい」。最後まで競り合いを演じたが、白星にはあと一歩届かなかった。

ほとんどの3年生は大学などへの進学を目指す。「最後に思いっきりプレーできた。受験の山もみんなで乗り越えていければ」と山下。仲間と白球を追った時間を胸に刻み、すがすがしい表情で球場を去った。

<熊本農 3-2 ルーテル>熊本農、8回に4連続打で逆転

ルーテル-熊本農から

ルーテル 000002000|2
熊本農  00100002×|3

▽二塁打 弥富(ル)山戸、藤本(熊)▽盗塁 ル2、熊1▽暴投 ル1▽失策 ル1

【評】熊本農は六回に1点を勝ち越されたが、八回にバントヒットを含む4連続長短打で試合をひっくり返した。吉田、堀尾の粘り強い投球が逆転劇を生んだ。ルーテルは走塁ミスでチャンスをつぶすなど畳みかけられなかった。

ルーテル-熊本農から

◆ルーテル和田、6回1失点の好投

ルーテル-熊本農から

連打が生まれたのは六回だけだった。競り合いに敗れ、「(試合へ向けて)準備させられなかった私の責任です」。ルーテルの園田松吾監督はうなだれる選手たちをかばった。

一回、中前打で出た選手が走塁ミスでタッチアウト。森崎一樹主将は「久しぶりの試合でガチガチになり、普段のプレーができなかった」。

エースの則次叡之が1カ月前に肩を痛めて戦線を離脱。それでも先発した和田季也が6回1失点と踏ん張っただけに、悔しい敗戦となった。

<開新 9-4 千原台(延長十回)>十回表に6得点、タイブレーク制す

開新  0020001006|9
千原台 0000000031|4
(延長十回タイブレーク)

▽三塁打 伊豆野、本田侑(開)▽二塁打 石井2、北(開)▽盗塁 開2▽暴投 千1▽失策 開2、千1

開新-千原台から

【評】開新は土壇場で追い付かれたが、延長タイブレークを制した。先発下堂は148球を投げて16奪三振で完投。攻撃では三回の3連打など、中軸が存在感を発揮した。千原台は打線が最後に粘りを見せたが、上回れなかった。

開新-千原台から

◆千原台、土壇場で3得点、延長戦持ち込む

八回まで無得点に抑えられていた千原台は、土壇場で3点を奪って延長戦に持ち込んだ。十回のタイブレークで突き放されたものの、米田裕哉主将は「うちは終盤に強いので追いつける自信があった。力は出し切れた」と胸を張った。

開新のエース下堂翔史から反撃の糸口をつかめずにいたが、0-3で迎えた九回は四球などで1死満塁と攻め立てた。ここで「誰よりもバットを振ってきた」と自負する米田主将の中前打で2点を返し、後続も続いた。

部員が見せた粘りに、宮川和之監督は「ミスもあったが、最後まで元気良く練習の成果を出してくれた」と目を細めた。

開新-千原台から

【7月18日】熊本市内地区2回戦

<必由館 2-0 鎮西>序盤の好機を生かす

必由館 110000000|2
鎮西  000000000|0

▽盗塁 必2▽失策 必1

【評】必由館は中1日で登板したエース中村が130キロ台中盤の速球を低めに集め、6安打で完封。攻撃は序盤の好機を生かし、外野の中田、水野の好守備も光った。鎮西は右腕の米村が踏ん張ったが、打線が援護できなかった。

必由館-鎮西から

◆鎮西「団結し、粘り強く戦えた」

[ひとこと]
◇鎮西・相馬天晟主将 先発の米村は球が切れていて、しっかり抑えてくれた。打撃でもう一歩のところを攻めきれなかったのが残念。
◇鎮西・江上寛恭監督 (スタメンは全員3年生)集大成にしてほしいと思い、オーダーを決めた。力は相手が上。団結して粘り強く戦えたのは、3年生たちの一生懸命な姿勢があったからこそ。

必由館-鎮西から

【7月18日】城北地区1回戦

<大津 21-2 鹿本商工・鹿本農・岱志(五回コールド)>16安打に8盗塁、守備も堅実

鹿本商工・鹿本農・岱志-大津から

鹿本商工・鹿本農・岱志 10100|2
大津          1389×|21
(五回コールド)

▽三塁打 濱部、橋本(大)▽二塁打 鎌倉、柏倉、川田2(大)▽盗塁 大8▽暴投 鹿4、大2▽失策 鹿3▽捕逸 鹿1

【評】大津が長打6本を含む16安打に盗塁8個と機動力を絡めた攻撃で圧勝した。守備陣は鎌倉、藤堂の継投を無失策でもり立てた。鹿本商工・鹿本農・岱志は三回に連打などで好機を得たものの、1得点にとどまり、勢いを失した。

鹿本商工・鹿本農・岱志-大津から

◆連合ナイン、失点しても諦めず

1、2年生だけの連合チームで臨んだ鹿本商工・鹿本農・岱志は、序盤の好機を逃したことが痛手となり、大差で大津に屈した。エースで主将の福田蓮(鹿本商工)は「自分が試合をつくれなかった。でも、失点しても諦めずに、すぐに食い下がって点を取り返すことができたのは良かった」とちょっぴり胸を張った。

鹿本商工・鹿本農・岱志-大津から

先の豪雨がたたり、3校そろって練習できたのは1回きり。全員が顔を合わせる時間が十分に取れないまま本番を迎え、「気持ちを合わせるのが難しかった」と福田主将。その影響がもろに表れたのが、3点を追う三回の攻撃だった。

無死一、二塁から米田蓮恩(同)の右前打で1点を返すまでは良かった。だが、後続が安打や内野ゴロを放った際、ベンチの指示が届かなかったのか、走者が立て続けに本塁に突っ込んで憤死。押せ押せムードは一気にしぼんだ。4番永田琉己哉(岱志)はつなぐ打撃を意識して2安打と意地を見せたが、「攻守に連係が足りなかった」と悔しがった。

先発9人のうち5人が1年生。上野大地監督は「限られた時間でそれぞれが準備し、自分たちなりの体力と精神力で頑張った。連係不足は仕方ない」と若いナインの健闘を温かくたたえた。

<菊池 15-0 高森(五回コールド)>菊池、足で揺さぶり大量得点

菊池-高森から

菊池 35016|15
高森 00000|0
(五回コールド)

▽三塁打 村上大(菊)▽二塁打 山田、本田、石本(菊)山下(高)▽盗塁 菊8▽暴投 高3▽失策 高5

菊池-高森から

【評】菊池は相手投手の乱調につけ込み、足で揺さぶってはミスを誘って得点につなげるそつのなさが光った。打線は12安打で15点を奪い、投手3人が完封リレー。高森は9三振、1安打と打線が力を出せず、5失策と守りも乱れた。

◆10人の高森充実 「盛り上がって野球できた」

10人で戦った高森の坂本晃彬(みつひで)主将は「悔いは残るけど、最後は盛り上がって野球ができたので、うれしかった」と充実した表情を見せた。

菊池-高森から

今春まで部員5人のところに1年生3人が加入。剣道部、バドミントン部から助っ人を借りて単独出場にこぎつけた。

序盤は菊池に味方投手の立ち上がりを攻められ、二回を終えて0-8。三、四回はバックが積極的に声を出して投手をもり立て、1失点で切り抜けた。だが、五回に「地力の違いを見せられた」と中矢悠斗監督。打者10人の猛攻を受けてコールド負けした。

<有明 13-1 玉名(五回コールド)>有明、立ち上がりから主導権

玉名-有明から

玉名 01000|1
有明 3127×|13
(五回コールド)

▽二塁打 野口3、青柳(有)▽盗塁 有2▽失策 玉4

【評】有明が四回までに13得点を奪い大勝した。初回は相手投手の立ち上がりを攻め、3点を先制。その後も主導権を握って加点した。玉名は二回に中島の適時打で1点を返した後は、得点圏に進塁できなかったのが痛かった。

◆2人だけの3年 主将「感謝の一打」

12点を追う五回裏、玉名の代打中村公洋が打ち返した打球は二塁手から一塁手に送られ、ゲームセット。中村と杉本叶夜主将の3年生2人の最後の夏が終わった。

1年生の夏以降、同級生が2人きりとなり、杉本主将は目標を見失いかけた。退部を考えたが、「ずっと自分を待っててくれた。あいつがいなかったら野球を続けていなかった」と振り返る。

四回、杉本主将は速球を中前にしぶとく運んだ。「スタメンを外れた中村の分まで打てて良かった」。大敗はしたが、感謝の一打を贈ることができ、晴れやかな表情だった。

玉名-有明から

<阿蘇中央 11-1 鹿本(五回コールド)>阿蘇中央、好機で着実に得点

阿蘇中央-鹿本から

阿蘇中央 01514|11
鹿本   00010|1
(五回コールド)

▽本塁打 平野(阿)▽三塁打 平野(阿)▽二塁打 岩村(阿)長瀬(鹿)▽盗塁 阿3▽失策 阿1、鹿5

【評】阿蘇中央打線が相手の制球難から好機を広げて大勝した。三回は2連続四球後に長短4連打で5得点。五回は死球に連打などを絡めて4点を加えた。鹿本は散発3安打と打撃が振るわず、反撃は四回の1点だけだった。

阿蘇中央-鹿本から

◆鹿本の主戦「みんなと続けられてよかった」

「新型コロナの影響で実戦感覚が不足していた」。鹿本の小山琉斗主将は無念の表情を浮かべた。自身はいずれも先頭の2打席で出塁(単打・四球)したが、先行する阿蘇中央への反撃は1点どまり。「踏ん張っていた投手をもっと助けたかった」と主戦の古家蒼太を援護できなかったことを悔やんだ。

その古家は最終学年で迎えた今大会で初めて背番号1を任された。「みんなのためにも相手を抑え込みたい」。南関中から1人だけの入部だったが、温かく話し掛けてくれた仲間へ感謝していたという。五回コールドで敗れはしたが、最後までマウンドを守り「みんなと続けられてよかった」と笑った。

<翔陽 14-0 菊池農(五回コールド)>翔陽、投打に隙なし

翔陽ー菊池農から

翔陽  12227|14
菊池農 00000|0
(五回コールド)

▽三塁打 蔵居(翔)▽二塁打 蔵居(翔)▽盗塁 翔9▽暴投 菊5▽失策 菊4

【評】翔陽が8安打で14点と効率よく攻めた。二~四回はいずれも適時打や犠飛などで2得点。五回は連続四球と連打などで7点を加えた。4回9奪三振の先発刀祢の好投も光った。菊池農は先頭を出せず、好機を広げられなかった。

翔陽ー菊池農から

◆菊池農、真っ向勝負のフルスイング

菊池農は翔陽投手陣に12三振を喫したが、力強くフルスイングする真っ向勝負の姿勢を最後まで失わなかった。

「新型コロナなどいろんなことがあった今季。選手は野球も満足にできなかった。だからこそ最後の大会を楽しんでほしかった」と尾崎史明監督。この日の指示は「ファーストストライクは思い切って振っていこう」だった。

