大正時代の気分味わえる「長崎次郎喫茶室」 コーヒーと本でのんびりと

ぶらり新町・古町

夕刻の長崎次郎書店

夕暮れ時の長崎次郎書店

電停「新町」を発車した路面電車がガタゴトと音を立てて通る。買い物客が行き交う。楽器店、精肉店、果物店が軒を連ねる。下町で生きる人々の息づかいを感じる。

大正建築の「長崎次郎書店」の二階にある喫茶室のアーチ窓から外を見やると自分が映画「ALWAYS 三丁目の夕日」のセットに入り込んだような気持ちになる。読書をすれば、もっと時代をさかのぼって大正時代の書生になった気分だ。

「長崎次郎書店」の二階

「長崎次郎書店」の二階にある喫茶室の窓から外を見ると市電が走っていた

1924(大正13)年にできたモダンな建物。緑色の瓦、茶色のタイルが、商家の雰囲気を伝える。

喫茶室を経営する長﨑圭作さんは「和風でも洋風でもなく、中華風でもない。さまざまな文明の要素が入っている。それでいてバランスが良く、見た目に落ち着くとお客様に評判です」と語る。

喫茶店

落ち着いた雰囲気の喫茶室。店内には本も置いてある

建築家・保岡勝也が手掛けた。三菱合資会社(三菱地所の前身)に入り、東京丸の内・赤れんがオフィス街の基本設計をした人物だ。「洋風小売商店の建て方」という本を出しており、長崎次郎書店もその流れにあるようだ。

書店は、もともと教科書の卸業から始まった。熊本県唯一の教科書卸売業者として、学校からの注文を受けた県内の書店に教科書を卸した。

お店に残る昔の帳簿を、4代目博良(故人)の妻、栄子さんに見せていただいた。大正4年の「郵便着品帳」には、「英文法研究」という本を1冊85銭で仕入れたと記入されている。大正5年の売上日記によると、5403円4銭の売り上げがあった。多くが県内の書店向けに教科書を卸した売り上げだったようだ。大正11年の「教科書注文書」には、国語の教科書の注文がしっかり記されていた。

88歳の栄子さんは「これらは二代目の時代の帳簿類だと思います。私は、この家で生まれ、11人の子どもを身ごもりました。本の販売で生きてこられました」と振り返る。

昔の帳簿をめくる栄子さん

戦時中は二階の窓から、出陣する兵隊の姿をみた。熊本空襲では焼夷弾が近くに落ちた。馬車で大量の教科書が熊本駅から運ばれてきた。

終戦直後は、教科書の自由化が一気に進んで、商品の発注が混乱した。昭和30年ころは70人ほどの従業員がいた。満州に出兵し、シベリア抑留も経験した夫は「日本ほど教育が行き届いた国はない」と口癖のように話したという。

書店は今も熊本を代表する書店の一つ。喫茶室では、無料でいくつかの本を貸し出してくれる。歴史を感じながら、コーヒーを頼んで、のんびりと絵本を眺めるのも、いい時間の過ごし方だ。

コーヒーと本

喫茶室では無料でいくつかの本を貸し出してくれる。コーヒーを頼んで、のんびりと絵本を眺める

開店は午前11時26分。「いい次郎」というごろに合わせた。

長崎次郎喫茶室

住所 熊本市中央区新町4丁目1-19 長崎次郎書店2階

アクセス 熊本市電 新町電停そば
営業時間 11時26分~18時
定休日 なし
電話 096-354-7973

※情報は2019年3月11日時点のものです。最新の情報は店舗へご確認ください。

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