雰囲気漂う洋風建築 熊本の経済支えた旧三井住友銀行熊本支店 

雰囲気漂う洋風建築 熊本の経済支えた旧三井住友銀行熊本支店 

ぶらり新町・古町

旧三井住友銀行熊本支店

市電が走る通り沿いにある旧三井住友銀行熊本支店=2019年1月24日撮影

市電呉服町電停の前に昭和モダンが色濃い、鉄筋コンクリートの建物がずっしりと構えている。1934(昭和9)年建築の旧三井住友銀行熊本支店だ。

同支店は2018年1月に移転したが、このかいわいはかつて都市銀行や地方銀行が立ち並ぶ金融街だった。地元からは「できるだけ今の形で保存し、活用してほしい」という声が上がっている。

三井住友銀行の前身の「住友銀行」時代に同支店で働いていた元女性行員たちと、支店の中を見学させていただいた。近隣住民のつてをたどって、協力いただけることになった方々だ。

重厚な扉を開けると、アーチ形の柱と吹き抜けの天井が目に入り、お堅い銀行のイメージとは裏腹に、開放感のある印象を受けた。市電が走る通りから日が差し込んでいたせいもあってか、行員たちが事務作業をこなし、来客が窓口で相談していたであろう往時の風景が目に浮かんだ。そろばんの音も聞こえてきそうだ。

アーチ形柱が美しい

アーチ形柱が美しい

「懐かしいわ」。70代のAさんが感慨深げにつぶやいた。支店は当時もハイカラな建物として有名だった。主に窓口業務を担当。受付カウンターの近くで、預金業務などを担っていたそうだ。

お札を数えるのはお手の物。扇形にお札を広げて5枚ずつ数える「横読み」と、左指を器用に曲げて、違った紙幣が紛れ込んでいないかないか確認する「縦読み」を目の前で披露してくれた。

現役時代、社内の資格試験などでお札を正確に数えるスピードを競ったという。黒いスカートと白いブラウスが定番の制服だった。

行員たちは昼ご飯を3階の食堂で順番に食べていた。毎月1日は、赤飯や尾頭付きの魚がよく出た。退職者は、最後のランチに希望のメニューを食べさせてもらえた。

窓口が閉まるのは午後3時だが、それからが大変な作業。入出金の数字合わせは緊張する。数字はだいたい午後4時ころにぴったり合って、鐘が鳴った。

60代のBさんは、1970年代に為替や総務を担当した。テレックスもこなし、本支店間の資金のやりとりをした。預金獲得のために、外回りもしたという。

大洋デパート火災(1973年)の際には、支店の周囲を消防車がひっきりなしに走り、サイレンの音がすごかったことが記憶にある。休み時間に3階で卓球するのが楽しみの一つだった。

市電の通りをはさんだ向かいには富士銀行があった。今は熊本市消防局の西消防署に変わり、昔の面影はない。ほかにもいくつかの銀行があった。

彼女たちの時代には、すでに銀行マンや商人がせわしなく行き来することはなく、ほとんど今のように静かな街になっていたという。

紺屋町四つ角

三井住友銀行の前身の「住友銀行」熊本支店=1975年8月13日撮影

「富士銀行が鶴屋の中に移転するとき、華やかな所に移ってうらやましいなと思った」とAさん。つい最近の出来事のようにも感じられた。

静かに地域の成長を願った支店、そこで働いた人々…。熊本県の経済を支えた一つの舞台だった。

旧三井住友銀行熊本支店

住所 熊本市中央区魚屋町2丁目1

アクセス 熊本市電 「呉服町」電停より徒歩1分
CATEGORIES
TAGS