唐人町通りの履物店「武蔵屋」 丈夫で長持ち、職人芸

唐人町通りの履物店「武蔵屋」 丈夫で長持ち、職人芸

ぶらり新町・古町

熊本市の城下町、新町・古町の散策は楽しい。「さるく」って素敵だ。

呉服町、唐人町通りの履物店「武蔵屋」。明治から伝わる老舗のご主人、歌津十紀雄(85)さんに職人として最も気にしていることを聞いてみた。

「丈夫で長持ち」。歌津さんは、即答してくれた。簡潔でさっぱり、曲がったことはしないという職人気質を感じた。

武蔵屋

「武蔵屋」の主人、歌津十紀雄さん

竹の皮に抗菌効果

竹の皮を編んだ草履は、素足で履くと血行が良くなる気がする。抗菌効果もあるという。夏は涼しい。むれることはない。水にも強い。

遠方から取り寄せた竹は、白竹、ごま竹、虎斑竹とさまざま。鼻緒の素材や柄を組み合わせた、たくさんの種類の草履やげたが店内に所狭しと並ぶ。

草履を作る歌津さん

器用に草履を作る歌津さん。「花の唐人町だった」と昔話をしてくれた

歌津さんは、3代目。熊本工高の染色科を卒業して、岐阜の繊維会社に就職。羊毛の買い付けをしていたところ、熊本から電報が届いた。「ユカウエシンスイ」。白川が氾濫した熊本水害があり、実家が浸水してしまったという。

急いで熊本に戻り、母が営んでいた武蔵屋を継いだ。父の惣一さんはフィリピンで戦死していたので、自分が継ぐしかなかったという。

それからは、母の作業を見ては技術を学んだ。鼻緒の付け方は特に経験が必要。見よう見まねで経験を積んで、大阪の履物業界から職人としての認定証ももらった。

粋に履いて

粋な履き方は、つっかけた感じで、かかとが出るくらい。「足が出ると」というお客さんも多いが、それはやぼだよ、と伝えている。

武蔵屋の店名の由来は、祖父の惣七さんが埼玉の出身だったので、武蔵の国から来たという意味がある。宮本武蔵とは関係ない。惣七さんは、香港でホテルを営んで一財産を作った大物だったという。

歌津さんはかれこれ70年近く履物屋をなりわいにしている。この日もキリを器用に扱い、黙々と鼻緒をすげていた。それでも「近く、引退かな」と話す。

5年ほど前に、孫が継いでくれることが決まったからだ。職人らしく、弟子には仕事を教えない。「見て覚えるのが当然。お膳立てしても、いい職人にはならない」と歌津さん。

店内

店内は履物の宝箱のようだ

いい草履を作りたい

お店にはお客さんとの、いい思い出がたくさんつまっている。外反母趾の老齢のご婦人が草履を注文してくれた。親指が人さし指より中指側に大きく折れてしまい、靴が履けないという。鼻緒を柔らかい素材で作り、何度も締め付け具合を調整し完成。ご婦人は涙を流してくれた。

最近では横綱鶴竜にヤマブドウのツルで作った草履を作った。一つ一つが思い出だ。

小国杉のげたの台が仕入れにくくなったりと、お店は時代の流れには逆らえない。それでも、いい物を作りたいという意志は強い。人を見ればだいたいの足のサイズが分かる。「あんた足、小さかろ」。瞬時に見分けられ驚いた。

 

履物店「武蔵屋」 店舗情報

住所 熊本市中央区呉服町1丁目1

アクセス 熊本市電 呉服町駅から徒歩2分
営業時間 9時半~18時半
定休日 日曜、祝日
電話 096-352-6497

※店舗情報は取材時点のものです。最新の情報は店舗へご確認ください。

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