徐々に点差が開く劣勢にあってもナインは前向きに戦った。二塁手の永田颯馬は「上下関係のないチーム。みんな仲良く元気にプレーできた」。それでも一塁手の後藤優はちょっぴり悔しそう。三振した初打席を振り返り「硬くなりすぎた」と反省した。

翔陽ー菊池農から

【7月18日】城南地区1回戦

<上天草 8-5 八代農>初回から主導権握り、逆転許さず

上天草-八代農から

上天草 410011010|8
八代農 200101010|5

▽三塁打 尾崎2、赤星(上)▽二塁打 須崎(上)田中(八)▽盗塁 上2、八1▽暴投 八1▽失策 上2、八5▽捕逸 上1、八1

上天草-八代農から。部員6人の八代農は、近隣の小川工から2年生4人(右側の青いユニホーム)を派遣してもらって試合に臨んだ

【評】上天草は初回に3番尾崎の三塁打など長短4安打と敵失に乗じて4得点し、主導権を握った。五回から継投した小坂はスローカーブを駆使して5三振を奪い、逆転を許さなかった。八代農は反撃機であと一本が出なかった。

上天草-八代農から

◆坂本町で被災、弟の声援背に懸命プレー

「お兄ちゃん、がんばれー」。県営八代野球場にひときわ元気な声が響き渡る。八代農のただ一人の1年生、山田快空(かいと)は先の豪雨で被災しながらも上天草との1回戦に8番左翼で先発フル出場。敗れたものの、9歳下の弟櫻真(おうま)君=八竜小1年=の声援を背に懸命にプレーした。

坂本中出身。4日の豪雨で八代市坂本町中谷の自宅は床上まで浸水した。8世帯が暮らす集落は道路が寸断され、孤立状態に。仏壇の前で「神様、雨を止めてください」と祈る櫻真君の手を握り、「大丈夫、大丈夫だから」と励ました。

5日午前、家族で九州自動車道の坂本パーキングに徒歩で向かっていたところを自衛隊のヘリコプターに救助された。「助かってホッとした」。ヘリを怖がり、しがみつく弟に優しく寄り添った。

道路復旧や自宅再建のめどは立たず、八代市総合体育館での避難生活が続く。弟を常に気に懸け、チームの全体練習に合流したのは2日前。それでも公式戦初出場となったこの日、先輩たちに交じっても物おじしなかった。

上天草-八代農から

二回表、左翼への大飛球を背走しながら好捕した。四球で出塁した四回裏は二塁から気迫のヘッドスライディングで生還。八回に左前打を放つと、ベンチがこの日一番の盛り上がりをみせた。

前日から気持ちが高ぶって2時間しか眠れず、試合中に鼻血が出るアクシデントに見舞われながらも「楽しかった」。そんな頼もしい姿に「野球をしているお兄ちゃんは格好いい」と櫻真君は誇らしげだ。山田は「弟の声はしっかり聞こえた。恥ずかしかったけど、力になった」とはにかんだ。

<八代清流 11-2 牛深(七回コールド)>創部9年目で夏初勝利

八代清流-牛深から

八代清流 2101430|11
牛深   0020000|2
(七回コールド)

▽三塁打 水本、柳田(八)▽二塁打 福本(牛)▽盗塁 八2▽暴投 八1、牛3▽失策 八2、牛5▽捕逸 牛1

【評】八代清流は創部9年目で夏の初勝利。相手のミスで出た走者を長打でかえし、小技も駆使して効率良く11得点した。先発の橋爪大は変化球の制球に苦しみながらも5回2失点で試合をつくった。牛深は失策や暴投などが相次ぎ、流れを手放した。

八代清流-牛深から

◆牛深、13人で総力戦、主将は2点適時打

牛深は13人と少数ながら、各選手が複数の守備位置をこなす総力戦で八代清流に挑んだ。しかしミスで流れを手放し、七回コールド負け。福本基心主将は「序盤は相手もミスが多く、どっちに流れが傾くか分からなかっただけに残念」と声を落とした。

0-3の三回裏、1死一、二塁で福本主将が「決め球のストレートを狙っていた」と左中間を破る2点適時二塁打を放ち詰め寄った。しかし五回表に2、3番手投手が3四死球、2暴投と乱れて4点を失った。

遊撃手と三塁手、そして最終回は投手として1回を無失点に抑えた主将は、「1、2年生は7人しかいない。何とか部員を集め、勝利を挙げてほしい」と思いを託した。

<八代東 8-5 天草工>楠原の満塁弾で引き離す

八代東-天草工から

八代東 010040021|8
天草工 000000140|5

▽本塁打 楠原(八)▽二塁打 前田2、山本(八)▽盗塁 八3▽暴投 八4▽失策 八1、天1

八代東-天草工から

【評】八代東が終始先行し、天草工の追撃を振り切った。二回に連続2塁打で先制すると、五回に楠原の満塁弾で引き離した。終盤に続いたバッテリーエラーは反省点。天草工は連打でつくった中盤の好機を生かせなかった。

八代東-天草工から

◆天草工、ベンチ一丸で終盤追撃

1-7で迎えた八回裏、天草工はベンチ一丸となった応援で相手投手にプレッシャーを掛け、3連続暴投などで一気に4点を返した。

八代東-天草工から

スタメンに牛深中出身の5人が名を連ね、チームワークは抜群。その1人の藤本翔大(3年)は「力でぶつかっても八代東には勝てない。天工らしい声掛けの内容にこだわった応援ができた」と涙目ながらも惜敗に胸を張った。

ムードメーカーの門口丈太朗も牛深中出身の2年生。「昨年も1回戦負けだったので、先輩たちを勝たせたかった。来年は勝利で恩返しする」と誓った。

【7月19日】熊本市内地区2回戦

<熊本工 11-8 国府>盗塁やバント絡め、着実に加点

国府-熊本工から

国府  000002303|8
熊本工 00502301×|11

▽三塁打 吉田颯(国)▽二塁打 岸、橋本(国)小野、森、東、江川(熊)▽盗塁 熊4▽暴投 国1▽失策 国3、熊1

【評】熊本工が第1シードの国府に打ち勝った。4本の二塁打に盗塁やバントを絡め、着実に加点した。中でも4番森は3安打3打点の大暴れ。国府は六回以降に猛烈な追い上げを見せたが、失策絡みの失点が響いた。

◆昨秋王者の国府、終盤に猛攻撃

国府-熊本工から

昨秋の熊本大会優勝の国府は、昨夏の全国選手権大会に出場した熊本工との力相撲に屈した。終盤に持ち味の粘り腰を見せたが、2桁失点は重かった。「前半のチャンスで打てず、エラーも出た」。攻守で精彩を欠いた中盤までを西森聖優(しゆう)主将は悔いた。

二~五回まで毎回走者を出しながら得点できずにいると、熊本工の重量打線につかまった。三回は甲子園で活躍した4番森翔太郎らに適時打を浴びて5点を献上。五、六回も失点して2-10とされ、コールド負けもちらついた。

そのピンチでも昨秋の全6試合のうち5試合で逆転勝ちした強さは健在だった。「絶対に追いつけるぞ」。ベンチの闘志は消沈しなかった。

国府-熊本工から

七回に3安打と四球でしぶとく3点。最終回は5本の単打を集めて3点差まで追い上げ、なおも2死満塁と攻め立てた。ここで打席に立ったのは西森主将。「何としてもランナーをかえす」。その気合が空回りし、一ゴロに打ち取られた。

新型コロナウイルスの影響で夏の甲子園と地方大会の中止が5月に発表された。その後に開催が決まった今大会を「プレゼント」と感謝し、齋藤健二郎監督は3年生のみで臨む方針を決定。実力からすればエースを含め主力の半数は2年生だが、最上級生たちは「チームワークでは負けない」と全力で準備した。

終盤の猛追撃-。最後まで勝負を諦めない気概を見せたが、西森主将は「逆転での試合よりも、(後輩たちには)先制する試合をしてほしい」。甲子園初出場という夢を1、2年生に託した。

<学園大付 13-4 東稜(七回コールド)>相手先発を攻略、序盤で10得点

東稜-学園大付から

東稜   1000300|4
学園大付 631030×|13
(七回コールド)

▽本塁打 原田(学)▽二塁打 池田(東)久保、藤本、立山(学)▽盗塁 東3、学6▽暴投 東1▽失策 学1

【評】学園大付が制球に苦しむ東稜先発を攻略した。初回は長短4安打に3連続四球を絡めて6点。二回も連続四球の走者を置いて原田の本塁打で3点を追加した。東稜は初回、1点を先制した後の無死満塁の好機を生かしきれなかった。

東稜-学園大付から

◆東稜主将「狙い通りの展開だったが…」

東稜-学園大付から

[ひとこと]
◇東稜・池田涼主将 先攻を取ったら先制点を奪って勝利につなげようと話していた。狙い通りの展開だったが…。守りでもり立てられず、先発の上野に申し訳ない。
◇東稜・近藤博文監督 初回は期待通りに先頭が出塁し、先制につなげたが、もう少し点を取りたかった。先発の上野はもっと力のある投手。練習試合解禁後から頑張って投げてくれた。疲労が残っていた。

<九州学院 4-3 熊本(延長十回)>終盤に底力、延長制す

熊本-九州学院から

熊本   1000110000 |3
九州学院 0001002001x|4
(延長十回タイブレーク)

▽三塁打 永井(熊)▽二塁打 堤(熊)▽暴投 熊3▽失策 熊2

【評】終盤に底力を見せた九州学院が延長タイブレークを制した。熊本の小刻みな継投策に的を絞れずにいたが、七回の2~4番の3連打は見事だった。熊本は追い付かれた後の好機を生かせなかったことが悔やまれる。

◆熊本、強豪追い詰め表情晴れやか

熊本-九州学院から

延長十回、タイブレークの末に力尽きた熊本だったが、浜田恭輔主将の表情は晴れやかだった。強豪の九州学院をあと一歩まで追い詰め、「最後の試合で素晴らしい相手と延長まで戦えた。本当に楽しかった」と激闘の余韻に浸った。

初回に先手を取ると、六回終えて3-1とリードし、「『勝てるかも』と心に隙ができた」と浜田主将。七回に3連打を浴びて追い付かれた。

熊本-九州学院から

6月の部活再開後も課外授業などのため、限られた練習時間で打撃に力を入れてきた。この試合で相手を上回る12安打を放ち、「成果をしっかり出してくれた」と津田幸亮監督は選手たちをたたえた。

<熊本商 2-0 第一>主戦西村が10奪三振、接戦制す

第一-熊本商から

第一  000000000|0
熊本商 01000100×|2

▽三塁打 新生(熊)▽二塁打 坂口、坂本(第)▽盗塁 第1、熊3▽暴投 第1▽失策 第1

【評】熊本商の主戦西村が被安打4、10奪三振で完封し、接戦勝利を呼び込んだ。特に変化球の制球がさえた。打線は5安打ながら、盗塁と敵失で得た好機を生かした。第一はスクイズ失敗や相手の好返球で本塁を踏めなかった。

