熊本市船場町の居酒屋「郷土の味 梅鉢」  自慢は新鮮な魚料理

熊本市船場町の居酒屋「郷土の味 梅鉢」  自慢は新鮮な魚料理

ぶらり新町・古町

熊本市の新町・古町をさるく。町屋があり、歴史的な橋がある。履物店をのぞき、写真館を見てはいにしえの町並みを想像する。横浜からの単身赴任者には、物珍しいことばかり。ぶらぶらと、そぞろ歩きを始めた。

熊本城を望む坪井川沿いの路地に「郷土の味梅鉢」(熊本市中央区船場町)がある。

1977(昭和52)年から41年にわたって店を出している大将の長内正一さんは、東京の通好みが集まる麻布で包丁を握ってきただけに、腕と味は確かだ。魚の品定めに厳しいことがお客の信頼となって、週末にはカウンターはいっぱいになることが多い。

ぶりを調理する大将の長内正一さん

「よか、ぶり」。長内さんが、大分の佐伯から仕入れた天然ぶりをさばき始めた。「鱗を見れば、すぐわかる。明日はぶり大根もできる」。1メートル近いぶりから背の部分を刺し身にして出してくれた。ぷりぷりだ。

目の色を見極め

自慢の魚料理は、常連さんから「マスターの目利きが違うから」と褒められる。どんな魚も目の色と肌つやをしっかり見極める。カウンターの客は「今ではマグロなどの赤身を出す店が多いけど、昔は少なかった。開店当時からおいしい」と話す。

こだわりのエピソードがある。青森県出身の長内さんは、北海道の食材を熊本で出したいとずっと思っていた。ずいぶん前の話だが、知り合いに北海道に出張してもらい、タラバガニやケガニを空輸。新鮮な北の食材を熊本のお客さんに振る舞った。

肉じゃがで温まる

ほくほくの肉じゃが。だし汁を全部飲んでしまいそう

評判の肉じゃがは、ほくほくで体が温まる。豚肉だけではなく、タマネギも入っていて単身赴任者にはありがたい。

長内さんが作り方を教えてくれた。ジャガイモの皮をむき、浸して、一口大に切る。水にさらしてデンプンを流す。炒めて、出しを入れる。ぐずぐずと煮立ったらとろ火に。ジャガイモが浮いて「遊ぶようになったら」豚バラ肉とタマネギを入れる。砂糖と塩で味を見る。しょうゆで色づけしてできあがり。

江戸前ずし、トロの刺し身、肉じゃがに、からしれんこん、一文字のぐるぐると熊本の地元料理もたくさん出す。ついつい食べ過ぎてしまうほどだ。

麻布で修行

長内さんは、麻布の寿司店で修業時代に、将来のことを考え和食の店で勉強したこともある。寿司店が店を閉める午後11時から深夜の3時まで別の店で、無給で働いた。

「どんな食材にも心を込める。それでお客さんの笑顔が生まれる」と長内さんは口にする。だから、電子レンジを使うようなまねはしない。

出来合いの料理を出すようになったら職人はおしまいだと思っている。「自分で考えることができなくなるからね」。

妻の鈴子さん(左)と正一さん

妻の鈴子さんは「バブル景気の時は、行列ができて大変だった。今は少し減ったけど、これから近くの交通センターがまたできるから期待してます」と話す。下通りのスナックを切り盛りしたこともある。人当たりがいい。

夫婦は東京で出会い、長内さんは知り合いの紹介もあり鹿児島の料理店で1年ほど働いた。

縁あって、鈴子さんの故郷熊本で今の店が売りに出されていることを知って、思い切って自分の店を出すことにした。

この街は繊維業の隆盛で問屋街として栄えた。商人が行き交い、ホテル、旅館、料亭が軒を連ねた時代は去った。行き交う人の数は昔ほど多くはない。

それでも長内さんは店の場所を変えるつもりはない。ここでお客さんに育ててもらったからだという。「マスターに言いたいことを言える。けんかしたこともあるけど、信頼できる」と別の常連客はいう。

「裏熊本」

全国的にみると、最近は繁華街からちょっと離れた場所がとても人気のスポットとなることが多い。六本木の近くの麻布は気取った人たちが集まる。横浜駅と相鉄線平沼橋駅近くは最近になってしゃれた店が多くなり「裏横浜」と呼ばれ、若者が集まる。

新町・古町は元々は熊本城内にあり、商人でにぎわった地域。すこし失礼なのかもしれないが、昔っぽさが残っているだけに、今は「裏熊本」として、上通や下通にはないような雰囲気を味わえる楽しさがある。

長内さんは青森の中学校を卒業して、東京へ集団就職した。農機具の部品メーカーに入ったが3年ほどで会社は倒産。路頭に迷い、1日にラーメン一杯で食いつないだ時期もある。本のセールスマンもやったが、口べたで売り上げはさっぱりだった。寿司店の手伝いから料理の世界に入り、71歳で元気に働く。妻も息子も店を手伝ってくれている。

「店の評価は、味に尽きる」。長内さんはきょうも、背筋をぴしっと伸ばして、包丁を握る。

本日頂いた料理

  • 新鮮な刺し身
    刺し身は梅鉢のご自慢の品。たい、マグロの大トロ、オオキススキ、ヤイト、赤貝が並ぶ。オキススキはぷりぷりで、あまり手に入らないヤイトは脂がたっぷりのっている。ネタは季節によって変わる。1人前2000円から。
  • 鯖寿司
    大きくて食べ応え満点。お酒を飲んだ後のしめ料理や、お持ち帰り用に重宝されている。1本2500円。
  • カブラ蒸し
    マトウダイの味わいが豊か。750円。
  • 肉じゃが
    だし汁を全部飲んでしまいそう。350円。
  • 柿のしらあえ
    柿の歯ごたえが絶妙。500円。
  • レンコンまんじゅうの穴子包み
    レンコンをすり身にして卵の白身とあえる。枝豆を入れて天草の穴子で包み込む。750円。

本日頂いた料理が並ぶ。 上:肉じゃが、柿のしらあえ、鯖寿司 下:レンコンまんじゅうの穴子包み、新鮮な刺し身、カブラ蒸し

「郷土の味梅鉢」 店舗情報

住所 熊本市中央区船場町下1丁目12の3

アクセス 熊本市電 慶徳校前駅から徒歩3分
営業時間 17時~23時
定休日 不定休
電話 096-356-2535
メモ 1階はカウンター10席、テーブル12席、2階は24席
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