「科学の在り方考えたい」 熊本県内初の米ミネルバ大合格 成松紀佳さん

「科学の在り方考えたい」 熊本県内初の米ミネルバ大合格 成松紀佳さん

【令和に咲く】新時代担う若者に同世代の記者がインタビュー

寄せ書き

海外の学生から寄せられた英語の寄せ書きを眺める成松紀佳さん=熊本市南区

熊本日日新聞社の「平成生まれ」の記者たちが、IT業界やアート、音楽など、さまざまな分野で挑戦を続ける、熊本県出身や在住の市井の若者を取り上げる連載「令和に咲く」。

今回は、今春宇土高を卒業し、熊本県内で初めて米ミネルバ大に合格した成松紀佳さん(18)を取材しました。記事は八代支社の中村悠(28)、写真は宇土支局の西國祥太(29)が担当しました。

宇土高で「副実像」研究に没頭

今春宇土高を卒業した成松紀佳さん(18)=熊本市=は、科学部で「副実像」の研究に没頭する高校生活を送った。そして、研究を通して考え始めた疑問がある。「人間は科学とどう向き合えばいいのか」。8月に入学する米ミネルバ大で取り組みたい、と思う。

副実像とは、6学年上の科学部の先輩らが発見した光が生み出す物理現象。一つしかないとされてきた凸レンズの実像が、他にも二つあることを突き止めた。「心霊写真の謎に迫った研究」とメディアからも注目された。

科学部の仲間

科学部の仲間と副実像を写す成松紀佳さん(後列右)。中央に緑色の光で小さなくまモンの副実像が映し出されている=宇土市(成松さん提供)

成松さんは、宇土中3年の頃からこの研究に参加。副実像がどこに現れるかという研究を重ね、数式化に成功した。部員らとレンズと像の距離を測定し、「ひたすらにめんどくさい」手計算を続ける日々。研究をまとめる時は、帰宅後もLINE(ライン)などで部員たちと毎晩のように話し合った。「責任感と向上心のある仲間だった」。家族よりも長い時間を過ごした。

研究の中で、副実像はレンズのコーティング技術が発達するとなくなることも知った。基礎研究の大切さを実感し、科学は決して利益のためではなく、真理を知りたいという人間の気持ちの延長上にあるように思えた。もう一つ感じたのは、「大発見は真理を追究しようとする過程にあるのかもしれない」ということだ。

大学の概念を覆したミネルバ大へ

ミネルバ大に関する本

成松紀佳さんが学んだ参考書、進学するミネルバ大に関する本

2014年創立のミネルバ大は大学の概念を覆した存在だ。キャンパスはなく、学生はサンフランシスコ、ソウルなど7都市を巡って寮生活をし、オンラインで講義を受ける。入試もオンラインで、「あなたは誰」「何を達成したか」などと問われる。成松さんは副実像の研究やボランティア活動などを書き込み、県内初の合格者になった。

大学では、世界中の人たちと議論を交わして科学の在り方を考えるつもりだ。「将来は科学研究と企業をマッチングさせる仕事に就きたい」。インドのベンガルールでの寮生活が楽しみという。「IT技術を武器にのし上がろうとする意志を感じるから」。心の中はわくわく感でいっぱいだ。

成松紀佳(なりまつ・のりか) 略歴

青空

青空を見上げる成松紀佳さん=熊本市南区

2000(平成12)年生まれ。「周りの期待に応える感じで」理系に進んだ。趣味はキャンプ。中1の頃に子ども会イベントの企画に携わったのをきっかけに、はまった。

〈取材を終えて〉 世界で活躍する若者に

中村悠記者

成松紀佳さん(左)と歩く中村悠記者=熊本市南区

4月、ミネルバ大の合格通知がメールで届いたのは、国立大の講義中だった。高校教諭の勧めで受験を決めたのは、国立大合格後の2月だ。何という身軽さ。オンラインのミネルバ大受験は、受験料も移動も不要。学生獲得のため大学は簡単に国境を越える。留学生という概念さえなさそうだ。「自分の中で国境のハードルが下がるのを体験したい」と成松さん。その活躍を世界が待っている。取材するこっちも、わくわくしてくる。(中村悠)

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