第一-熊本商から

◆第一、目指したチームが最後に完成

「初回から力み、打たせて取る投球ができなかった」。エースとして8回を投げ抜いた第一の坂本侑太朗主将は無念の表情を浮かべた。

昨秋の県大会2回戦の千原台戦で両チーム合わせて25安打の乱打戦に敗れた。主将として投手陣の立て直しを痛感し、内野手から投手へのコンバートを志願した。新垣慶史監督は「その責任感の強さで、ここまでチームを引っ張ってきた」という。

第一-熊本商から

この日は、大黒柱をもり立てるようにバックも堅守で応えた。捕手の坂口昂平が盗塁を封じ、中堅の坂川晃一が難飛球を背走で捕った。「一緒に頑張ってきた仲間が支えてくれた」と坂本主将。敗れはしたが、目指したチームが最後に完成した。

【7月19日】城北地区2回戦

<阿蘇中央 2-0 専大玉名>杉谷が3安打完封、投手戦制す

阿蘇中央-専大玉名から

阿蘇中央 000001010|2
専大玉名 000000000|0

▽二塁打 平野(阿)▽盗塁 専2▽暴投 阿1▽失策 阿1、専1

【評】阿蘇中央がエースの力投で息詰まる投手戦を制した。杉谷は低めを丁寧に突き散発3安打で完封。打線は六回に1点を先制すると、八回に貴重な1点を加えた。専大玉名は5度得点圏まで走者を進めたが、あと一本が出なかった。

阿蘇中央-専大玉名から

監督「3年生誇りに思う」 昨秋4強の専大玉名

昨年秋の県大会で4強入りし、城北地区大会にシード校として臨んだ専大玉名だったが、息詰まる投手戦の末、初戦で姿を消した。

この日、相良光紘監督はエースナンバーの青柳光輝でなく、控えの猿渡カンナをマウンドに送った。「相手打線との相性もあったが、こつこつと積み重ねてきた努力を信じた」。背番号11は指揮官の起用に応え、得意のスライダーで五回を終えて相手に三塁を踏ませなかった。

グラウンド整備による休憩を挟んで迎えた六回。先頭打者から8個目の三振を奪った後、初めて連打を許す。「気持ちを集中すべきところで、それができず、ランナーをためてしまった」と猿渡。2死二、三塁で適時打を許して1点を先制され、七回から青柳に後を託した。

阿蘇中央-専大玉名から

前日に1回戦を突破した阿蘇中央に対し、専大玉名は昨秋以来の公式戦で、「体が慣れておらず、足も動かなくてきつかった」と古城智也主将。尻上がりに調子を上げる相手エースの杉谷寿冴を最後まで捉えきれなかった。

結局、0-2の完封負け。相良監督は「やるべきことをやって負けた。杉谷君がすごかった。これに尽きる」と振り返りつつ、「ここまで気持ちを一つにして戦ってきた3年生を誇りに思う」と教え子たちをいたわった。

<翔陽 8-7 玉名工>終盤の反撃しのぎ切る

翔陽-玉名工から

翔陽  100130102|8
玉名工 101000023|7

▽二塁打 蔵居(翔)清田和2、米村(玉)▽盗塁 翔4、玉1▽暴投 玉1▽失策 翔1、玉5

【評】中盤以降、主導権を握り続けた翔陽が終盤の玉名工の反撃をしのぎ切った。相手のミスを得点につなげるなどそつのなさも光った。刀祢は7点を失ったが粘り強く完投。玉名工は九回に1点差まで追い上げたが力尽きた。

翔陽-玉名工から

◆負傷で途中降板も打線けん引

玉名工は九回裏に猛追し、3得点。だが、あと1点届かなかった。「仲間の励ましに応えたかったのに…」。負傷で無念の途中降板となった先発清田和樹は泣きじゃくった。

公式戦初登板とは思えない堂々とした投球で4回2失点と試合をつくった。だが、四回終了時に両脚がつったためマウンドを降りた。それでも一塁手に回ってフル出場し、4安打4打点と打線をけん引。最終回には1点差に迫る2点タイムリーを放った。

今大会は3年生20人だけで出場した。21人の同級生で唯一ベンチを外れた仲間を気遣い、「あいつのためにも勝ちたかった」。そうつぶやくと、また涙があふれた。

翔陽-玉名工から

<城北 15-0 大津(五回コールド)>効率よく毎回得点

城北-大津から

城北 07314|15
大津 00000|0
(五回コールド)

▽二塁打 佐々、丸山、菊川(城)橋本(大)▽盗塁 城4▽暴投 大5▽失策 城1、大2▽捕逸 大1

城北-大津から

【評】城北が12安打で効率よく得点を重ね大勝した。二回は3四球や相手守備の乱れに4連打を絡め一挙7点を先制。三回以降も攻撃の手を緩めず毎回得点した。大津は投手陣が11四死球を与えるなど流れをつくれず、打線も4安打に封じられた。

城北-大津から

◆「アグレッシブな野球貫けた」

4人の3年生がチームを引っ張った大津は、大差がついても最後まで元気な声を出し続けた。濱部宏太主将はコールド負けにも「打線は初球から積極的に振っていったし、投手陣も粘り強く投げた。自分たちの目指すアグレッシブな野球を貫けた」とすっきりとした表情を浮かべた。

「絶対1点取ろう」。無得点で迎えた五回裏、濱部主将のげきでベンチは一段と活気づいた。2死から代打の黒木帝仁が敵失で出塁し、橋本亮大が左翼線二塁打で続くとこの日一番の盛り上がり。しかし、エースの鎌倉一樹が二ゴロに倒れ、最後までホームベースは遠かった。

城北-大津から

鎌倉は「同級生と後輩に恵まれて楽しく部活をできた。悔しいけど最後は笑顔で終わると決めた」と涙を拭い、チームメートに感謝の言葉を掛けて回った。

<有明 10-1 菊池(七回コールド)>2度の集中攻撃で快勝

有明-菊池から

有明 0035002|10
菊池 0001000|1
(七回コールド)

▽本塁打 永井(有)▽二塁打 青柳、永井、野口(有)渡邊(菊)▽盗塁 有2、菊1▽暴投 菊6

有明-菊池から

【評】有明が2度の集中攻撃で快勝した。三回は単打に犠打や犠飛を絡めて3点を先制。四回は二塁打2本を放つなど打者12人で5点を奪った。好機に畳み掛ける力強さが光った。菊池は自力を出しきれず、攻守ともミスが出た。

◆二枚看板、「もっと投げたかった」

菊池は二枚看板が打ち込まれ、まさかの大敗。先発して4失点、四回途中でマウンドを降りたエースの岩下弘樹は「コースを突いたけどうまく打たれた」と唇をかんだ。

救援した松本陽葵は140キロ台の直球で押したものの、制球に苦しみ七回途中まで6失点。「俺がフォローするという気持ちだったのに悔しい」と表情を崩した。

入学時から互いを意識しながら練習に励んだ。1年の頃に腕立て伏せが5回しかできなかった岩下は「あいつがいたから成長できた」。新チームになってサイドスローに転向して安定感が増し、今夏初めて「1番」を背負った。昨秋のエースだった松本も「負けないように頑張った」と冬場に速球の切れを磨いた。

力を合わせて頂点に行くという目標はかなわなかった。「最後の夏に、もっと投げたかった」。2人の言葉に悔しさがにじんだ。

有明-菊池から

【7月19日】城南地区1回戦

<宇土 10-3 水俣(七回コールド)>七回に集中打で7得点

宇土-水俣から

宇土 1020007|10
水俣 0001011|3
(七回コールド)

▽本塁打 太田(宇)▽二塁打 荒木、太田2、高見(宇)山田(水)▽盗塁 宇3、水5▽暴投 宇2、水2▽失策 宇3、水3

宇土-水俣から

【評】宇土は初回に太田の先頭打者本塁打で先制。3-2で迎えた七回には敵失を挟み6安打を集め、一挙7点を奪った。水俣はエース小島が力投。六回までは競り合ったが、走塁や守備のミスが響いてリズムに乗れなかった。

◆水俣のエース小島、136球の力投

宇土-水俣から

水俣は先発の小島大空が六回まで3失点と踏ん張ったが、七回につかまってコールド負け。野仲良監督は「手ごわい宇土打線を相手に良く投げてくれた」と大黒柱の力投をたたえた。

小島は昨夏も背番号1を背負った。しかし、初戦の八代戦は降雨ノーゲームとなり、その試合で背中を肉離れ。再試合には登板できず、チームは延長戦で競り負けた。

「先輩たちの夏を自分が終わらせてしまった」。エースの責任を果たせなかった悔しさを胸に、新チームに移行後は走り込みや筋トレで体力を強化。最高球速は135キロと、1年間で10キロアップに成功した。

雪辱を期した最後の夏-。序盤は制球に苦しみ相手打線に攻略されたが、尻上がりに調子を上げた。走者を毎回背負いながらも、威力のある直球を武器に再三のピンチを切り抜けた。

不運だったのは2-3で迎えた七回表1死満塁の守り。相手打者をゴロに打ち取ったが、内野手の悪送球で2点を失った。その後は足をつるアクシデントもあり、この回だけで7失点。136球を投げ抜いた右腕は「相手打者を抑えられなかった。自分の力不足」と仲間をかばった。

バッテリーを組んだ瀬田忍主将は目を真っ赤にはらし、「小島は県上位の投手を目指して常に努力してきた。負けたのは捕手の責任。今日の投球には自信を持ってほしい」とねぎらった。

【7月19日】城南地区2回戦

<秀岳館 9-2 甲佐(八回コールド)>三回、連続タイムリーで勝ち越し

甲佐-秀岳館から

甲佐  00200000 |2
秀岳館 01420002x|9
(八回コールド)

▽三塁打 江崎(秀)▽二塁打 幸野(秀)▽盗塁 甲1、秀2▽暴投 甲2、秀1▽失策 甲2、秀2

甲佐-秀岳館から

【評】秀岳館は1-2の三回に4番永田の安打で同点とし、幸野、林の連続適時打で勝ち越しに成功。その後も好機を生かし、リードを広げた。甲佐は序盤に6安打と打力を発揮したが、四回以降は相手投手を攻略できなかった。

◆甲佐主将「練習した形を出せた」

[ひとこと]
◇甲佐・楠本勇真主将 3年生7人全員で大会に出場できたのは初めて。うれしかった。(一時は勝ち越し点となる)スクイズの成功など自分たちが練習した形を出せて良かった。
◇甲佐・飯田尊選手(遊撃で先発し、2番手で登板)昨年の5月から11月まで病気で運動ができなかった。打たれてはしまったが、久しぶりに公式戦に出場できて楽しかった。0点に抑えられた回もあり、自分の投球はできた。

甲佐-秀岳館から

<八代工 9-1 八代(七回コールド)>初回に打者一巡の猛攻

八代工-八代

八代工 5101011|9
八代  0010000|1
(七回コールド)

▽三塁打 木村慎(工)▽二塁打 木村慎(工)尾崎翔(八)▽盗塁 工4、八5▽暴投 八1▽失策 工2

八代工-八代から

【評】八代工は初回に5番片山の適時打など打者一巡の猛攻で5点を奪い、主導権を握った。先発した木村慎は7回を6安打1失点に抑える好投。八代は三回に南畝の適時打で1点こそ返したが、再三の得点機であと一本が遠かった。

