パンに添えても美味 文旦漬の「福一堂本店」 シンプルな味の和菓子

パンに添えても美味 文旦漬の「福一堂本店」 シンプルな味の和菓子

ぶらり新町・古町

熊本市の新町・古町をぶらぶらと歩く。熊本の人に親しまれている和菓子の一つ、文旦漬(ぼんたんづけ)。「福一堂本店」(熊本市中央区新町)は、ザボン(ぼんたん=ぶんたんの和名)の皮を砂糖で煮たシンプルな味の文旦漬を作り続けている。

昔は家庭で手作り ザボンの皮を甘く煮込む

福一堂本店

「福一堂本店」の倉本徹さん。高麗門通りと新幹線の高架の間に店はある=熊本市中央区新町

高麗門通りにある店では、倉本徹さん(61)と京子さん(61)夫婦がザボンの皮を白砂糖と蜜で煮込んでいた。

「作り方も味も簡素ですよ。昔は家庭で作った人が多かったようです」と徹さん。煮込んだ皮を鍋から出す。淡いレモン色の皮は薄くむかれ、だいだい色とあめ色を合わせたような、甘さが伝わってくる色の艶に変わった。

爽やかな柑橘の香り広がる 町の風物詩

ザボンの皮を煮る

この日は取材に備えて、皮をいったん水で煮て、1日冷やす仕込み作業を済ませてくれていた。

ザボンは八代市の農家から取り寄せる。皮は冬場にむいて、冷凍保存する。皮のにおいをかいでみたいと無理を言うと、京子さんが皮をむく作業の時に使う前掛けや、かんなを出してくれた。

冷凍したザボンの皮

前掛けに染み込んだにおいをかいでみた。爽やかな柑橘(かんきつ)の香り。甘すぎない、スッとした空気が体の奥にまで入る気がした。

皮をむく作業の時は近所に爽やかなにおいが広がる。町の風物詩の一つだ。

やわらかく、ゼリーのような食感 日本茶に合う

文旦漬。昔は箱売りが多かったが、いまは小口が多い

徹さんは3代目。初代の祖父藤介さんは熊本市の味噌天神宮の隣にある老舗の和菓子店「福榮堂」で修業した。徹さんは「祖父は一番弟子だったので、のれん分けの際に『福』と『一』を店名に付けたそうです」と教えてくれた。

文旦漬は、熊本や鹿児島、宮崎で愛されてきたが、熊本で本格的に作っているのは、今は福一堂本店くらいだという。

甘く、やわらかい。ようかんのようなゼリーのような食感。日本茶と合う。「お年寄りで好きな人が多いですよ」と京子さん。薄く切ってバターを塗ったパンに挟むのもお勧めだ。

新型コロナで注文減も「身の丈でやってます」

先々代が長六橋の近くで店を構えていたが、戦争で焼けてしまった。その際、和菓子を作るための「らくがんの型」を持ち出したという。一部が焦げている

徹さんは大学を出た後に金沢市の和菓子店で4年間修業し、店を継いだ。「人生成り行きですよ」と笑うが、借金を返し、しっかり者の京子さんと3人の子供を育てた。

店が町屋だった先代の時代は従業員を10人ほど雇っていた。「作ればすぐ売れた。もうかった。もうかった」と徹さん。

「この辺りじゃ、一番早くテレビを買ったからね。プロレスを見るために、近所の人たちが集まったよ」。昭和30年代は力道山の空手チョップで歓声が起きた。

店は自宅を兼ね、職住一体。近所ではいつも笑いといざこざが繰り広げられ、映画「ALWAYS 3丁目の夕日」のように活気があった。

今は夫婦で文旦漬を少量作る。徹さんは「借金も返したしさ、新型コロナウイルスで注文は減ったけど、まあ身の丈でやってますよ」と納得した表情をみせた。

店舗情報

住所 熊本市中央区新町4丁目5-31

アクセス 熊本市電「新町」電停より徒歩7分
営業時間 9時~18時半(土曜、祝日は17時まで)
定休日 日曜
電話 096-355-4700

※情報は2020年11月11日時点です。

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