郷土の歴史・伝承伝えたい 神職と市職の傍ら研究・発信 佐伊津神社禰宜・山田怜央奈さん

郷土の歴史・伝承伝えたい 神職と市職の傍ら研究・発信 佐伊津神社禰宜・山田怜央奈さん

【令和に咲く】新時代担う若者に同世代の記者がインタビュー

阿弥陀寺

「阿弥陀寺」の前で歴史を説明する山田怜央奈さん=天草市

熊本日日新聞社の「平成生まれ」の記者たちが、IT業界やアート、音楽など、さまざまな分野で挑戦を続ける、熊本県出身や在住の同世代の若者を取り上げる連載「令和に咲く」。

今回は、天草市の佐伊津神社禰宜(ねぎ)の山田怜央奈さん(26)を取材しました。記事と写真は八代支社の益田大也(27)が担当しました。

高校2年で跡継ぐ決心 「神社絶えれば町がバラバラになる」

漁港

阿弥陀寺から見下ろす佐伊津町の家々や漁港

漁港と家々を見下ろす丘の木立に、小さな寺がたたずむ。天草市佐伊津町の阿弥陀寺。無人だが手入れの行き届いた境内は、住民のよりどころであることをうかがわせる。

「古くは天草の総鎮守と呼ばれ、天草四郎率いるキリシタン一揆勢も恐れて襲わなかったそうです」。佐伊津神社の禰宜(ねぎ)山田怜央奈さん(26)=同町=がその歴史を語る。神職を務めながら、町の歴史や伝承を研究・発信してきた。

市役所から北に5キロ、人口約3千人。佐伊津町は海の向こうに雲仙・普賢岳を望む漁師町だ。その中心部に位置する佐伊津神社は江戸初期に創建。山田さんは宮司家の長男に生まれた。

「佐伊津は度重なる大火で多くの史料が焼失しました。歴史を調べることが恩返しになるかなって」。古文書調査や住民の聞き取りを重ね、郷土史愛好グループ「天草レキバナ」で発表。町歩きの案内役も務める。神社を継ぐ決心をしたのは天草高2年の秋。例大祭で初めて宮司の父康人さん(56)を手伝った。神殿に手を合わせ、子どもの獅子舞を笑顔で眺める人々―。「神社が絶えれば町がバラバラになる」。県外の神道系大学に進み、卒業後は阿蘇神社(阿蘇市)で1年半修行した。

「御朱印巡り」発案 「歩いて豊かな人情に触れてほしい」

昨年7月に帰郷し、町に点在する17の神社やほこらを巡る「御朱印巡り」を発案。これほど密集する地域は珍しいと評判だ。多くは無人のため御朱印は佐伊津神社でまとめて授けるが、「実際に歩いて豊かな人情にも触れてほしい」と思う。

御朱印

佐伊津神社が授ける御朱印

この春から平日は市職員として働く。生活のためだが、「全体の奉仕者である公務員と人々の幸せを祈る神職には、通じる部分がある」と感じている。

町は少子高齢化が進み、母校・佐伊津中は9年前に閉校になった。同級生40人のうち地元に残ったのは十数人。「好きなことをやり切ったら帰ってきてほしい」。そう願いながら、ふるさとに息づく祈りの歴史を見つめ続ける。

(2019年8月23日付 熊本日日新聞朝刊掲載)

山田怜央奈(やまだ・れおな) 略歴

山田怜央奈さん

佐伊津神社の拝殿を背に立つ山田怜央奈さん=熊本県天草市

1993(平成5)年生まれ。天草高-皇学館大(三重県)卒。阿蘇神社で修行していた2016年、当直中に熊本地震本震に遭遇し、楼門の倒壊を目の当たりにした。19年4月に天草市役所入庁。

〈取材を終えて〉 語り継ぐ思い、頭が下がる

弥勒神社

佐伊津町の弥勒神社に参拝する山田さん=天草市

「これは仏教の弥勒菩薩(みろくぼさつ)を祭る神社。全国的にも珍しい」「この山の上には城があったんです」。私の古里でもある佐伊津町を山田さんと歩いた。知らないことばかりだった。「趣味みたいなもの」と山田さんは笑うが、先祖が大切にしてきたものを語り継ごうという思いに頭が下がる。

進学や就職で、多くの若者が二十歳を前に天草を出る。私もそうだった。「やりたいことがあるんだから仕方ないですよ」と山田さんは話す。「でも故郷を忘れてほしくない。だから、フェイスブックで神社や町の行事を積極的に発信しています」

住吉大明神

佐伊津町の岬に立つ住吉大明神

氏神の神職として、公務員として。山田さんのような地元愛あふれる青年が、これからの天草を盛り上げてくれるはずだ。私も天草の外から何か後押しできないか-。そう考えずにいられなかった。

御朱印巡りは雑誌にも掲載され、市外から訪ねてくる人もいるという。詳細は同神社のフェイスブック(https://www.facebook.com/saitsujinja/)で紹介している。(益田大也)

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