八代工-八代から

◆被災した2年生投手 「努力して成長」誓う

昨夏8強の八代は序盤の失点が重く、七回コールド負け。清崎剛監督は「試験休みなどで十分な練習ができなかった。投手陣は苦しい投球になったが、やむを得ない」とかばった。

先発した2年の蔀(しとみ)秀彦は4日の豪雨で芦北町の自宅が床上浸水の被害を受け、1週間ほど前に家族と八代市内のアパートへ引っ越した。「八高の保護者の方々にも手伝ってもらった。恩返ししなければ」と気合を入れて登板したが、制球が定まらず1回5失点と不本意な結果となった。

最速130キロと球威が持ち味の右腕は「直前の練習不足などは言い訳にならない。もっと努力して成長する」と誓った

【7月23日】熊本市内地区2回戦

<文徳 5-4 熊本西>文徳しぶとく、接戦制す

文徳-熊本西から

文徳  201000110|5
熊本西 010200001|4

▽二塁打 山口(文)江崎(熊)▽盗塁 文3、熊1▽暴投 文1▽野選 熊1▽失策 熊1▽捕逸 文2

【評】文徳がしぶとく接戦を制した。3-3で迎えた七回は毎床のスクイズで勝ち越し点を奪い、八回は2死から山下の適時打で1点を加えた。熊本西は九回に1点差に迫ったが、七、八回の得点機を逃すなど、15残塁が響いた。

文徳-熊本西から

◆最後の打席で結果「野球人生報われた」

熊本西は最終回に1点差に詰め寄ったが、あと一歩届かなかった。岡田仁主将は「全員で最後まで頑張れた。悔いはない」と胸を張った。

試合は初回に2点を先制されるなど、常に追い掛ける展開。それでも継投した中山裕人、渡邉純が踏ん張り、接戦に持ち込んだ。

3-5で迎えた最終回は、先頭の岡田主将が四球で出塁し、2死三塁から代打高島宗志が左前へ適時打。ベンチの期待に応えた高島は「最後の打席で結果が出て、今までの野球人生が報われた」と納得の表情だった。

文徳-熊本西から

<熊本北 1-0 熊本農>左腕浜野、被安打3で完封

熊本北-熊本農から

熊本北 000000010|1
熊本農 000000000|0

▽二塁打 藤田(北)▽盗塁 北1▽失策 農1▽捕逸 農1

【評】熊本北の左腕浜野はコースへ投げ分ける制球力が光り、無四死球で完封勝ち。打線は0-0の八回、井上光がスクイズを巧みに決め、決勝点を奪った。熊本農は打線が3安打に抑えられ、1失点で踏ん張った投手陣を援護できなかった。

熊本北-熊本農から

◆熊本農の2投手好投「やりきった」

熊本農は吉田壮顕、堀尾拓矢の両右腕の好投が実らず、0-1で競り負けた。唯一の失点は八回1死三塁の場面。2番手の堀尾はスクイズを警戒して外寄りにボールを外したものの、相手打者に片手一本でバントを決められてしまった。

四回から登板した背番号1の堀尾は「みんなに迷惑を掛けた」と悔しがったが、田中秀典監督は「投手陣2人は文句なしの結果。スクイズの場面は相手打者が見事だった」と責めなかった。

先発して3回無失点だった遊撃手兼任の吉田は「堀尾もいい投球をしてくれた。負けたけど、やりきった思い」と晴れやかな表情だった。

熊本北-熊本農から

<開新3-0東海大星翔>エース下堂、要所締め完封

開新-東海大星翔から

東海大星翔 000000000|0
開新    00120000×|3

▽二塁打 万江、深田(東)石井、伊豆野(開)▽暴投 東1、開2▽失策 東1、開1

【評】開新はエース右腕の下堂が被安打8で完封勝ち。再三走者を背負いながらも、130キロ台後半の速球にチェンジアップなどを織り交ぜて要所を締めた。東海大星翔は主戦木原が力投したが、守備が乱れて失点し、リズムに乗れなかった。

開新-東海大星翔から

◆泥だらけで奮闘、3年生全員で戦う姿勢

ベンチ入りの20人を3年生だけで臨んだ東海大星翔の夏が終わった。開新の好投手、下堂翔史を相手に8安打を放つ意地を見せたが、あと一本が出ずホームが遠かった。

0-3で迎えた最終回は先頭の深田拓琉主将が右前安打で出塁。二死二塁と何とか好機を広げ打席に向かったのはエースの木原仁千嘉だった。

1年の夏に出場した甲子園で野手として先発した4番打者は「自分が後ろにつなげれば、逆転してくれる」。フルカウントから3球連続ファウルで粘ると、遊撃に強い当たりを放ち一塁へヘッドスライディング。気迫で内野安打をもぎとり、望みをつないだ。

開新-東海大星翔から

しかし、後続が打ち取られ、結果は無得点。野仲義高監督は「全員で戦う姿勢は見せてくれた」と泥だらけになって奮闘したナインをねぎらった。

8回111球を投げ抜いた木原は「3人で終われなかった回が多く、リズムを作れなかった」と自らの投球を悔やんだが、最後はすっきりとした表情を見せた。「3年生のみんなと試合をできて良かった。後輩には甲子園という目標を目指して頑張ってほしい」

【7月23日】城南地区1回戦

<人吉 9-3 御船・矢部>連打で得点重ね快勝

御船・矢部-人吉から

御船・矢部 003000000|3
人吉    02200230×|9

▽三塁打 原口(人)▽二塁打 角田(御・矢)森下(人)▽盗塁 人4▽暴投 御・矢2、人1▽失策 御・矢4

【評】人吉が連打で得点を重ねて快勝した。4盗塁と走塁でも積極性を発揮。3投手をつないで的を絞らせず、四回以降は3安打無失点に抑えた。御船・矢部は三回に長短打と連続四球を挟み3点を挙げたが、失策絡みの失点が痛かった。

◆人吉、困難を乗り越えて白星つかむ

地元が熊本豪雨で大きな被害を受けた人吉が初戦を突破した。「笑顔や元気を届けられたならうれしい」。困難を乗り越えて白星をつかみ、豊田大輝主将は胸を張った。

部員48人のうち、7~8人の家が浸水するなどしたという。授業や部活が再開したのは14日で、十分な準備ができないまま迎えた初戦。緊張する選手を前に、原口琢磨監督は「思いっきりプレーして試合を楽しもう」と送り出した。

2-3で迎えた三回、4番尾崎龍馬らの3連打で2点を挙げ逆転に成功した。尾崎の自宅は球磨村渡地区にあり2階天井まで浸水。水が引いて避難先から戻ると変わり果てた姿に言葉を失った。しかし、自室から泥だらけのバットやスパイクを見つけ「これでまた野球ができる」。希望は失わなかった。

御船・矢部-人吉から

現在は人吉市内の避難所に一家で身を寄せる。「感覚はまだまだ戻っていないけど、こんな状況で試合をさせてもらえてうれしい」。チームは11安打を放って9点を挙げ、守っては無失策。指揮官は「やるべきことをしっかりやってくれた」と目を細めた。

ただ、勝利の余韻に浸ったのは一瞬だけだった。24日に予定される2回戦を見据え、豊田主将は「これに満足せず、次も勝つ」と表情を引き締めた。

◆連合チームの左利き2塁手、「人生初併殺」

御船・矢部の二塁手・山隈凌は敗れはしたものの、「目標としていた公式戦で“人生初ゲッツー”が取れ、いい思い出になった」と笑みを浮かべた

御船・矢部-人吉から

一塁を除く内野手には不向きな左利き。これまで投手や一塁手を務めてきたが、肩を痛めたことに加え、連合チームによる他選手とのポジションの兼ね合いから、試合の3週間ほど前にコンバートされた。御船のチームメートでコンビを組んだ遊撃手の奥村秀哉主将は「自分の守備範囲を広くしてフォローしたけど、山隈も慣れないポジションで、ばりばり頑張って練習していた」。

2人で磨いた連係は一回裏1死一、二塁の場面で生きた。二ゴロを山隈がさばき、4-6-3の併殺を完成。山下慎吾監督も「一生懸命やってきた成果を発揮してくれた」と、目を細めていた

【7月23日】城南地区2回戦

<八代東 8-0 芦北(七回コールド)>投打で圧倒、3点本塁打も

八代東 4030010|8
芦北  0000000|0
(七回コールド)

▽本塁打 水谷(八)▽二塁打 山本、福山、水谷(八)▽盗塁 八3▽暴投 芦1▽失策 芦1▽捕逸 芦1

【評】八代東が投打で圧倒した。初回はバッテリーエラーに3安打を絡めて4得点。三回は7番水谷が3点本塁打を放ち大勢を決めた。先発松永は、5回を投げて無安打9奪三振と好投した。芦北は打線が3安打に抑えられた。

◆芦北、被災に負けず「常笑」貫く

八代東-芦北から

結果だけ見れば、無得点の七回コールド負け。それでも芦北の橋本魁翔主将は「多くの人が協力してくれたおかげで試合ができた。感謝してもしきれない」。晴れやかな表情で汗を拭った。

同校は県内を襲った3日深夜からの豪雨で校舎などが浸水。野球部の部室も無事ではなかった。コロナ禍で甲子園へ続く道を失った。代替大会開催決定を受けて、ようやく立ち上がり掛けたところへ、追い打ちを掛けるような試練。「正直、心が折れかけた」と橋本主将。だが、部室の高い棚に保管していた部員たちのスパイクやグラブなどは使える状態で残っており「やれるんじゃないかと思い直した」という。

窮状を知った県内外の野球部などから、ボールやバットなどの用具が届いた。埼玉の甲子園常連校、花咲徳栄OBという人から、甲子園の土も送られてきた。
18、19日には水俣高のグラウンドを借りて、練習を再開。自分たちのグラウンドも、業者のボランティアが整備し、20日から内野だけは使えるようになった。

八代東-芦北から

広がった支援の輪に対し、橋本主将は「自分たちのスローガンは『常笑軍団』。笑顔で戦って感謝の気持ちを伝えよう」。ベンチも、終始明るさを失わず声を出し続けて戦い抜いた。2番手で登板した中渡開夢は「もっといろいろな準備をしたかった思いはある。でも、自分たちにできる精いっぱいのことはやったという自負もある」と、少しだけ誇らしげだった。

<八代清流 7-0 天草(七回コールド)>得点機、確実に生かす

天草-八代清流から

天草   0000000|0
八代清流 013300×|7
(七回コールド)

▽二塁打 和田(八)▽盗塁 天1、八6▽暴投 天1▽野選 天1▽失策 八2

【評】八代清流が得点機を確実に生かし、試合を優位に進めた。四回は3連打に盗塁を絡めて迫力ある攻撃を展開。1年生を含む4投手が無失点リレーした。天草は四回を除いて毎回走者を出したが、ホームが遠かった。

天草-八代清流から

◆天草「最後まで諦めず、楽しい野球ができた」

[ひとこと]
◇天草・金子壮太主将 ミスで崩れてしまって悔しい。でも最後まで諦めず声を出し、楽しい野球ができた。下級生は僕たちより上手なので、来年こそ初戦を突破してほしい。
◇天草・坂本祐輔監督 好機であと一本が出なかった。初戦ということで緊張していて動きが硬かった。2、3年生は6人しかいなかった

