東京、ニューヨーク経て熊本へ 「よそ者」引き付けた商店街の魅力 25歳の映画監督・松田拓真さん

東京、ニューヨーク経て熊本へ 「よそ者」引き付けた商店街の魅力 25歳の映画監督・松田拓真さん

【令和に咲く】新時代担う若者に同世代の記者がインタビュー

商店街の人々と会話する松田拓真さん

カメラを手に、映画に出演した商店街の人々と会話する松田拓真さん=熊本市中央区新町

熊本日日新聞社の「平成生まれ」の記者たちが、IT業界やアート、音楽など、さまざまな分野で挑戦を続ける、熊本県出身や在住の市井の若者を取り上げる連載「令和に咲く」。

今回は、ニューヨークや東京を経て熊本で活動する、熊本市の映画監督、松田拓真さん(25)を取材しました。記事は文化生活部の深川杏樹記者(23)、写真は宇土支局の西國祥太記者(29)が担当しました。

「商店街の人たち温かい」 撮影後も熊本で生活

「飛べ、新鳥町」。昨年12月、このキャッチコピーを掲げ、熊本市中央区新町の新鳥町商店街を応援する映画が生まれた。監督は、米ニューヨークや東京などで映像作品の制作に携わってきた松田拓真さん(25)。撮影のため来熊したが、「商店街の人たちが温かくて、居心地が良かった」と、映画が完成した今も滞在して活動を続けている。

首都圏でも地方でも 「どこにいても活躍できる」

新鳥町とは新町の旧名。松田さん自身、熊本に縁もゆかりもない。人生の大半を東京で過ごし、「もっと広い世界を見たい」と大学はニューヨークへ。大都会で暮らしてきた松田さんだが、「平成に重要視されてきた生き方の多様性はもっと進むと思う。首都圏でも地方でも、どこにいても活躍できる時代がくる」と、居場所に執着はない。来熊の誘いも快諾した。

松田拓真さん

米ニューヨークに滞在中、映像制作に携わる松田拓真さん(本人提供)

国際映画祭に動画配信企業の作品がノミネートされ、ドローンや仮想現実(VR)を使った作品が登場するなど、映画業界は変化の時代を迎えている。「新ジャンルは絶えず出てくる。やっていけるか、不安はもちろんある」と苦笑する。

ただ、「いつの時代でも、古き良きものを美しいと思う心は無くならない」と感じる。「古い町並みの懐かしさや人間味に触れ、時代に適応しつつも、古典的な魅力を持つ熊本を知った。もっといろんな角度で熊本を捉えたい」と意気込む。

いずれは世界へ 「みんなに愛される映画を」

動画の編集作業をする映画監督の松田拓真さん

愛用のパソコンに向かい、動画の編集作業をする映画監督の松田拓真さん=熊本市中央区新町のマンション内にあるシェアオフィス

現在は、映像制作やイベント企画を手掛ける新町の「Hub.craft」に所属。市などから依頼を受け、熊本のPR動画などを制作している。

3月にあった映画の関係者試写会で、「不思議な映画だねえ」という感想が引っ掛かった。分かりやすい表現と、自分が好む、アートでニッチな雰囲気のバランスが課題だ。

熊本で吸収したものを糧に、いずれは世界へ。「映像で語り、かつ一目で分かる作品が目標。みんなに愛される映画を作りたい」。静かな物言いに、情熱がにじむ。

(2019年6月14日付 熊本日日新聞朝刊掲載)

松田拓真(まつだ・たくま) 略歴

1993(平成5)年、埼玉県生まれ。小学3年から東京で育つ。大学卒業時に制作した映像作品は、国際映画祭で多くの賞を獲得した。熊本市中央区新町で撮影した映画は、今秋以降に公開予定。

新鳥町商店街を舞台に制作した映画の公式ホームページ

松田さんが今まで撮影してきた映像を集めた、自己紹介の代わりとなる動画。今回の新鳥町商店街で制作した映画のシーンも多く盛り込まれている

〈取材を終えて〉  熊本の良さ、再認識

松田拓真さんと深川杏樹記者

地元住民と話す映画監督の松田拓真さん(左)と深川杏樹記者=熊本市中央区の新町交差点

「周囲と足並みそろえる」日本的な雰囲気が合わないと、米留学を決めた松田さん。「個性が大事と言われるが、人と違うことをすると批判される。そこに一石を投じたい」

そんな松田さんも「周囲と合わないのは自分のせい」と責めた時期があったという。映画を撮る面白さを取り戻したのは、熊本で撮影した時だそう。知っていたはずの熊本の良さを、取材を通していくつも教えてもらった気がする。(深川杏樹)

CATEGORIES
TAGS