カット野菜のニーズ生かし販路拡大 グランプリに八代市のレタス農家 第59回熊本県農業コンクール

カット野菜のニーズ生かし販路拡大 グランプリに八代市のレタス農家 第59回熊本県農業コンクール

熊本県農業コンクール大会とは

熊本県には、「県農業コンクール大会」という農業県らしい一大イベントがあります。優れた農業経営や地域農業を支える取り組みを広く紹介することで、農業と農村を活性化させようと、1960年に始まり、2018年度は59回目です。このような農業関連のコンクールが県レベルで長く続いているのは全国的にも珍しいそうです。この大会で表彰された農業者は「トップファーマー」の評価を得て、農業と地域を支えています。

大会は、熊本県、農業団体、熊本日日新聞社の主催です。熊本日日新聞社はこの大会を積極的に報道しています。今回のすべての受賞者の横顔や農業への熱い思いは、2019年1月31日付朝刊の別刷り「第59回県農業コンクール大会特集号」でたっぷり紹介しています。

第59回熊本県農業コンクール大会特集号の表紙

今回のコンペは、農業経営のモデルとなる「経営体」、次世代を担う「新人王」、農業振興を核に地域活性化に貢献する「地域農力」の3部門。地域ブロックごとの審査を通過した32個人・団体が本選に進み、現地審査を経て、2018年12月に受賞者が決まりました。各部門の最高賞である「秀賞」受賞者には農林水産大臣賞も贈られます。

それでは、3部門の秀賞受賞者を紹介しましょう。

※年齢など記事中の数字は2019年1月31日時点です。

企業的な視点、綿密な生産計画、栽培に工夫 経営体部門秀賞の藤本さん夫妻

全体のグランプリに当たる「経営体」部門の秀賞は、八代市の露地野菜農家の藤本誠一さん(62)、妙子さん(58)夫妻が選ばれました。

受賞した理由は次の3点です。

  1. 企業的な視点を持った農業を展開していること
  2. 綿密な生産計画を立て、栽培技術を工夫するなどして、収益性、安全性の高い大規模な露地野菜栽培の経営を確立していること
  3. JAやつしろレタス部会長としてカット野菜工場などとの契約栽培により販路拡大に貢献していること

収穫したレタスを手にする藤本誠一さん、妙子さん夫妻=2018年12月21日、八代市

生産工程管理の国際認証を取得、対外的な信用アップ

藤本さん夫妻はレタスとジャガイモを中心とする大規模経営を展開しています。主力のレタスは、生産管理を徹底し、土壌分析を活用することで安定した質と量を保ち、カット野菜工場などに供給しています。「安定出荷で取引先の信用を得れば、価格交渉力は強まる」という考えです。

加入しているJAやつしろレタス部会は2012年、他産地に先駆けて生産工程管理の国際認証「グローバルGAP」を取得。4年間会長を務めた誠一さんは研修会に参加して積極的に情報を収集、部会員の意識の醸成に努めました。食品安全や環境保全など6分野にわたる最も厳しい認証を得たことで対外的な信用がアップ。カット野菜工場や飲食店への販路拡大につながりました。

従業員の多様な働き方も実現

8・4ヘクタールあるレタス畑では綿密な生産計画を立てています。その結果、作業人員の予想も容易になり、従業員はフレックスタイムや時短勤務など多様な働き方ができるようになったそうです。

品質面では、苗の栽培期間を通常より短縮することで風で倒れにくくしました。土壌分析に基づき、水素イオン指数(pH)や残留肥料量も厳密に管理しています。

誠一さんは、高齢化や働く女性の増加で、カット野菜の需要はさらに伸びると予測しています。「今後も良い品物を安定的に出荷していきたい」と話しています。

新規参入難しい酪農で高い技術 新人王部門秀賞の風間さん夫妻(菊陽町)

「新人王」部門は、菊陽町の酪農家の風間健太さん(37)、由加さん(24)夫妻が秀賞に輝きました。

非農家から酪農へ参入した風間健太さん(左)と妻の由加さん=2018年12月26日、菊陽町

風間さん夫妻は乳牛42頭を世話しています。ともに非農家出身ながら、新規参入が難しい酪農の世界に飛び込みました。

先に酪農の世界に入ったのは健太さん。大学時代にサークル活動で酪農を体験し、憧れを感じたそうです。民間企業勤務を経て、玉名市の酪農家の下で4年間研修。牛の管理や経営をひととおり学んだ後、2015年に廃業した酪農家から飼料畑や牛舎を借りて独立。由加さんと結婚後は二人三脚で経営しています。

先輩酪農家の教えを参考にしつつ、独自の考えも経営に取り入れています。熊本の夏は猛暑で乳量が減りがち。そこで、牛舎の屋根に断熱塗料を塗ったり、シャワーで水をかけて牛の体を冷やしたりと牛が快適に過ごせるよう工夫。一日の個体乳量は2017年度の熊本県平均を上回りました。

朝夕の搾乳のほか、えさの配合や牛舎の掃除など全ての仕事を二人でこなします。ともに熊本県外出身で不安もあるそうですが、「見ず知らずの土地で挑戦できたのは周囲の支えがあったから」と健太さん。「将来は就農を目指す若者を支援したい。それが自分なりの恩返し」と語っています。

通潤橋周辺の棚田守る 地域農力部門秀賞の白糸第一自治振興会(山都町)

白糸台地の棚田を守る活動を続ける白糸第一自治振興会のメンバー=2019年1月6日、山都町

最後に「地域農力」部門。秀賞に選ばれたのは、棚田保全に取り組む山都町(旧矢部町)の白糸第一自治振興会です。

「布田保之助翁への感謝の気持ちがあるからこそ、住民がまとまる」と草野昭治会長(65)は語ります。
白糸台地は江戸時代に惣庄屋・布田保之助が架けた通潤橋(国指定重要文化財)の恩恵を受ける地域です。昔から住民が協力し、通潤用水の維持管理を続けてきました。

契機は2008年。通潤用水と白糸台地の棚田が国の重要文化的景観に選定され、「棚田の景色の素晴らしさを再認識した」と草野さん。住民自身がもっと地域の魅力を知ろうとセミナーを開いて学び、発信を始めました。

棚田で生産した特別栽培米を「通潤橋水ものがたり」と名付け、商標登録。湯温消毒器や食味計を導入し、技術講習会を開いて品質を高め、大都市圏に橋と棚田の「物語」とともに売り込んでいます。

2013年に女性部が中心となって始めた「収穫感謝祭」は、新米のおにぎりや田舎料理が人気で毎年、多くの人でにぎわっています。青年部がガイドを務める棚田ウオーキングも好評です。

ただ、高齢化が進む集落で棚田を維持するのは簡単ではありません。2016年の熊本地震後はボランティアの力を借りて復旧に取り組んでいますが、まだ道半ば。獣害も深刻です。下田美鈴女性部長(60)は「白糸の棚田は全国に誇れるもの。でも、それを守るためには手間もコストもかかるということを知ってほしい」と理解を求めています。

CATEGORIES
TAGS