芸能界引退し故郷で子育て 「私の幸せ、家族のそばに」 元タレント・吉松千晴さん

芸能界引退し故郷で子育て 「私の幸せ、家族のそばに」 元タレント・吉松千晴さん

吉松千晴さん

球磨川を見渡せる鍋屋本館の屋上でたたずむ吉松千晴さん=人吉市

熊本日日新聞社の「平成生まれ」の記者たちが、IT業界やアート、音楽など、さまざまな分野で挑戦を続ける、熊本県出身や在住の同世代の若者を取り上げる連載「令和に咲く」。

今回は、元タレントの吉松(旧姓・富田)千晴さん(28)を取材しました。記事は文化生活部の豊田宏美(28)、写真は上杉勇太(29)が担当しました。

夢だった芸能界もアルバイト生活で悪循環に

球磨川沿い

長男・宗一郎ちゃんとよく散歩するという球磨川沿いで笑顔をみせる吉松千晴さん=人吉市

「芸能界には私の代わりはいるけど、家族には自分しかいないから」。元タレントの吉松(旧姓・富田)千晴さん(28)は2年前、生まれ育った人吉市に帰郷して結婚。昨年、長男宗一郎ちゃんを出産し、母親としての人生を歩み始めた。

江戸時代から続く老舗旅館「人吉温泉鍋屋本館」の長女。幼い頃から人前で歌ったり踊ったりするのが好きで、芸能界に入るのが夢だった。大学進学に合わせて上京。大学3年の時のミスコンテストでグランプリに輝き、芸能事務所にスカウトされた。

CMや映画、バラエティー番組などに出演。女優志望で「自分とは違う人になれるから演技の仕事は好きだった」。しかし、入れ替わりの激しい世界で、ひたすらオーディションを受けても落ちる日々。「事務所に入ればゴールと思っていたが、今思うとスタートだった。アルバイトをしないと生活できず、悪循環だった」と振り返る。

自分を必要としてくれる家族の近くへ 穏やかな時間過ごす

吉松千晴さんと長男の宗一郎ちゃん

吉松千晴さんと長男の宗一郎ちゃん=人吉市

2015年、旅館の女将(おかみ)だった祖母・富田千鶴子さん(77)が他界。初めて近い身内を失い、自分の人生を考え始めた。「両親だっていつかは亡くなってしまうという不安が募ってきた。自分を必要としてくれる家族の近くにいることが幸せなんじゃないか」。翌年の熊本地震でさらにその思いが強くなっていた。

17年に人吉へ帰郷し、高校の同級生で五木村役場で働く法政さん(29)と結婚。出産までの約1年間、実家の旅館で働いた。母で女将の富田峰子さん(58)の背中も見て、「お客さんの思い出の瞬間に携われるやりがいを感じた」が、生涯の仕事にするかどうかはまだ分からない。

東京ライフは華やかだったが、常に慌ただしく、精神的にも不安定だった。現在は顔なじみの多い地元で宗一郎ちゃんとの穏やかな時間を過ごし、それまでにない心の充足を感じている。「これまでは自分が主人公だったけど、今はこの子のために頑張りたい」。吉松さんは腕の中のわが子に優しいまなざしを向けながら、「幸せをありがとう」と語り掛けた。

(2019年7月19日付 熊本日日新聞朝刊掲載)

吉松千晴(よしまつ・ちはる) 略歴

鍋屋本館のロビー

鍋屋本館のロビーで母・富田峰子さん(右)と談笑する吉松千晴さん

1991(平成3)年生まれ。実家は人吉市の老舗旅館「人吉温泉鍋屋本館」。人吉高、桜美林大リベラルアーツ学群卒。大学3年生のミスコンテストグランプリを機に芸能界へ。東急電鉄のCMやものまね番組、ホラー映画などに出演。2017年に結婚し、芸能界を引退。現在は人吉で子育て中。

〈取材を終えて〉 家族の在り方、模索の時代

吉松千晴さん

吉松千晴さん(左)の出演する動画をスマートフォンで視聴する豊田宏美記者=人吉市

人吉総局員だった時に観光イベントで吉松さんを見かけ、話してみたいと思っていた。同じ年齢で、結婚や出産についての思いなど共感することも多かった。私の同級生にも出産が相次いでいる。母親になった友人たちを見ると、随分と大人に見えることがある。「今は子ども優先の生活」という吉松さんの言葉にも、出産ってこれほど女性を変えるのかと感じた。令和は私たちの世代が家族の在り方を模索する時代でもあるなと考えた。(豊田宏美)

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