本と人、偶然の出会いを演出 古書店「古本タケシマ文庫」店主 菅原龍人さん

本と人、偶然の出会いを演出 古書店「古本タケシマ文庫」店主 菅原龍人さん

【令和に咲く】新時代担う若者に同世代の記者がインタビュー

菅原龍人さん

大量の古本に囲まれて笑顔をみせる菅原龍人さん(魚眼レンズ使用)=熊本市中央区の古本タケシマ文庫

熊本日日新聞社の「平成生まれ」の記者たちが、IT業界やアート、音楽など、さまざまな分野で挑戦を続ける、熊本県出身や在住の同世代の若者を取り上げる連載「令和に咲く」。

今回は、古書店「古本タケシマ文庫」店主の菅原龍人さん(30)を取材しました。記事は小国支局の宮﨑翼記者(29)、写真は上杉勇太記者(29)が担当しました。

9.5坪の店内に4千冊 幅広い本を扱う

古本タケシマ文庫の看板

古本タケシマ文庫の看板

幅広く本を扱っていると、何げなく開いた本に夢中になることがあるという。ハンセン病の歴史を扱った本、森の生態系に関する本もそうだった。「あまり興味はなかったのに不思議です」。熊本市中央区坪井の住宅街にある「古本タケシマ文庫」。2016年7月、インターネットでクリックするだけで本が届く時代に、古書店を開いたのは菅原龍人さん(30)=同市=だ。

9.5坪の店内に約4千冊。レジの回りに演劇評論や戯曲の本が多いのは、10年から4年ほど暮らした東京で演劇の裏方に携わったことが原因かもしれない。細かいジャンルに分けた陳列はしない。立ち寄ってくれた人たちに、本との偶然の出会いを楽しんでもらう演出だ。

14年に帰熊。家業の広告業を手伝ったが、接客はもっぱら父親だった。もっと人と触れ合いたいと考えているうちに、東京で付き合っていた女性の「古本屋やったら楽しそうだよね」という言葉を思い出した。

実店舗での対面販売にこだわり 「古本屋が好きだから」

菅原龍人さん

古本を整理する菅原龍人さん

入手困難な本でも見つかることがある、そんな古書店がもともと好きだった。15年秋、上通であった一般参加型の古本市に出店してみた。自宅に眠る本に再び光が当たることが面白かった。

タケシマ文庫では、自分からは客に話し掛けない。本選びの邪魔をしないためだ。一方で、常連客との雑談から世界が広がることもある。最近、狂言を習い始めたことも雑談がきっかけだった。開店から丸3年。さまざまなジャンルの本と人に出会える日々が続く。この商売の楽しさが分かった気がしている。

とは言っても、店頭販売だけでは稼げない。オークションや通信販売のサイトでも本をさばく。店頭での価格は、ネット上の価格や送料を考えながら慎重に決める。

実店舗での対面販売には、これからもこだわっていくつもりだ。「理屈ではなく、単純に古本屋が好きだからとしか言えない。実際に手に取ってみて分かる本との出会いを求めている人がいる限り、続けていこうかな」。本に囲まれて仕事ができる幸せをかみしめるように笑った。

(2019年8月2日付 熊本日日新聞朝刊掲載)

菅原龍人(すがはら・りゅうと) 略歴

菅原龍人さん

1989(平成元)年生まれ。高校では演劇部に所属し、短大では演劇を専攻した。月1回の朗読会など、イベント企画にも取り組む。来年1月には「第2回大山鹿古本市」を開催予定。

〈取材を終えて〉 仕事通し興味の幅広がる

宮﨑翼記者

店内に並べられた古本を紹介する菅原龍人さん(右)と、話を聞く宮﨑翼記者

ジャンルも発行年代も異なる本を前に、業者市などで得た知識を総動員して値段を決める。買い取りはいつも真剣勝負。だが、一番面白いという。もともと演劇や民俗学の本が好きだった菅原さん。しかし持ち込まれる本が得意分野とは限らない。それでも「意外な本に好奇心がくすぐられることがある」。仕事を通して、興味の幅が広がる。菅原さんにとっても、ここは「出会いの場」なのかもしれない。(宮﨑翼)

古本タケシマ文庫

住所 熊本市中央区坪井4丁目4-27

アクセス 国道3号・浄行寺交差点から西へ約100メートル
営業時間 13時~19時
定休日 水曜
電話 090-8353-7662
公式HP https://takeshimabooks.shopinfo.jp/
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