天草-八代清流から

【7月25日】城北地区準決勝

<有明 5-1 阿蘇中央>勝負強く適時打、先発も好投

阿蘇中央-有明から

阿蘇中央 010000000|1
有明   01110200×|5

▽二塁打 永井、江田(有)▽盗塁 有2▽失策 阿3

【評】有明が序盤から好機を確実に生かした。1点を追う二回は江田の犠飛で同点。三、四回は永井、牛嶋が勝負強く適時打を放った。投げては先発中村が8回1失点と好投。阿蘇中央は打線が振るわず、3安打に終わった。

阿蘇中央-有明から

◆阿蘇中央、チーム一丸で夏2勝

部員15人の阿蘇中央は、昨夏ベスト4の有明に城北地区決勝への道を阻まれた。8回を投げ抜いたエースの杉谷寿冴(しゅうご)主将は「四球やエラー絡みで点を取られた。もっとできたはずだったが…」。降雨で2度、計4時間半の中断を挟んだ長丁場を終え、表情に疲れと悔しさがにじんだ。

阿蘇中央-有明から

シード校の専大玉名との2回戦は、杉谷が130キロを超える速球と変化球を武器に被安打3で完封勝ち。この日も二回表に6番荒井悠斗の右前適時打で1点を先制し、強豪を相手に幸先よい滑り出しだった。

しかし、直後の守りで杉谷が制球を乱し、1死二、三塁から犠飛で同点とされる。三回以降も失策や四死球などで出塁を許し、小刻みに追加点を奪われた。

10人でスタートした現チームは、昨秋だけで33戦の対外試合を重ねた。「少人数でも、しっかり実戦経験を積ませてきた」と山田光春監督。この日も序盤は内野陣が軽快な守備を見せ、エースをもり立てていた。

阿蘇中央-有明から

チーム一丸でつかんだ夏の2勝は確かな実力の証しだ。杉谷は「このメンバーだからこそ、ここまで勝てた。周囲の支えにも感謝したい」と胸を張った。

<城北 1-0 翔陽>勝負強さ発揮、投手戦制す

翔陽-城北から

翔陽 000000000 |0
城北 000000001x|1

▽二塁打 緒方(翔)▽盗塁 翔1、城2▽暴投 翔1、城1▽失策 翔2

【評】城北が勝負強さを発揮して投手戦を制した。0-0の九回裏に四球と盗塁、犠打で1死三塁とし、暴投でサヨナラ勝ち。守備では五回に見事な中継プレーで失点をを防いだ。翔陽は好投したエース刀祢を打線が援護できなかった。

翔陽-城北から

◆翔陽のエース、昨秋九州8強に好投 

翔陽は昨秋の九州大会8強の城北を相手に息詰まる投手戦を演じた。だが、最終回に力尽きた。

0-0の九回裏、先頭打者への四球をきっかけに一死三塁のピンチを招いた。エース刀祢健心が投じた113球目。スクイズの構えを見て手元が狂い、打者の頭上を大きく越えた。

「点を取ってくれるまで抑えようとして少し力が入った」。三走の生還を許し、サヨナラ負けの責任を背負い込んだ左腕の目から大粒の涙がこぼれ落ちた。

翔陽-城北から

城北には昨秋の県大会2回戦で敗れた。「強力打線を抑えるには球種が足りない」と冬場にチェンジアップを習得。菊池農との今大会初戦は4回で9三振を奪い、自信を深めて雪辱のマウンドに上った。

初戦で12安打の城北打線を相手にコースぎりぎりを突く真骨頂の投球を披露。120キロ台前半の直球を見せ球に多彩な変化球を駆使し、八回を終え散発3安打に封じた。捕手の蔵居昇弥も「完璧だった」と称賛した。

打線の援護には恵まれなかったが、進化したエースはきっぱりと言い切った。「ピンチでもバックが笑顔で盛り上げてくれた。このチームで2試合勝てて最高でした」

翔陽-城北から

【7月25日】城南地区2回戦

<人吉 10-3 松橋・湧心館(七回コールド)>勝負どころで適時打

松橋・湧心館 0000102 |3
人吉     4001401x|10
(七回コールド)

▽三塁打 毎床(人)▽二塁打 仲田2(松)森下(人)▽盗塁 松1、人2▽暴投 松3▽失策 松3、人1

【評】人吉は8安打10得点。勝負どころで適時打を重ね快勝した。初回は2死一、二塁から長短3連打で4点を先制。五回は森下の右越え二塁打などで4点を加えた。松橋・湧心館は毎回走者を出したものの3併殺を喫するなど、流れをつくれなかった。

◆松橋・湧心館 相手上回る9安打

松橋・湧心館-人吉から

相手を上回る9安打を放ちながら、人吉にコールド負けを喫した松橋・湧心館。それでも七回に2点を返すなど食い下がり、相馬研志監督は「最後まで辛抱強く戦ってくれた」と選手たちをねぎらった。

初回から4点を失い、攻撃では走者を出しながらも畳み掛けられない展開。1-9で迎えた七回は、「コールド負けはしないよう、1点ずつ返そう」と仲田文或主将がナインに声をかけた。先頭から2連打と四球で無死満塁のチャンスをつくると、3番分造健太がしぶとく右前に運んだ。分造は「みんなの応援が力になって、気持ちで打てた」と喜んだ。

松橋・湧心館は昨秋から連合チームを組んでいるが、新型コロナウイルスの影響で練習を再開できたのは6月。集まる機会はわずか2回の練習試合のみだったが、LINEなどで連絡を取り合うなどして団結を深めた。

七回裏に1点を奪われて万事休したが、仲田主将は「楽しんで野球ができた。このメンバーで集まれないと思うと寂しい」と充実した表情だった。

松橋・湧心館-人吉から

<球磨工 12-5 上天草(八回コールド)>序盤の大量点で主導権

上天草 00020030 |5
球磨工 34300011x|12
(八回コールド)

▽三塁打 中村(球)▽二塁打 守口、渕田(上)中村、那須(球)▽盗塁 球9▽暴投 上2▽失策 上3、球1▽捕逸 上2

【評】序盤の大量点で主導権を奪った球磨工が上天草の追撃を振り切り八回コールドで白星発進した。打線は16安打で効率よく得点。先発の脇山は3回無失点で流れをつくった。上天草は四、七回に長短打を集めて反撃したが、及ばなかった。

上天草-球磨工から

上天草-球磨工から

◆地元が被災、野球できる喜び体現

熊本豪雨で地元が甚大な被害を受け、4日前に練習を再開したばかりの球磨工が16安打を放つ猛攻で“特別な夏”の初戦に快勝。横馬場徳貴監督は「序盤にいい形がつくれて、選手たちの緊張も解けた。野球ができる喜びをみんなが体現してくれた」と目を細めた。

熊本豪雨では多くの部員の自宅が被災。部員たちは4日から20故障から復帰のエース、援護できず日まで、被災した部員の自宅や人吉市中心部で泥だしや災害ごみの搬出などボランティア活動に励んだ。大会直前の大事な調整の時間が取れず、「試合開始前までは不安があった」と那須道磨主将。しかし、先発したエース脇山大樹が三回まで無失点と試合をつくると、打線が奮起。序盤で10点差をつけ、粘る上天草に最後まで主導権を与えず、12-5で八回コールド勝ちした。

上天草-球磨工から

次戦の27日は、同じく豪雨被害を受けた人吉との対戦。那須主将は「被災した地元に少しでも元気が届けられるような試合をしたい」と前を見据えた。

◆食い下がった上天草「一番楽しい試合」

序盤に大量リードを奪われ、追い上げも及ばずコールド負けに終わった上天草だったが、守口晃司主将は「野球人生で一番楽しい試合だった」と悔しさは見せなかった。

上天草は三回までに10点を失う厳しい展開。それでも四回表に、守口主将の左中間二塁打で2点を返すと、その裏から登板した松本大雅が七回途中まで1失点と好投。打線も七回に3点を返すなど食い下がった。富岡智法監督は「強豪相手に良く粘って戦ってくれた」と選手の頑張りに目を細めた。

<宇土 10-0 天草拓心(六回コールド)>宇土、序盤に長短打集中

天草拓心-宇土から

天草拓心 000000 |0
宇土   240004x|10
(六回コールド)

▽三塁打 酒井(宇)▽二塁打 太田、酒井2(宇)▽盗塁 宇土7▽暴投 天2▽失策 天5▽ボーク 宇1

天草拓心-宇土から

【評】宇土は序盤に6長短打を集め、計6点を奪って主導権を握った。守っては、本田、宮崎、重元の投手陣が相手打線を2安打に封じ、反撃を許さなかった。天草拓心は5失策と守備が乱れ、攻撃でも精彩を欠いた。

◆天草拓心主将「最後の試合でマウンド楽しめた」

[ひとこと]
◇天草拓心・松本彪飛主将(捕手で先発、2番手投手で粘投)投手の練習を始めたのは先月からだったが、最後の試合でマウンドを楽しむことができた。後輩たちも、みんなで励まし合って野球を楽しんでほしい。

【7月26日】城南地区2回戦

<南稜 6-1 小川工>コース逆らわず12安打

南稜-小川工から

南稜  001021002|6
小川工 010000000|1

▽二塁打 水鳥(南)稲田(小)▽盗塁 南2、小1▽暴投 小1

【評】南稜は12安打で6点を挙げて快勝した。4安打の林をはじめ、コースに逆らわない打撃が光り、好投の主戦稲田を援護した。小川工打線は二回に過福の適時打で先制するなど序盤は好調だったが、四回以降は2安打に終わった。

◆故障から復帰のエース、援護できず

南稜-小川工から

小川工は故障から復調した背番号1の木村響弥が先発。約1年ぶりの公式戦登板は5回3失点で降板し、チームも初戦で涙をのんだ。

木村は昨夏も主戦だった。だが、直後に腰を痛め昨秋の県大会はマウンドに立たなかった。「みんなに迷惑をかけた」と冬場は走り込みで下半身を強化した。

試合前に後藤拓海主将から「初回から全力で行ってくれ。自分たちも全力でプレーする」と背中を押された。その期待に応え「去年の秋の分も頑張る」と走者を再三背負いながら四回までは1失点と、気迫あふれる粘り強い投球を見せた。

エースの奮闘に打線も序盤は快打を放ったが、三回以降はホームが遠かった。後藤主将は「気持ちが空回りして打てなかった。木村を援護したかった」と悔いた。

南稜-小川工から

【7月26日】城南地区3回戦

<秀岳館 10-3 八代東(七回コールド)>四回に打線爆発、8得点

八代東-秀岳館から

八代東 1002000 |3
秀岳館 0008002x|10

▽二塁打 平尾、山田(八)江崎2(秀)▽失策 八1、秀2▽捕逸 秀1

【評】秀岳館は三回まで無安打だった打線が四回に爆発。長短6安打で8点を奪い、大勢を決めた。五回から登板した高瀬は3回無失点の好救援。八代東は3点を先行して試合を優位に進めたが、四回の大量失点で勢いを失った。

