
御船町の若きリーダー 熊本県内初の平成生まれ議員・井藤はづきさん
【令和に咲く】新時代担う若者に同世代の記者がインタビュー

御船町議会で初めての一般質問を終え議場に立つ井藤はづきさん=御船町
熊本日日新聞社の「平成生まれ」の記者たちが、IT業界やアート、音楽など、さまざまな分野で挑戦を続ける、熊本県出身や在住の同世代の若者を取り上げる連載「令和に咲く」。
今回は、熊本県内初の平成生まれ議員、井藤はづきさん(28)を取材しました。記事と写真は都市圏部の志賀茉里耶記者(23)が担当しました。
失われる町の活気 このままでいいの? 出馬を決意

初めての一般質問に立った井藤はづきさん
今月13日の御船町議会一般質問。一人の女性議員が登壇した。4月の町議選で初当選した井藤はづきさん(28)。県内初の平成生まれの議員だ。
初めての一般質問。緊張で心臓が高鳴り、「少しでも早くこの場から退きたかった」。
小学校の英語教育や公共交通の在り方などについて執行部をただした井藤さん。終了後、先輩議員からねぎらいの言葉を掛けられ、ようやく緊張がほどけた。「最初にしては頑張れたかな。次はもっと踏み込んだ質問をしたい」

御船町議会の議場で井藤さんの一般質問に答える執行部
岐阜県の大学を卒業し、2014年4月、両親が住む御船町に帰郷。母親が経営する福祉事業所や小学校で子どもの教育支援に携わった。海外でのワーキングホリデーも考えていたが、将来への明確な青写真はなかった。
そんな時、出馬要請が舞い込んだ。2月中旬のことだ。地元の町議が県議選にくら替えし、区長らが後継者を探していた。
「なぜ自分に…」。政治に対する関心はあまり無かった。ましてや政治家になろうなんて。「そんな責任重大な仕事、私にはできません」と固辞した。
御船町で暮らし始めて6年目。少子高齢化や人口減少に伴い、町の活気が徐々に失われている気がしていた。
このままでいいの? 芽生えた疑問と周囲の強い後押しもあり、出馬を決意した。
町を知れば知るほど感じる魅力 「若い人がもっと暮らしやすく」

池田浩二御船町議会議長(右)と
結果は並み居るベテランを抑えてトップ当選。だが、いざ町議になると、議会の仕組みや流れはおろか町の状況も分からないことだらけ。町の課題を知ろうと、地元の観光ガイド育成講座やイベントなどを駆け回った。
そうして町を知れば知るほど、郷土の自然や歴史、文化に魅力を感じ始めた。「この環境を生かして、若い人がもっと暮らしやすい町にしたい」
有権者が寄せる期待は大きなプレッシャーでもある。でも「議員としての自分と一緒に町も成長させよう」と決めた。託された思いと、若い世代のリーダーとしての覚悟を胸に。
(2019年9月20日付 熊本日日新聞朝刊掲載)
井藤はづき(いとう・はづき) 略歴

児童指導員として子どもの話に耳を傾ける井藤はづきさん
1991(平成3)年、熊本市生まれ。熊本高、岐阜大応用生物科学部卒。御船町議会広報編集特別委員会委員長。母親が経営する福祉事業所で児童指導員を務める。8人きょうだいの長女。
〈取材を終えて〉 若者と政治の懸け橋に

議会終了後、志賀茉里耶記者(左)の取材に応える井藤はづきさん
今、地方議会は議員のなり手不足に直面している。7月の参院選の取材では、多くの若者が「誰に投票しても変わらない」「政治について考えたことがない」と語った。井藤さんは政治家という自分でも思いがけない選択をしたが、政治に関心がない若者たちと同じ感覚を持つ同世代の一人。「困っていることを何でも聞かせてほしい」と井藤さん。政治と若者の懸け橋となってくれることを願っている。(志賀茉里耶)