新鳥町商店街のラムネ店「二葉食品工業所」 瓶の玉の音に感じた昭和の景色

新鳥町商店街のラムネ店「二葉食品工業所」 瓶の玉の音に感じた昭和の景色

ぶらり新町・古町

旧町名を冠した「新鳥町商店街」(熊本市中央区新町)をぶらぶらすると、昔ながらのラムネ店を見つけた。夏だ、喉が渇いたと入ってみた。

二葉食品工業所。店内には瓶ケースが所狭しと並び、奥にはラムネを作る機械があった。ご主人の白石秀秋さん(74)と妻の邦子さん(73)が笑顔で迎えてくれた。

白石さん

二葉食品工業所の店内。ラムネを作るご主人の白石秀秋さん=熊本市中央区新町

「かつては1日に3000本つくったけど、いまは時々つくるくらいですよ。きょうも注文ないなあ」と白石さん。

昭和の終わり頃までは10人以上の人を雇ってラムネを大量生産しては、お店に配達する日々だった。しかし、ペットボトルの普及で瓶のラムネを飲む人が一気に減った。

それ以前から、海外の飲料メーカーが本格進出したり、自動販売機が普及したりと、ラムネを取り巻く環境は厳しさを増していた。景気の落ち込みが大きく響いた。

大口販売先の銭湯が次々になくなるなど時代の流れも感じてきた。

白石さんは、終戦直前に熊本市で生を受けた。中学卒業後、肥後犂(すき)のメーカーに就職。「犂先の溶接などを担当しました」

耕運機の普及で肥後犂メーカーの経営が傾き、石材店、プロパンガス店と職を替えてきた。

知り合いから、ラムネ店を経営してみないかと打診されたのは38歳の時。山登りで知り合い所帯を構えていた邦子さんと挑戦することにした。それからは二人三脚。白石さんがラムネをつくり、邦子さんが商品に混じり物がないかなどを点検し、出荷している。

妻の邦子さん

商品を点検する妻の邦子さん

さて、飲んでみる。ラムネの玉を押す。炭酸がわき出る。口にすると、案外甘くない。すっと飲める。「コロン、コロン」。飲むごとにラムネの玉が瓶の中で音を立てる。

白石さんは「メーカーによって味が違うんです」と明かしてくれた。水と炭酸、クエン酸、香料と甘味料。そのバランスは企業秘密だ。

白石さんがラムネ製造器に、瓶を次々と入れ込む手つきは慣れたもの。食用糊でラベルを貼ってできあがりだ。

ラムネを入れるケースは、1ケース30本入り。10年ほど前までは木製で1ケース40本入りだったが、重くて腰が痛くなるので、一回り小さいプラスチック製にした。

1本200円で販売。瓶を返却すれば100円を戻してくれる。

ラムネ

清涼感のあるラムネの瓶

ラムネをつくって30年以上。長男、次男、長女を育てた。部屋には、子どもや孫たちの写真がたくさん飾られていた。その中には22歳で亡くなった次男・岳夫さんの姿もあった。

岳夫さんは知的障害があったが、頑張り屋さんだった。スペシャルオリンピックス冬季世界大会のスピードスケートで日本代表になった。その後、がんを発症。家族や同級生らに惜しまれながら旅立った。両親がつくるラムネを飲むのが病床での楽しみで、天国に向かう間際まで続いていたという。

「二葉食品工業所」 店舗情報

住所 熊本市中央区新町4丁目6-9

アクセス 熊本市電「新町」電停より徒歩3分
電話 096-352-7914

※情報は2019年6月24日時点です。

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