◆八代東、大敗も地力示す

優位な試合運びが一転し、まさかのコールド負けを喫した。八代東は3-0から瞬く間に8失点したのが響き、シード校の秀岳館に屈した。

先発の和田健は三回を終えて被安打0、無失点だったが、四回に暗転する。四球や失策も絡んで打者一巡の猛攻を受け5点を献上。最速140キロを誇る2番手の松永拓武も満塁で走者一掃の二塁打を浴びた。

大里尚純監督はコロナ禍に伴う休校に触れ、「投げ込みや実戦経験が足りなかった。ピッチャーたちは良く投げたが、体力不足が響いた」と責めなかった。

八代東-秀岳館から

打線は初回と四回に犠飛や適時打で得点してリードを奪ったものの、逆転された後は沈黙した。山本航弥主将は「力を発揮しきれなかった。投手陣をもっと援護したかった」と悔しがった。

ただ、序盤の和田健は低めにボールを集めて快投。打線は初回の先頭から2連打し、下位も二塁打を放つなど、投打とも地力の片りんはしっかり示した。

休校期間中、野手陣は素振りやバドミントンのシャトル打ちに励み、打力を磨いた。「今年の3年生は進んで努力した。その成果は出せたかな」と指揮官。捕手としてもチームをまとめた山本主将は「今大会で公式戦初本塁打を打った選手がいるし、投手陣も成長した姿を見せた。いいところは出せたと思う」と悲嘆することなく胸を張った。

八代東-秀岳館から

<八代工 8-0 八代清流(七回コールド)>初回からそつなく得点

八代工-八代清流から

八代工  4010012|8
八代清流 0000000|0
(七回コールド)

▽二塁打 市村(工)▽盗塁 工3、清1▽暴投 工1、清1▽失策 工2、清3

【評】八代工がそつなく得点した。初回は四球と敵失に乗じて4点を先制。六回は無安打で1点、七回は四球や敵失と単打で2点を加えた。先発木村慎は七回途中まで1安打の好投。八代清流は先頭打者を出せず、好機が少なかった。

八代工-八代清流から

八代清流、快進撃止まる

八代清流は打線が2安打に封じ込まれた。創部9年目で初めての「夏の1勝」を挙げて1、2回戦を突破したが、快進撃はストップ。主砲の柳田有貴右翼手は「相手投手の変化球を捉えきれなかった」と悔しがった。

初回に4点を失うと、打線は八代工の先発木村慎治のスライダーを打ちあぐね、七回途中まで1安打。2戦連続で2安打と好調だった柳田も1、2打席で三振を喫した。

柳田がようやく快音を響かせたのは、相手投手が交代した七回二死の場面。「最後のバッターになりたくない」と左前にクリーンヒットを放って意地を見せたが、ホームは踏めなかった。

夏の大会未勝利で終えた後、新チームは昨秋の県大会で16強に入った。冬場は「体重10キロ増」を掲げてトレーナーの指導で筋力を強化し、練習では間食を取って肉体を改造。ほぼ全員が目標を達成し、平松歩大主将は「冬を越え、打球の飛び方が違った」と確かな成長を実感していた。

八代工-八代清流から

鍛えた打力を武器に、1、2回戦で計18点を奪って連続コールド勝ち。学校新設に伴い八代市出身の歌手、八代亜紀さんが作詞作曲した校歌を初めて歌うこともできた。「弱い、弱いと言われてきて2回も勝てた。これまでのイメージを覆せたのなら、うれしい」。平松主将は新たな歴史を刻み、誇らしげだった。

【7月28日】熊本市内地区準々決勝

<文徳 4-3 九州学院>最終盤に勝負強さ、競り勝つ

文徳   000111001|4
九州学院 000102000|3

▽二塁打 山口、末原(文)松下2、有村(九)
▽野選 九1▽失策 文1、九1▽捕逸 文1、九1▽打撃妨害 九1

【評】最終盤に勝負強さを見せた文徳が競り勝った。3-3の九回1死から宮本のバント安打など連続3単打で勝ち越した。投手陣も踏ん張り、2番手田辺が変化球で打ち取った。九州学院は得点機を毎回得たが、あと一押しを欠いた。

文徳-九州学院から

文徳-九州学院から

◆九学の牛島、雪辱の全打席出塁

九州学院の俊足強打の外野手、牛島希の夏は熊本市内準々決勝で幕を閉じた。最後まで文徳と1点を争う好勝負を演じ「3年生の集大成として楽しむことができた」。だが、言葉とは裏腹に涙がとまらなかった。

高校通算25本以上の本塁打を放ち、広角に打ち分ける打撃と50メートル6秒0の俊足が光る右打ちの1番打者。しかし、初戦の熊本戦では5打数無安打に終わり、「チームに迷惑を掛けてしまった」と悔しい思いをした。

この1週間は文徳戦に向けてバットを徹底的に振りこんだ。主砲の復調を後押ししようと、「チームメートも打撃練習の機会を自分のために増やしてくれた」と言う。

「仲間を勢いづけるため、どんな当たりでも塁に出る」。初回は四球を選んで出塁し、三回は右前安打。四、六回には四球で好機を広げ、最終打席となった八回はセンター前にしぶとく運んだ。全5打席で出塁。宣言通りトップバッターの役割を見事に果たし、「初戦の悔しさを晴らすことができた」とうなずいた。

文徳-九州学院から

走攻守三拍子そろった強打者にはドラフト候補としてプロも熱い視線を送る。「この3年間、九学で得た経験を次のステージに生かしたい」。悔しさをバネに、さらなる飛躍を誓った。

<開新 2-1 必由館>下堂、3試合連続の完投勝利

必由館-開新から

必由館 010000000|1
開新  00001010×|2

▽本塁打 北川(必)
▽失策 必1、開1

必由館-開新から

【評】開新のエース下堂は3安打1失点で3試合連続の完投勝利。二遊間を中心とした堅守も光った。打線は6犠打の手堅い攻めで、相手に圧力をかけ続けた。必由館は北川の本塁打による1得点のみで、好投の中村を援護できなかった。

必由館-開新から

◆必由館エース中村、納得の2失点完投

エース同士の緊迫した投げ合いだった。8回を被安打5に抑えながら、1-2で逆転負けした必由館の中村真は「自分がゼロに抑えていたら勝てたのに」と責任を背負い込んだ。

雨天での順延が続き、「調整がうまくいかなかった」と言いつつも、三回を終えて7奪三振と圧巻の立ち上がりを披露。右腕から繰り出す威力十分の直球と、切れのある横への変化球がさえた。

必由館-開新から

最初の失点は五回だった。テンポの良さがあだとなり、2死二塁で「投げ急いでしまった」という初球のフォークボールを中前に運ばれた。七回は2死三塁で内野ゴロに仕留めたかに見えた。だが、送球エラーで勝ち越しの決勝点を許した。

打線は開新の好投手・下堂翔史を攻略しようと「浮いた球を狙う」作戦で臨んだ。二回に4番北川諒が高めの球を捉えて右越え本塁打を放ち1点を先行したまでは良かったが、以降は140キロ近い低めの直球を打ちあぐねた。三回からは計2安打に終わり、好守にも阻まれた。西田尚巳監督は「下堂君が良すぎた」と脱帽した。

わずか2失点での惜敗-。当然悔いが残る。それでも中村は「3年の最後にやっと良い投球ができた」と納得の表情も見せた。女房役の寺尾一真主将は「球威は衰えず、今までで一番良い球が来ていた」。1回戦から全3試合を1人で投げ抜いたエースは、最後まで輝き続けた。

【7月29日】熊本市内地区準々決勝

<熊本北 4-3 熊本商>手堅い攻めで先行、競り勝つ

熊本北 120000100|4
熊本商 000100002|3

▽三塁打 今田、五十嵐(北)▽二塁打 五十嵐、西村(北)▽盗塁 商2▽失策 商1

【評】熊本北は序盤、単打に犠打を絡める手堅い攻めで3点を入れて先行。先発浜野は最後につかまったが、それまでは緩急をつけて相手打線をかわした。熊本商は3点を追う九回、無死から4連打で1点差に迫ったが、あと一歩届かなかった。

熊本北-熊本商から

◆熊本商打線、最終回迫ったが…

3点を追って迎えた九回裏。熊本商は先頭からの4連打で2点を返し、なおも無死一、二塁と攻め立てた。だが、後続が送りバント失敗や併殺に倒れゲームセット。熊商ナインの夏が終わった。

先発西村隼が立ち上がりを攻められ、二回までに3点を失った。その後も再三、得点圏に走者を許したが、1失点にとどめる粘りの投球。ただ、打線は相手投手の変化球を打ちあぐね八回まで1点しか奪えなかった。

最終回、エースの粘投にようやく打線が応える。先頭の新生力斗が中前安打を放つと、3連打でまず1点。さらに無死一、二塁で打席に入った坂田健晋捕手は「自分が西村の足を引っ張ったので、(走者を)死んでもかえしたかった」と右前にしぶとく打ち返し、1点差まで迫った。直前までバントのサインが出ていたという坂田は「監督が自分を信頼して打たせてくれた。優勝して恩返しがしたかった」と涙をこぼした。

熊本北-熊本商から

「甘く入った球を打たれた場面が多く、守っていたみんなに申し訳なかった」。9回142球を投げ抜いた西村は責任を背負い込みつつ、「後輩たちには甲子園を目指してほしい」と夢を託した。

<熊本工 4-1 学園大付>積極的な攻撃光り、快勝

学園大付 001000000|1
熊本工  10200010×|4

▽三塁打 江川(熊)▽二塁打 宮田宗、東(熊)▽盗塁 熊5▽失策 学1、熊1

学園大付-熊本工から

【評】熊本工の積極的な攻撃が光った。初回は単打に盗塁と犠打を絡めて先制。三回は先頭の宮田宗が右中間への浅い打球で二塁を陥れ追加点につなげた。山田は9回102球の省エネ投球。学園大付打線は散発4安打と不発だった。

学園大付-熊本工から

◆学付の両右腕、敗戦も進化示す

1-4で熊本工に敗れはしたが、昨秋の県大会4強の実力は示した。学園大付の坂本博之監督は「打線が打てなかった」と敗因を語り、「投手陣は持ち味を出してくれた」と好投した茶屋野洋輝、菅直斗の両右腕をねぎらった。

学園大付-熊本工から

指揮官が先発を託したのは「熊工戦に向けて気合が入っていた」という背番号10の茶屋野。130キロ台の速球が武器の本格派右腕は「後ろには(エースの)菅がいる」と序盤から飛ばした。初回先頭打者に内野安打を許したのをきっかけに1点を失ったが、二回まで2安打、4奪三振と上々の立ち上がりを見せた。茶屋野は三回に長打2本を浴びて2点を失って途中降板。ピンチが続いたが、2番手の菅が「もう1点もやらない」と踏ん張り、空振り三振で切り抜けた。右横手投げのエースはその後も内外角に丁寧に投げ分け、七回に1失点したものの熊工の強力打線に的を絞らせなかった。

