バナナ一筋90年 九州でも珍しい熟成加工専門店「松田青果」

ぶらり新町・古町

「松田青果」の店頭に並ぶバナナ

「松田青果」の店頭に並ぶバナナ

五福小学校(熊本市中央区細工町)の前に九州でも珍しい、バナナの熟成加工専門店がある。「松田青果」。1926年創業で、90余年の歴史がある。前社長の松田清見さん(81)が「バナナ一筋」のお店の歴史を振り返ってくれた。

松田清見

お店の前で松田清見さん

お店は父・松田速見さんが19歳の時につくった。愛媛県出身の速見さんは学校を出た後に北九州の果物卸会社に就職。熊本で勤務するうちに一旗揚げようと独立した。「出身地の愛媛県は果物の産地だから、それを売りたかったのかなぁ」と清見さんは想像する。

当時の名称は「松田商店」で、台湾のバナナを熟成して販売していた。バナナは門司港から取り寄せた。戦争の時代になると、バナナの調達が難しくなり、国内のリンゴを売って食いつないだ。

終戦後は、台湾が日本の植民地ではなくなったため、社名を「松田青果貿易」に変更した。バナナは庶民の憧れの果物。よく売れた。熊本にもバナナ販売業者がたくさんあった。

お店の地下には、大きな倉庫の跡がある。今はふたが閉められているが、バナナを貯蔵し、よりよく熟成した時に市場に出荷していた。

清見さんが手伝いを始めたのは、九州学院高を卒業した56(昭和31)年。バナナが黄色いダイヤモンドとも言われた時代。清見さんは「職業を聞かれると『宝石商や』とこたえていた」と笑う。

東京五輪(昭和39年)ごろには、設備投資をして、バナナを空調で管理する加工室[かこうむろ]をいくつもつくった。

バナナの保管には14~15度程度が望ましい。色はオールグリーン、ライトグリーン、ハーフグリーン、ハーフイエロー、グリーンチップ、フルイエロー、スターと7段階がある。出荷時期を考えて、空調や温度を調整できるので、バナナの大量販売に拍車を掛けた。

今も使われている加工室に入ってみると、バナナの熟成した香りでいっぱい。出荷間近の商品だという。

加工室にあったグリーンのバナナ

加工室にあったグリーンのバナナ

年商は昭和50年前半に4億円近くあった。1年間で10万ケース(1ケースは約13キロで、バナナ5房ほどが入る)を売りさばいた。

その後バブル経済が崩壊し、取引先のスーパーが経営破綻する余波などで、厳しい時代も経験した。「倒産したスーパーとの取引を売上高の3割くらいにしていたから、どうにかやりくりできた」と振り返る。

10年ほど前に親戚にお店を譲渡した。最近は昔と違って店頭販売にも積極的に取り組んでいる。高地産バナナは身が引き締まって甘みが強い、低地産は柔らかく食べやすい。

ご自身にとってバナナとはどのような存在ですか?と聞いてみると「自分と一緒。ここで産声を上げて、成長し、生活してきた」と話してくれた。その上で「低地は水分がたくさんあって早く育つが、甘みはあまりない。種の力を引き出す厳しい環境の方が立派なバナナが育つ。バナナも人間も一緒です」と語る。

人類は生活を狩猟から農耕に生活を切り替える中でバナナの栽培に目を付けたらしい。カリウムが豊富で健康食として注目が集まる。価格の変動が少ない物価の優等生としても有名だ。バナナと寄り添った松田家の人々に感謝!

松田青果

住所 熊本市中央区細工町3丁目38

アクセス 熊本市電「祇園橋」駅より徒歩5分
営業時間 9時~18時半
定休日 日曜、ときどき祝日
電話 096-354-5255

※文中の年齢、店舗情報は2019年3月25日時点のものです。

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