バーテンダー「夜話」 栄通り「Bar KADOYA」編 「酒の文化伝えたい」 おつまみ、「和酒」にもこだわり

バーテンダー「夜話」 栄通り「Bar KADOYA」編 「酒の文化伝えたい」 おつまみ、「和酒」にもこだわり

熊本市のバーテンダーたちの「ちょっといい話、クスッとする話」を、それにまつわるお酒とともに紹介する「バーテンダー夜話(やわ)」シリーズ。今回は「Bar KADOYA(カドヤ)」(熊本市中央区花畑町)オーナーの川井一浩さん(43)に登場してもらいます。

このコンテンツは、熊本日日新聞夕刊で連載した「夜話カクテル」(2015年3月~2017年6月)を再構成し、インタビューや店舗情報などを加えました。

(記事中の情報は掲載時点、後段の店舗情報は2019年5月22日時点です。変更されている場合がありますので来店前に電話でご確認ください)

【ダッソ】熊本独特?のバーボンソーダ

ダッソ

ダッソ

熊本でしか通用しないカクテルの呼び名があります。それは「ダッソ」。化学薬品みたいな呼び名ですが、もちろんそうじゃありません。

私たちバーテンダーが「ダッド」と呼ぶ米国のバーボンウイスキーがあります。正式名は「オールド・グランダッド」。ダッソとは、そのバーボンのソーダ割りのこと。辛口ですっきりした味わいです。

なぜダッソになったかは、ダッドをこよなく愛する熊本のベテランバーテンダーが、真面目に言うと長いカクテル名を、だんだん縮めていったという説が有力です。ただ、お客が最初から言ったという説や、酒屋がこのバーボンをはやらせようと仕掛けたという説などさまざまあります。

私が熊本県外出身だから感じるのですが、ダッソは熊本独特の飲み物と言えるのではないでしょうか。

熊本地震の影響で夜の街が大変な時だからこそ、地元の方はもちろん、県外からのお客さまにも「ダッソ」「熊本」をアピールして、少しでも活気づけたいですね。

(2016年5月6日掲載)

【ロックスタイルのマティーニ】おいしい時間、長く楽しんで

ロックスタイルのマティーニ

ロックスタイルのマティーニ

初めて自分のバーを持って、3年になりました。実は私、バーテンダー歴はそんなに長くないんです。

新潟出身。もともと事務機器メーカーの営業マンで、24歳で熊本の営業担当になり、熊本のバーに通うようになりました。そして、好きが高じて、30歳から熊本の夜の街で働き始め、ダーツバーやスナックのチーフなどを経験。その後、現在の場所にあるバーの店長になりました。

店長3年目に近づいた時、姉妹店の先輩に独立を促され、1カ月後に「早く開店すれば」と念押しされました。その時、店を買い取ることを決めたんです。当時38歳。肝心なのは「職歴」ではなく「タイミング」だと思ったからです。背中を押していただいた先輩には感謝しています。

その先輩がつくるカクテルで特に好きなのがマティーニ。本来、短時間で飲むショートカクテルですが、私はロックスタイルで氷を入れてお出ししています。おいしい時間をなるべく長く楽しんでいただける工夫です。カクテルのスタイルも決まりはないんです。

(2016年5月13日掲載)

【バイオレットフィズ】 かつては甘め 女性の好みは時代とともに変化

バイオレットフィズ

バイオレットフィズ

30年前のバブル景気のころまで、女性がよく注文するカクテルの一つに「バイオレットフィズ」がありました。スミレの香りがする紫色のリキュールに、レモンジュースと砂糖、ソーダを加えます。色はきれいで味も甘めだったので好まれたのでしょう。

当時はバーテンダーの力量をみるために「フィズを頼め」と言われていました。混ぜる三つの技術「ステア」、「ビルド」、「シェーク」を使うからです。

最近の女性は、以前とは逆に甘いカクテルより、フレッシュフルーツを使ったさっぱりしたカクテルを好まれます。1人で来店される方も多く、最後のお客さまが女性ということも珍しくありません。

バーボンのストレートに、チェイサーがビールという豪快な方も。双方を同じグラスに入れれば、ボイラー作業員が一発で酔うために考案したとされる「ボイラーメーカー」というカクテルに。今の女性は強しですね。

(2016年5月20日掲載)

