地域の〝掛かり付け医〟 顔の見える関係大事に 新町いえむらクリニック・家村院長に聞く

地域の〝掛かり付け医〟 顔の見える関係大事に 新町いえむらクリニック・家村院長に聞く

ぶらり新町・古町

この街の人々の命と健康を守る掛かり付け医がいる。熊本市電の蔚山町電停近くにある新町いえむらクリニック(熊本市中央区新町)の家村昭日朗院長(57)だ。

院長

新町いえむらクリニックの家村昭日朗院長=熊本市中央区

「きょうは、〝もしもし〟をします」。家村院長が上半身裸の園児たちに元気よくあいさつした。医院のすぐ近くにある一新幼稚園。園医としての活動が始まった。列をなした子どもたちの目や口、喉を次々に確認しては貧血やへんとうせんの兆候がないかをチェック。聴診器で心音と呼吸音を調べ、背中を触って脊柱側わん症の疑いがないかも診察する。

「しっかり健康で幼稚園の生活を送れるかを診ています」と家村院長。

一新幼稚園

一新幼稚園での定期診察

院長自身もこの幼稚園の卒園生。当時は約300人の園児がいたが、いまは40人ほど。少子化は進む。「なんとしても存続してほしい」との思いもあって10年以上、園医を務めている。

2016年の熊本地震の際は、多くの住民が避難した一新小学校に駆けつけ、感染症の診療、薬の服用の指導などに当たった。高齢男性がインフルエンザにかかった時は、速やかに教室に隔離し、まん延を防いだ。エコノミー症候群を発症した人もいたが、早期対応で大事に至らずに済んだ。

「災害時は水が自由に使えない。手を洗えない中で感染症を最低限に抑えることがとても難しいと思いました」と振り返る。

日頃、この街に根を張る医者としては常に「患者一人一人の、その人らしさ」を考えている。医師は時として命に関わる診断、治療を迫られる場合がある。ただ、「治療できない病気はない。一方で治療しないという選択肢もある」。できるだけたくさんの道を示すことが大事だと思っている。

専門は肝臓だが、仕事は総合診療医だ。あらゆる患者が訪ねてくる。往診や訪問診療もこなす。

最近は、大きな病院や地域の他の病院とも連携を深めている。例えば、脳梗塞の疑いがある患者から電話がかかってくる場合がある。速やかな判断が患者のその後の人生を左右しかねない。即座に救急車を呼ぶように指示し、搬送先の大病院に患者のカルテをインターネットで送る―。迅速な対応に救われた患者の1人、高齢男性は「先生のおかげで今がある」と感謝する。

新町いえむらクリニック

新町いえむらクリニック

生まれ育った新町には、多くの顔見知りがいる。患者の人生観や生活習慣も診察や診断の際の判断材料になるが、最近はマンションが多くできて、新しい住民も増えた。

子どもの頃は近くの路地で缶蹴りをして遊んだ。10歳ほど年上の子どもたちとも遊んで、社会性を学んだ。当時に比べ外遊びをする子どもが減っている。因果関係は明確ではないが、「落ち着きがない子どもが増えている気がする」と園医としても心配する。

地域のコミュニティーを守ろうと、地域のお祭りや保護者の健康教室にもできる限り顔を出すようにしている。〝地域の掛かり付け医〟として、「顔が見える関係」の大切さを痛感しているからだ。

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