昨秋は準決勝で城北に延長で競り負け、九州大会出場を逃した。躍進の原動力となった菅は「あと一歩を勝ち切るにはスタミナが必要だと思った」。冬場に茶屋野らと合志市のグラウンド近くの弁天山を走り込んだ。

その成果はピンチの場面で表れた。八回2死一、二塁。2ナッシングから菅が投じた1球は右打者の外角低めにズバリと決まり見逃し三振に。「終盤になっても低めへの制球は良かった。最後も満足のいく球を投げられた」と菅。進化したエースの投げっぷりは見事だった。

【7月31日】城南地区3回戦

<球磨工 10-1 人吉(七回コールド)>盗塁に犠飛、そつなく攻め快勝

球磨工 2230102|10
人吉  0000010|1

▽二塁打 嶽元(球)▽盗塁 球5、人1▽暴投 球1、人1▽失策 人2

【評】球磨工は三回までに9安打を集めて7得点。盗塁や犠飛を絡めたそつのない攻めで試合の大勢を決めた。投手陣は4人の継投で3安打1失点。人吉は四回以降、毎回得点圏に走者を進めたが、六回の1点にとどまった。

球磨工-人吉から

◆被災地対決 人吉、球磨工に思い託す
ともに人吉市内にあり、部員の家も豪雨で大きな被害を受けた両チームの対戦。結果は大差がついたものの、「最後に(球磨)工業と試合ができて良かった」。豊田大輝主将をはじめ人吉ナインは、敗戦にも晴れやかな表情だった。

お互いに小、中学校時代のチームメートが多くおり、「手の内を知り尽している相手」(豊田主将)。今大会初先発の豊田主将は地力のある球磨工打線を警戒していたが、初回に2点を失うと、その後も相手の勢いを止められなかった。

球磨工-人吉から

打線は六回の1点止まりだったが、三回を除いて毎回出塁して食い下がった。豊田主将は「打たれるのは分かっていたこと。チームは最後まで諦めずに戦えた」と胸を張った。

多くの人の支えあっての大会だった。捕手の尾崎太透は球磨村渡地区の自宅が2階まで浸水。野球道具も被害を受けたため、ユニホームは今春卒業した先輩から借りて試合に臨んだ。「(支援は)ありがたかった。この仲間と最後に3試合戦えて楽しかった」と充実感を漂わせた。

最後まで真剣勝負を見せた両チームだったが、試合後は笑顔で談笑したり、一緒に写真に納まったりして健闘をたたえ合った。豊田主将は千羽鶴を球磨工ナインに手渡し、思いを託した。「ぜひ優勝してほしい」

球磨工-人吉の試合後、球磨工の那須道磨主将(左)に千羽鶴を手渡し握手する人吉の豊田大輝主将

試合後、記念写真に納まる人吉と球磨工の選手たち

<南稜 10-6 宇土>序盤に大量リード、逃げ切る

南稜 144010000|10
宇土 000031101|6

▽本塁打 水鳥(南)▽二塁打 那須2、石井、水鳥(南)太田(宇)▽盗塁 宇2▽暴投 南1▽失策 南1、宇1

【評】三回までに大量リードを奪った南稜が逃げ切った。初回に1点を先制すると、二、三回は四球などで好機を広げ、上位打線の連打で得点を重ねた。宇土は五回以降、打線が9安打を放ってコールド負けを回避したが、序盤の大量失点が重かった。

◆宇土、コールド負け寸前から盛り返す

南稜ー宇土から

五回表を終えて0-10。コールド負け寸前まで追い込まれた宇土は一気に盛り返し、九回まで戦い抜いた。終わってみれば6-10。太田陽真主将は「最後までやり切れた。3年間頑張ってきたかいがある」と気持ちよさそうに汗を拭った。

10点を追う五回裏2死満塁。左打席に入った3番益田颯眞は真ん中高めの変化球を引っかけてしまった。「バットの先っぽに当たった。やばい」。打球は二塁手正面へ飛び、負けを覚悟した。

だが、相手の後逸でボールは中前へ転がり、2人が生還。「試合が終わったと思ったので、めっちゃ、うれしかった」と益田は一塁上で手をたたいて大喜びした。さらに5番山田敬世の左前打で1点を返した。六回裏は1番の太田主将が意地を見せる。2死一塁で外角低めの直球を振り抜き、左中間への適時二塁打で4-10。七回は押し出し四球、最終回も途中出場の渡邊元気が適時打と、いずれも2死から1点をもぎとった。

南稜ー宇土から

五回以降だけで9安打。失点も六回から許さなかった。白石哲監督は「よく頑張り、諦めなかった」と、約3時間のしぶとい熱闘を見せたナインをねぎらった。

【8月1日】熊本市内準決勝

<文徳 7-2 開新>先頭出塁生かし、そつなく得点

文徳-開新から

文徳 310011100─7
開新 000200000─2

▽三塁打 山口(文)▽二塁打 辻崎、斉藤(文)伊豆野(開)▽盗塁 文1▽暴投 文1、開3▽失策 開1▽捕逸 開1

【評】文徳が先頭打者の出塁をそつなく得点に結び付けて快勝した。初回は1番七條の単打を足場に押し出し死球と敵失で3点を先制。その後も適時打や犠飛などで加点した。開新は散発4安打に終わり、反撃の糸口をつかめなかった。

文徳-開新から

◆愚直な努力、貫いたエース

2-6に点差が広がった六回1死。開新の下堂翔史は今大会初めて後輩にマウンドを譲った。「あとは任せたぞ」。その後はベンチで声をからしたが、逆転は果たせず「これまでのような粘り強い投球ができなかった」と肩を落とした。

立ち上がりを苦手にはしていないが、「準決勝ということで意識してしまった」。生命線の制球が定まらず、初回は連打や四死球に失策が絡んで3点を失う。三、四回はテンポ良く三者凡退で切り抜けたものの、五、六回と長打を浴びて追加点を許した。

エースを援護したかった打線も序盤の失点が重くのしかかり「だんだん焦りが出て、打つべき球が分からなくなってしまった」と石井直大主将。文徳の左腕2投手に対して的を絞れず、わずか4安打。反撃はスクイズなどで挙げた四回の2点にとどまった。

誰よりも早くグラウンドに来て用具を準備し、自主練習に励んで最後に帰る-。下堂は入学時から愚直な姿勢と努力を3年間貫き、最後の夏は絶対的なエースに成長。野田謙信監督は「こんなに野球と真摯(しんし)に向き合える選手はそういない」とたたえる。「その姿を見て、『自分たちも練習を頑張ろう』と思わせてくれた」と石井主将。だからこそ、「もう少し打線で助けたかった」と、申し訳なさを口にした。

文徳-開新から

【8月1日】城南地区準決勝

<秀岳館 5-0 八代工>打線が勝負強さ発揮

八代工-秀岳館から

八代工 000000000|0
秀岳館 00020030×|5

▽二塁打 如見(八)永田(秀)▽盗塁 八1、秀1▽失策 八1

【評】秀岳館打線が勝負強さを発揮した。四回は1死から4連打、七回は2死満塁から4番永田の走者一掃の二塁打で計5得点。丸山、高瀬の投手リレーで完封した。八代工は得点圏に4度走者を進めたが、あと一本が出なかった。

八代工-秀岳館から

◆全力貫いた八代工 攻守で意地示す

点差ほどは力の差を感じさせなかった。2試合連続コールドで勝ち上がった八代工は終盤に引き離されて0-5と完封負けしたが、最後まで全力プレーを徹底。ライバルの秀岳館を相手に我慢強く粘った。

一回裏1死二塁のピンチでは、「打撃の人」を自認する1番大平裕生が好守備を披露。右翼線を襲う鋭い打球を横っ跳びでつかみ、あわや失点という場面を切り抜けた。

大平は7月の豪雨で芦北町の自宅が被災。土砂の撤去などで練習に参加できない日が続いた。ただ、道具は無事だった。「野球ができて幸せ」。その喜びを体現するような気合十分のプレーで仲間を勇気づけた。

エース木村慎治は七回途中で降板したものの、六回を終えて被安打6、2失点と力投。救援した小嶋崚介は打者5人から3三振を奪うなど自慢の速球で無失点に抑えた。

八代工-秀岳館から

最終回の攻撃も気迫は途切れなかった。二死から代打で登場したのは3年の家田吏基。右膝半月板損傷を克服し、公式戦初出場を果たした。強振した打球はショートへ転がった。懸命なヘッドスライディングでも及ばなかったが、「自分たちらしく戦えた」。岡本政輝監督は「一人一人がこの夏に懸ける思いを示してくれた」とたたえた。

八代工-秀岳館から

決勝へ進めなくても涙はなかった。矢田裕馬主将は「このチームで3試合ができ、18人の3年全員が出場した。自粛期間は苦しかったけど、最後は楽しく野球ができた」。特別な夏の余韻をかみしめるように爽やかな笑顔で球場を後にした。

【8月2日】熊本市内決勝

<文徳 9-1 熊本北>強打に堅守 文徳が優勝

熊本市内大会で優勝しマウンドに駆け寄る文徳ナイン

熊本北 001000000|1
文徳  02000430×|9

▽三塁打 七條(文)▽二塁打 藤田(北)斉藤(文)▽盗塁 文1▽暴投 北1▽失策 北2

【評】文徳は六、七回で7点を奪い、一気に試合を決めた。2-1の六回は4四死球と2安打で効率よく4点、七回は3長短打に犠打を絡めて3点を加えた。先発左腕の田辺は九回1死まで投げて1失点。緩急をうまく使った投球が光った。

熊本北は持ち味の守備でミスが相次いだ。五回までは接戦を演じたが、救援した投手陣が相手打線に攻略された。

◆昨秋の悔しさばね、鍛錬実る

優勝が決まった瞬間、文徳ナインはマウンドに駆け寄り、人さし指を掲げて喜びを爆発させた。「3年間懸命に練習してきた。これで気持ち良く引退できます」。高校最後の試合となった熊本市内大会決勝を勝利で締めくくり、七條太一主将はさわやかに汗を拭った。

大一番のマウンドを託されたのは今大会初先発の田辺斉真(なりまさ)。準決勝までの3試合で好救援を続けていた2年生左腕は「不安もあったが、味方を信じて投げた」。抜群の制球力で内角を突き、九回途中まで無四球で1失点。相手打線に付け入る隙を与えなかった。

熊本北-文徳から

五回終了時点のスコアは2-1。自慢の強力打線は熊本北の左右の技巧派投手を打ち崩せずにいた。しかし六、七回に本領を発揮。四球や敵失に乗じ9番宮本崇旨(たかし)、1番七條らが効果的に適時打を放ち、大量リードを奪った。

熊本北-文徳から

前チームからの主力が多く残り、「絶対に甲子園に行こうと思っていた」と七條主将。しかし、昨秋の熊本大会準々決勝の国府戦ではミスが絡んで終盤に8点差をひっくり返され、春のセンバツへの道を阻まれた。悔しい逆転負けをばねに、その後は守備の基礎練習を徹底。今大会はわずか1失策と堅守が光り、接戦をしぶとく制してきた。

