バーテンダー「夜話」 銀杏南通リ「スターズバー」編  「住宅ローン分、給料上げてやる」厳しい社長の優しさ 

「世の中の表裏を知りたければ、バーテンダーになればいい」。そんな格言があるそうです-。熊本市のバーテンダーたちの「ちょっといい話、クスッとする話」と、それにまつわるお酒とともに紹介します。熊本日日新聞夕刊の人気連載だった「夜話(やわ) カクテル」(2015年3月~2017年6月)を再構成し、バーテンダーさんへのインタビューやお店に関する情報などを加えました。今回は、「スターズバー」(熊本市中央区新市街)の矢田博文さんに登場してもらいます。

(記事中の情報は掲載時点、後段の店舗情報は2018年12月17日時点です。変更される場合がありますので来店前に電話でご確認ください)

「家族のために家を建てろ」 社員思いの社長と重なる「苦味とやさしさ」

1杯目 スチール&アイアン

8年前、常連の社長さんが40代の男性社員を連れて来店されました。社長は「家族のために家ぐらい建てろ」と、社員を叱咤[しった]激励されている様子でした。

数年後、同じ2人が来店。社員が照れくさそうに「ついに家を建てました」と報告されていました。用事のため中座することになった社長は去り際、社員にマイホームのローン額を尋ね、「来月からローンと同じ額だけ給料を上げてやる」と言って、出ていかれました。

その時、カウンターに残っていたカクテルが「スチール&アイアン」。薬草系のスピリッツ入りで、苦味はありますが体に優しいのが特長。厳しいことを言いつつも、常に社員への思いがあふれている社長と重なって見えました。

(2015年3月31日掲載)

「入れる順番で味が違う」 和食料理人の話に驚き

2杯目 ベルモットハーフ&ハーフ

別の店で修業していた25年前、体は大きくないのですが、威厳のある角刈りのお客さまがいらっしゃいました。和食の料理人で、京都で長年修業された後、熊本市内で店を持たれた方でした。

そのお客さまに声を掛けてもらうようになって、ある時、「塩を入れる順番で味が違ってくる」と、汁物の話をしていただきました。「料理とはそんな繊細なものなのか」と驚き、カクテルも同じではないかと「ベルモットハーフ&ハーフ」で試してみました。

このカクテルは、ドライとスイーツの2種類の香味付けワイン「ベルモット」を同量ずつ混ぜるのですが、ドライから入れた方が、よく混ざり断然おいしくなることが分かりました。分量に気を配っても、順番など気にしていなかった私にとって、飲食業の奥深さを知る経験でした。

(2015年4月7日掲載)

「施しは受けない」 米国で出会ったホームレスの美学

3杯目 アメリカン・ビューティー

 

15年前、知り合いのバーテンダーが米・サンフランシスコに開設するバーのアドバイザーとして、現地に滞在していた時の話です。

ホテル近くの路上でたばこを吸っていると、60~70代ぐらいのホームレスが近寄ってきました。たばこが欲しいのかと思って箱ごと差し出すと、ホームレスは「吸っているたばこを捨てろ。俺は持ち主がいないものを拾うんだ」と言ってきました。

たばこが吸いたいのは間違いないのに、「直接の施しは受けない」というホームレスなりの意地でしょうか。私は米国人の美学のようなものを感じ、「アメリカン・ビューティー」というカクテルを思い浮かべました。ブランデー、ベルモット、オレンジジュース、ザクロシロップなどをシェイクした甘くてさっぱりしたカクテルです。

(2015年4月14日掲載)

癖ある味わい イタリアの頑固な酒造り名人と重なって…

4杯目 グラッパ

今回は自慢話をさせていただきます。後輩がイタリア料理の現地修業をすることになり、「せっかく行くならロマーノ・レビに会ってこい」と送り出しました。

彼はイタリア特産のブランデー「グラッパ」造りの名人。そして、気に入らなければどんな有名人にも売らないという、この酒と同様に癖のある頑固者。何かの本で知り、レビさんの酒が熊本に入荷した際は必ず買っていました。

後輩は言いつけ通りレビさんに会いに行き、帰国した際、グラッパ2本を持参して来てくれました。しかもレビさんに私のことを話してくれたようで、ラベルに私の名前と店名のサインをしてくれていました。

レビさんは6年前に亡くなりました。2本は私の宝物として封を切らずに店に置いています。

(2015年4月21日掲載)

矢田さんへインタビュー

「スターズバー」で、矢田さんに、熊日紙面に登場した反響などを聞きました(2018年11月27日)。

――熊日夕刊「夜話カクテル」の第1弾で登場していただきました。反響はありましたか?

矢田さん 熊日を読んだお客さまたちから「話が面白かったよ」と言っていただきました。「新聞で紹介したあのカクテル作ってよ」と注文されるお客さまも結構いらっしゃいました。店を訪れたことがない方にとっても、店の雰囲気やイメージが伝わる、いいシリーズだったと思います。

――店名の由来を教えてください。

矢田さん 30歳で店を開業する前に、バーのアドバイザーをしていたアメリカ・サンフランシスコの人気レストランの名前が「スターズ」。現地では、とてもかっこいい響きだったので、オーナーに了解をもらって名づけさせてもらいました。仕事でとてもお世話になっている星野さんという方の一字をいただいた格好にもなりました。

――「スターズバー」は、どんなお店ですか?

矢田さん 一人でお越しになる方が多く、お客同士の出会いが楽しめる店だと思います。お一人でもリラックスできますので、気兼ねなくお越しください。

「スターズバー」 店舗情報

住所 熊本市中央区新市街1-11、サンホワイトビル2階

アクセス 熊本交通センターバス停または熊本市電・辛島町電停から徒歩2分
銀杏南通り、コンフォートホテル熊本新市街向かいのビル
営業時間 月~木曜 19時~25時
金・土曜、祝日前 19時~26時
定休日 日曜(ただし翌日が祝日の場合は営業し、翌日の祝日は休み)
電話 096-352-8085
システム カクテル800円~
チャージ500円(テーブル1000円) ※いずれも税別
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