
城下町の「情報発信基地」 居酒屋「源ZO-NE」 個性的な商店主も集う店
ぶらり新町・古町

魚屋町にある居酒屋「源ZO-NE」。五福小学校の近くだ=熊本市中央区
熊本市の新町・古町をぶらぶらと歩く。城下町・熊本の「情報発信基地」のような居酒屋がある。「源ZO-NE」(ゲンゾーン、熊本市中央区魚屋町)。店主の上村元三さん(62)ののんびりした性格に引かれ、地元の商店主や住民が夜な夜な集う。
元金物店の「ボンボン」 企画立案の仕事も
上村さんは、もともとは金物店の長男で、少年期は「ボンボンとして(本人談)」何不自由なく生きた。大阪万博(1970年)には、関西の金物問屋の接待で家族旅行した。いい時代を過ごした。
高度成長が終わると、業界が一気に冷え込む。郊外にホームセンターが出現し、金物屋は倒産した。
スナックでバイトするうちに、静岡でイベントをなりわいにする人と出会った。その人に導かれ、企画立案という商売に入っていく。バブル期で、結婚式などでのキャンドルサービスが人気だった時期だった。オリジナルのろうそくを提供したりするイベントを企画した。
飲むのが大好き 仲間集めようと居酒屋開業

馬すじ煮込みは、ゆずこしょうが合う

人気の肉料理。豚バラ、豚ロースの炭火焼きだ。ブラジル風のソースがあっさり
飲むことが好きで、飲み仲間を集める気持ちで居酒屋を開業。この店が、古町にいる商店主のたまり場に。お祭りや地域のイベントなど町を盛り上げるためのチラシがどんどんたまり、地元の人々の情報交換が進んだ。
店は、代々の町屋を改築した造りで、軒先には一升瓶やサボテンが並ぶ。バーベキューセットが置かれ、提灯がぶら下がる。扉を開けると大きなテーブル席、カウンターがある。
家族連れや1人で食事する女性は、おのおの笑顔だ。「店構えがなんだか妙だったが、勇気を持ってはいったら、よか店だった」と常連さんは言う。
店中心にまとまり始めた「古町」

「人力車連絡所」でもある
居酒屋、出張BQ企画屋、キャンドルハウス、城下町案内人、肥後人力車…。上村さんの名刺には肩書がたくさん連ねてある。
若い頃は、魅力を感じなかった地域を本当に愛するようになったのは30歳を超えてからだ。少年の頃は、金物屋の近くには、はかり屋、ガラス店、食堂、クジラ販売店、卸業者が軒を連ねていた。一つ一つ廃業になったり、移転したり、いつの間にかマンションや駐車場が増え、寂しくなった。
商店主たちは一国一城の主。強烈な個性があるが、まとまり感がなかった。今や、この居酒屋を中心に魚屋町、万町、細工町などが「古町」としてまとまりつつある。
和服で地域のガイドも 「育ててくれた町に貢献したい」

浴衣姿でビールを出す上村さん。店は地元のお客さんでにぎわう
「下町を和服で歩くっていいですよね」と和服で町のガイドもこなす上村さん。
「育ててくれた町に貢献したい」。上村さんの思いは強い。飲み会で集まってくれて、この店が知恵を出し合う場所になるのがうれしそうだ。浴衣姿でビールをお客さんに出す姿は、いかしていた。つかみどころのあるような、ないような、楽天的な性格が人を引きつける。
店舗情報
住所 | 熊本市中央区魚屋町3-13 |
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アクセス | 熊本市電「呉服町」電停より徒歩2分 |
営業時間 | 19時~24時 |
定休日 | 不定休 |
電話 | 096-352-5763 |
※情報は2020年10月23日時点です。