【スプリッツァー】 のど越しさっぱり 特製のつまみと一緒に

スプリッツァー

「オイルサーディンのパン粉焼き」とスプリッツァー

バーはお酒やカクテルだけではなく、フードメニューに力を入れている店も多いんですよ。街なかには、絶品のだし巻きやミートパイが出てくる有名店があります。

新潟の祖母が小料理屋をやっていたこともあり、私もつまみにはこだわります。いち押しなのが「オイルサーディンのパン粉焼き」。若いころ通っていた福岡にあるバーのメニューでした。オイルサーディンに、しょうゆと香辛料入り塩をかけて、パン粉をたっぷり載せてオーブンで焼くだけで簡単に作れます。

ただ、このレシピでお客さまが作っても同じ味にならないのが不思議。バーという非日常の空間が、“秘密のスパイス”になっているのでしょうかね。

ちなみに、この料理に合うのは英国のダイアナ元妃が愛飲していたといわれる「スプリッツァー」。白ワインと炭酸水でつくるのど越しがよく、さっぱりした味のカクテルです。

(2016年5月27日掲載)

川井さんにインタビュー

「KADOYA」で、川井一浩さんに、熊日紙面に登場した反響などを聞きました(2019年5月9日)。

――熊日夕刊「夜話カクテル」に登場していただいたのが、2016年4月の熊本地震から、1カ月もたたない時期でした。

川井さん 取材を受けたのは熊本地震の前。「地震があったので、掲載は見送りかな」と思っていたところ、熊日の担当記者さんが、「熊本の街を元気づけるメッセージを盛り込んで、掲載しましょう」と言ってくれて、うれしかったです。常連さんたちも、かなり読んでくれたようで、ダッソ、バイオレットフィズなど私が紹介したドリンクの注文が増えました。

――お店の特徴として、こだわっていることは?

川井さん バーは、お客さまに「酒の文化」をお伝えするところと思います。だから洋酒、カクテルにかぎらず、日本酒、焼酎といった「和酒」もどんどんお薦めしています。熊本のように、日本酒も焼酎も蔵元が多いというのは全国でも珍しいんですよ。それに、他県の芋焼酎しか置かない飲食店もあるためか、「2軒目は球磨焼酎を飲みたい」という県外のお客さまも少なくありません。

また、酒と食べ物の組み合わせも楽しんでもらいたいので、「鶏レバーのウスターソース漬け」いった手作りのおつまみも用意しています。イカの塩辛などの和食もウイスキーの水割りに合うんですよ。「へぎそば」(海藻入りのそば)、食用菊のおひたしなど、故郷、新潟の食材を使った料理も食べてほしいですね。

「KADOYA」お薦めの「鶏レバーのウスターソース漬け」

 

「KADOYA」のおつまみメニューの一部

――店名の由来を教えてください。

川井さん 栄通りと西銀座通りが交差する角にあるので「かどや」と思っているいる方がほとんどと思いますが、違うんです。「夜話 カクテル」でも触れましたが、新潟の祖母が小料理屋をやっていて、その店名が「かどや」。場所は角じゃなかったんですけど(笑)、その店名を掲げました。

「KADOYA」の入り口。店内は地下だが、入り口のドアは通りに面している

――バーに行き慣れていない方に、「バーでの心得」を。

川井さん サラリーマン時代、上司から「すし屋とバーを使いこなせるようになったら一人前」と言われましたが、バーは大人の振る舞いを学ぶところ。男性にはダンディズムを意識して飲んでほしいですね。それには、まず姿勢から。バーでは、飲み物をテーブルにお出しする時、お客さまから少し離れた場所に置きます。そこが姿勢を崩さずに、おいしく格好よくお酒を飲める位置。だからグラスやコースターを手元に引き寄せず、飲んでほしいです。

「カドヤ」の店内

「KADOYA」の店内

「Bar  KADOYA」店舗情報

住所 熊本市中央区花畑町13-17、甚兵衛ビル地下(栄通り、入り口は1階)

アクセス 熊本市電「花畑町」電停から徒歩3分、「辛島町」電停から徒歩7分
営業時間 18時~27時(金・土曜、祝日前は29時まで)
定休日 なし
電話 096-352-2722
システム 洋酒700円~、和酒(日本酒、焼酎)800円~、チャージ料金500円(いずれも税別)
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