文徳にとって「夏の決勝」は鬼門でもあった。2003年以降に計5度進出したが、13~15年に3年連続で準優勝に終わるなど、いずれも苦杯をなめてきた。独自大会とはいえ熊本市内の頂点に立ち、「(コロナ禍で甲子園が中止になるなど)難しい状況もあったが、諦めずに前向きに戦ってくれた」と森田崇智監督。数々の悔しさをパワーに変え、たくましく成長した教え子たちを称賛した。

◆熊本北、敗戦も成長刻む

熊本北-文徳から

1983年の創部以来初のタイトルに手を掛けた熊本北だったが、ここまで無失策だった堅守が乱れた。失点を重ねて攻撃のリズムをつくれず、西村侑大主将は「熊本市内の最後の試合をできたのはうれしいけど、こんな形で終わるのは悔しい」と目を真っ赤にした。

優勝にこそ縁がないものの、各大会で上位に進出してきた。だが、昨夏の新チーム結成時は「いろんな人に『この代は弱い』と言われた」と西村主将。悔しい言葉をはね返そうと、全員でグラウンド整備や道具を準備するなど、進学校ゆえの限られた時間を有効に使って力をつけてきた。

熊本北-文徳から

今夏は徹底して磨いた守備でしぶとく勝ち上がった。決勝は勝負どころでミスが出たが、松尾祐一監督は「この1年間の成長は目を見張る」とたたえる。左肩痛で無念の途中降板となったエース浜野仁真は「最高の仲間がいたから、つらい時も乗り越えられた」と笑顔で感謝した。

【8月2日】城北地区決勝

<有明 3-0 城北>有明、初回の3得点守り栄冠

城北地区の優勝を決め、マウンドの上で大喜びする有明ナイン

有明 300000000|3
城北 000000000|0

▽本塁打 北村(有)▽二塁打 青柳(有)▽盗塁 有2、城2▽暴投 城1▽失策 有1、城1▽捕逸 有1

有明-城北から

【評】互いに4安打だったが、立ち上がりに得点した有明がそのまま押し切った。初回2死一、二塁から意表を突く重盗で相手守備のミスを誘い1点。5番北村の2点本塁打で主導権を握った。先発の江口晶は外角の直球を軸に打たせて取り、1死球と制球もさえた。

城北は三回1死で継投した永谷が被安打1と好投したが、攻撃で出塁が少なかった。

有明-城北から

 ◆2年生エースが完封「先輩のため」

城北地区決勝で有明の2年生エース、江口晶大が鮮やかな完封劇を演じた。「先輩たちと野球ができるのはこれが最後。悔いの残らないよう、一球一球に思いをぶつけた」。歓喜の輪の中心で笑顔がひときわ輝いた。

一回表、味方の先制パンチに勇気をもらった。先頭の青柳俊輝(3年)が中前打で出塁。暴投と四球で無死一、二塁と好機が広がる。2死となったが、「江口のために点を取ってやろう」。青柳の三盗が捕手の悪送球を誘い、一気に本塁を陥れた。さらに女房役の北村辰輝(2年)に2点本塁打も飛び出す。この3点で十分だった。

伸びのある130キロ台の直球に変化球を織り交ぜ、昨秋の九州大会8強の城北打線を封じ込めた。五、六回には得点圏に走者を背負ったが、「(内野の)野口凌我さんや(主将の)永井裕太さんが『笑え』と声を掛けてくれた」。冷静にコースを突いてピンチを脱すると、終盤の3回はいずれも三者凡退で締めた。

有明-城北から

引退試合として決勝のスタメンを3年生中心にする案もあったが、チームで話し合って「勝ちにこだわる」ことに決めたという。この日、先発に名を連ねた3年生は3人だけ。残るメンバーは水分補給をサポートするなど裏方に徹した。炎天下の中で完投した江口は「ベンチでエネルギーを充電できたのが大きかった」と感謝した。

新型コロナウイルスの影響で大会中止が相次ぎ、心が折れそうになったことも。そんな時、必死に前を向いて練習に励む3年生の姿に勇気をもらった。“最後の大会”で喜びを分かち合い、「つらいことを乗り越えた先に良いことがあると、身を持って教えてもらった」と江口。「先輩たちの思いを受け継ぎ、来年は悲願の甲子園出場を果たす」と力強く誓った。

◆準優勝の城北「しっかり結束できた」

初回に0-3となったスコアがずっと動かなかった。昨秋の県大会準優勝の城北が4安打に終わった。「どこかで1点取れれば試合が変わったのだが…」。持ち味の粘り腰を発揮できず、末次敬典監督は肩を落とした。

有明-城北から

準決勝で好投し、この日先発した白石力也も決して悪くなかった。さらに三回途中でリリーフした2年生右腕の永谷魁人は圧巻だった。185センチの長身から投げ下ろす140キロ近い直球と、切れの良い変化球で九回まで1安打9奪三振。「自分が流れを引き寄せる」と意気込んだ通りの快投で援護を待った。

だが、打線はコーナーを丁寧に突く有明の江口晶大の前に低迷した。4番菊川奨悟が気を吐いて二、六回と中前打で出塁し、「足でかき回し、何とか生還したかった」と2度とも二盗に成功。ただ、後が続かなかった。

有明-城北から

強豪校ながら3年生は10人とこれまでになく少なかった。だからこそ、「しっかり結束できた」と菊川は言い切った。悔しい準優勝。それでもコロナ禍を乗り越え、8月まで白球を追えたのは誇りだ。

【8月2日】城南地区準決勝

<南稜 11-5 球磨工>好機逃さず打ち勝つ

南稜  003003050─11
球磨工 000013010─5

▽二塁打 畑野、敷根(南)橋口、坂上(球)▽暴投 南1、球1▽失策 南1、球1

【評】南稜打線が好機を逃さず畳み掛けた。三回は上位の3連打などで3点を先制。六回にも3点を加えると、八回は5安打を集めて駄目押しの5点を奪った。球磨工は四回まで無安打。二回に相手の好守に阻まれ長打性の打球で併殺を喫すなど、流れをつかめなかった。

◆球磨工、貫いた「最後まで全力」

南稜-球磨工から

「コロナ禍に加えて水害もあった中、それでも下を向かずに意地を見せてくれた」。城南地区大会の決勝進出を逃したものの、球磨工の横馬塲徳貴監督は「野球ができる喜び」を胸に全力でプレーした選手たちをたたえた。

7月上旬の熊本豪雨はチームの日常を一変させた。地元の人吉市一帯は甚大な被害に見舞われて練習は2週間ほど休止に。部員は連日、災害ゴミの搬出などに精を出した。調整不足から、那須道磨主将は「ピッチャーは制球力、支える内外野は守備の連係に不安があった」という。

南稜との準決勝は六回表を終え、1-6と大差をつけられた。それでも引き下がらなかった。六回裏に長短3安打で3点を返して反撃開始。八回に5点を奪われ、コールド負けもちらついた直後の攻撃で1点をもぎとり最終回につないだ。

南稜-球磨工から

「最後まで諦めない姿勢」(横馬場監督)を貫いたナイン。那須主将は「これからは就職活動をしながら、ボランティアを続ける」と明かした。白球を追う生活から古里の復興へ-。目標は切り替わっても全力プレーは続く。

【8月3日】城南地区決勝

<秀岳館 8-1 南稜>秀岳館、隙なくV

南稜-秀岳館から

南稜  000001000|1
秀岳館 02102111×|8

▽二塁打 永田、九反田、松本、幸野(秀)▽盗塁 秀1▽失策 南3、秀1▽ボーク 南1

【評】秀岳館が大技小技で勝負強く得点を重ねた。二回に永田、九反田の連続二塁打などで2点を先制。五回は犠飛と長打で2点を加え、1点を返された直後の六回はスクイズですぐに取り返した。先発の丸山は5回2安打無失点、2番手の高瀬も1失点と安定していた。

南稜打線は6安打を放ったが13三振。相手の鋭い変化球に手を焼き、畳み掛ける攻撃ができなかった。

南稜-秀岳館から

◆大技小技で8得点 投手も安定

3年生のみで大会に臨んだ秀岳館が、城南地区21チームの頂点に立った。「スタンドにいるメンバーを含め、全員でつかみ取った優勝です」。入部時から苦楽を共にした3年生39人で最後の夏を飾り、池田颯一郎主将は胸を張った。

南稜-秀岳館から

春の選抜出場を目指した昨秋の熊本大会は守備のほころびもあり、3回戦で敗退。甲子園で春夏通算3度4強入りした強豪校には「『どうせ勝てるだろう』という油断もあった」(池田主将)という。その反省に立ち、「常に挑戦者の気持ちを」と試合ごとに意思統一を図り、この日も攻守に隙を見せなかった。

準決勝までの3試合で24得点の強力打線は、二回に連続二塁打などで先制。中盤以降はスクイズを含む5犠打飛と手堅さを見せ、攻撃の手を緩めなかった。ビッグイニングこそなかったものの8得点の快勝。久木田拡吉監督は「今までやってきたことを出してくれた」と満足そうにうなずいた。

投手の安定感も光った。先発の丸山莉玖が5回を無失点。継投した高瀬樹も鋭く変化するスライダーを武器に8奪三振と快投を演じ、「初めは緊張したが、しっかり締められた」と自賛した。

南稜-秀岳館から

チームには甲子園出場を夢見て県外から集まった選手も多い。京都府出身の池田主将は全国選手権の中止が決まった際、「3年間、何のためにやってきたのか」とひどく落ち込んだ。

率先してナインを前に向かせる責務を見失いかけたが、仲間の励ましが再び気持ちを奮い立たせてくれた。下級生を含め92人の大所帯をまとめ上げて栄冠を手にし、「迷惑をかけたけど、みんなに支えられてここまでこられた」と感謝した。

◆南稜、被災地に届けた「元気」

南稜は1得点に終わり、3試合連続で2桁安打を放った自慢の強打を発揮できなかった。しかし、持ち味のフルスイングは最後まで貫いた。「ハッピー・エンジョイ・ベースボール」の合言葉通り、豪雨被害を乗り越えた選手たちは笑顔を絶やさず野球ができる喜びをかみしめた。

南稜-秀岳館から

7月の豪雨に見舞われたあさぎり町内にある同校。南稜側スタンドには、同じく被害を受けながらも今大会を戦った人吉、球磨工から託された千羽鶴がはためいた。試合前、那須悠斗主将はナインを鼓舞した。「人吉・球磨に優勝盾を持って帰ろう」

南稜-秀岳館から

しかし、試合は序盤から失点する苦しい展開が続いた。反撃は5点差がついた六回。最後の試合となる3年が意地を見せた。1死から那須主将、水鳥光が連打で出塁。敵失で満塁とし、4番石井天能が変化球を捉え左前に運んだ。チーム唯一の得点を刻んだ主砲は「南稜らしく単打でつながった」と胸を張った。

自宅が浸水被害を受けた選手もいた。ナインは休校で練習が休みとなった期間にボランティア活動を経験し、「野球ができるのは当たり前じゃない」(先発の稲田渉希)と感謝の思いを強くした。

「古里の皆さんがテレビの前で応援してくれていると思うと力が湧いた」と那須主将。優勝には届かなかったが、その活躍は被災地に元気を届けたはずだ。

南稜-秀岳館から

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