「帯のように細く長く」 着物の歴史や文化を伝える呉服店「帯屋」

「帯のように細く長く」 着物の歴史や文化を伝える呉服店「帯屋」

老舗とともに

熊本の街の移り変わりを、昔から見つめ続けてきた老舗。店と街の歴史、代々伝わる商売の心得や新たな挑戦について、店主に語ってもらう企画「老舗とともに」。今回は、呉服店「帯屋」店主に語ってもらいました。(熊本日日新聞社読者・NIEセンター 三國隆昌)

※2019年7月16日付熊本日日新聞夕刊掲載。情報は掲載日時点のものです。

江戸時代創業 細川家御用商人の流れくむ

帯屋の社長たち

153年の歴史がある帯屋の社長に今年就任した宮﨑雅士さん(右)、父親で会長の潤治さん、母親で前社長の順子さん=中央区下通の「よそほひの帯屋」

下通アーケードと城見町通りの角にある呉服店「帯屋」(熊本市中央区下通、屋号「よそほひ(よそおい)の帯屋」)は、熊本藩主・細川家の御用商人だった帯屋惣右衛門の流れをくむそうです。創業200年以上との説もありますが、はっきりしません。ただ、江戸時代であることは間違いありません。

創業家で現会長の宮﨑潤治さん(87)は四十数年前、亡くなった祖母の引き出しからボロボロの書類を発見。帯屋の暖簾(のれん)の発注書で、そこに記されていた慶応2(1866)年の日付を「創業」に定めることにしました。そこから数えると今年で153年になります。

“創業の地”同区中唐人町から、大正15(1926)年に現在地に移転。昭和20(1945)年7月の熊本大空襲では店舗を焼失しました。焼け跡のバラックで営業再開し、さらに木造3階建てを新築しましたが、同28年6月の熊本大水害では1階が完全に浸水。現在の鉄筋地下1階地上5階建てのビルは同46年に建てられました。

着物業界には厳しい時代に

帯屋の店頭

華やかな着物や浴衣が並ぶ「よそほひの帯屋」の店頭

「(現在のビルが建った)50年前と違って、今は着物業界には非常に厳しい時代です」。そう話すのは帯屋の宮﨑雅士社長(55)。父潤治さん、母順子さん(79)の後を継いで今年4月に就任しました。

「帯のように細く長く」が店名の由来だと3代目店主の祖父繁雄さんから聞いていた宮﨑社長。「次の節目である創業155周年、160周年へとつなぐのが自分の責務」と話します。

昔は、暮らしの中で分からないことがあれば呉服店に聞いたそうです。お呼ばれに行く時は、どんな衣装を着て、どういうふうにあいさつをしたらいいのか。お返しにはどんなものがいいのか。「いわば、町の世話役だった。そういうことをしなくなったのが、業界の衰退の始まりだったんじゃないでしょうか」

社員教育に力 勤続55年の社員も

和服の布地

和服の布地

日本にはなぜ着物を着る風習があるのかなど、歴史や文化を伝えていくことは呉服店の使命だと宮﨑社長は考えます。そのためにも社員教育には力を入れているそうです。

帯屋の経営理念には「地域のお客様に喜ばれる提案のできる店創り」という文言があります。「お客さまはもちろんですけど、やっぱり社員さんあってのお店。信頼され続けるために、皆さんには育ってほしい」

そんな宮﨑社長が誇りに思うのは、勤続55年の社員がいることだそうです。3人の“40年選手”のほか社長の両親も店頭に立ちます。「『年寄りをこき使って』と言われそうですけど、働いていただいている間は健康でいられると思うんですよ」

LED照明、浄水器、宝飾品 生き残りへ多角経営

訪問着

帯屋で扱っている盛夏礼装用の絽(ろ)の訪問着

宮﨑社長は東京の大学を卒業後、米ハワイ州に留学し、同州の不動産取引士免許と日本の宅建の資格を取得。大阪での不動産会社勤務やラーメン店経営をへて、25年前に帯屋に就職しました。

現在は若い頃の経験を生かして、LED照明の販売を社業の一環として行っています。蛍光灯生産が縮小される中で受注を増やしているそうです。さらに自社製作のオリジナル浄水器や宝飾品も扱います。宝飾品は加工から手掛け、「既存の宝石店さんが扱わないような品に工夫をしています」。いずれもたった1人でやるので超多忙なのだそうです。

「帯屋という店を絶対に残していくためには、着物一本ではなく別の手も打たないと」と宮﨑社長。「ただ、業態は変わっても、着物文化が日本に存在する限りは残していきたい」

会長の潤治さんも熊本で最初にレンタカー業を営んだほか、旅行代理店「日専連ツアーズ」の創立に携わり社長を務めた人物。多方面で奮闘する雅士さんについて「そういうところが似てるなと思う」と笑顔で話しました。

「帯屋」のあゆみ

1866(慶応2)年 暖簾の発注書にこの年の日付があったことから、「創業」に定める。当時は中唐人町にあった
大正時代、中唐人町にあった帯屋
1868年 明治政府が成立
1926年 下通沿いの現在地に移転
1945年 熊本大空襲で店舗焼失。焼け跡にバラックを建てて営業再開する
下通に建った“バラック”の帯屋
1950年 木造3階建ての店舗を建築
下通に建った木造3階建ての帯屋
1953年 「6・26」熊本大水害で1階が浸水

「帯屋」店舗情報

住所 熊本市中央区下通1丁目4-12

アクセス 熊本市電「通町筋」電停より徒歩3分
営業時間 10時半~19時
定休日 水曜(1月、3月、7月、8月は定休日なし)
電話 096-354-6221
公式HP http://obiya.co.jp/
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