伝統の技と先端技術を融合し、弓具開発 矢の生産で国内トップシェア 大津町の「フェザークラフト」 

伝統の技と先端技術を融合し、弓具開発 矢の生産で国内トップシェア 大津町の「フェザークラフト」 

熊本の街の移り変わりを、昔から見つめ続けてきた老舗。店と街の歴史、代々伝わる商売の心得や新たな挑戦について、店主に語ってもらう企画「老舗とともに」。今回は、大津町杉水にある弓具の製造卸販売会社「フェザークラフト」(屋号は平成弓具)の高橋平(たいら)社長(61)に語ってもらいました。(熊本日日新聞社読者・NIEセンター 三國隆昌)

※2019年9月17日付熊本日日新聞夕刊掲載。情報は掲載日時点のものです。

先祖は熊本藩主・細川家のお抱え矢師

「フェザークラフト」は、弓道用の矢の生産で国内トップのシェアを誇ります。伝統の技を基盤に、先端技術も取り入れた弓具製造に取り組んでいます。

社長の高橋平さんの先祖、高橋寿平は1819(文政2)年に「重幸」の号で矢師を創業。熊本藩主・細川家のお抱えとなりました。「当時はお殿様の弓の練習場が京町にあり、すぐ横にうちの初代が住んでいたそうです」と平さん。

高橋平社長

「新しい技術を取り入れて進化することも、伝統継承の在り方」と話すフェザークラフト(平成弓具)の高橋平社長=大津町杉水

その直系に当たるのは熊本市中央区九品寺の「高橋弓具老舗」。平さんは父・民人さんの代で分家した「タカハシ弓具店」(同大江)で育ちました。そこからさらに独立して1995(平成7)年に設立したのがフェザークラフトです。

同社は年間約10万本の矢を生産。本社工場で従業員たちが矢を製作する風景は、一見したところ、伝統的なものづくりのイメージとはいくらかギャップがあります。

プラズマ加工やレーザーでの成型など業界初を次々開発

金属製の機械の筒先からカーボン製のシャフト(矢竹)に向けて光の束が照射されます。「これは、矢竹の表面をプラズマで加工する装置です」。機械音が響く中、平さんが解説してくれました。

プラズマ加工する装置

矢のシャフトの表面をプラズマで加工する装置

矢羽根を付ける部分をプラズマで表面処理することで、接着の強度が格段に増すそうです。航空機や自動車などの製造に使われる技術を、同社が矢作りに初めて転用。5年前に特許を取得しました。

ほかにもレーザーを使った矢羽根の成型など、業界初の技術や装置を次々に開発。こうした先端技術の動向を学ぶため、平さんは業種を問わずさまざまな工業機械展示会に出向いているそうです。

「戦国時代に、弓矢が戦場で壊れたら勝負にならないでしょう。壊れない弓、切れない弦、高精度の矢を作るために昔から研究や工夫がされてきたんです」

祖父、父と続く開発の遺伝子

中学生の頃から祖父の民平さんに矢づくりを教わり、高校卒業後に父の下で職人となった平さん。伝統の継承とは、昔ながらの技をそのまま受け継ぐことだけではなく、新しい技術を取り入れながら進化することでもあると考えます。

矢を検品する職人

矢を検品し、矢羽根の形を整える職人。最後は熟練の手技で仕上げられる

大正時代の新聞記事に、祖父・民平さんが当時最先端のモーターを使って矢竹を削る装置を作ったと書かれていたそうです。また、父の民人さんは和弓としては国産初のアルミ製矢竹を開発した人物。「やっぱり遺伝子なのかな」と平さんは笑顔で話しました。

伝統的なワシ・タカ模様を本物そっくりに印刷 高精度のプリント技術

匠の矢羽根

ワシやタカの羽根模様を本物そっくりに印刷し、伝統様式を復活させた「匠の矢羽根」

弓道愛好家にとって矢の“顔”になるのが矢羽根です。武士の時代はワシ・タカの羽根を最上品として使いましたが、現在は入手が極めて困難。食用に飼育されたシチメンチョウの羽根が一般に使われています。

フェザークラフトは米国から輸入したシチメンチョウの真っ白な羽根に、伝統的なワシ・タカの羽根模様を本物そっくりに印刷できる高精度のプリンターを導入。今年製品化し、自社製品のほか全国の弓具メーカーに材料として提供しています。

また、同社はインターネット注文システム「匠の矢」も独自に開発。利用者は全国の弓具店のサイトを通じ、画面上で矢羽根や矢竹などのデザインを自由に組み合わせて“世界に一つだけの矢”を入手できます。

客からの注文は直接同社に入り、製品は客に直接送ります。注文の変更・取り消しの連絡やクレームにも、同社が対応する仕組みです。「(ネット上の)顔が見えない商売では、製品の完成度がものすごく要求される。並々ならぬ神経を使って完成させています」と平さんは話しています。

「フェザークラフト」のあゆみ

1819(文政2)年 高橋寿平が「重幸」の号で矢師を創業。熊本藩主・細川家のお抱えとなる
昭和30年代 4代目・高橋民人氏が分家して大江で「タカハシ弓具店」を開業。当初は兄弟店で競合するのを避け、アーチェリーの普及に取り組んだ
昭和40年ごろ タカハシ弓具店が和弓用では国産初となるアルミシャフトの矢を開発。しかし初め県内弓道界では受け入れられず、関東や関西で先に普及した
1995年 高橋平氏がタカハシ弓具店から独立し、「フェザークラフト」(平成弓具)を設立。1999年、大津町の現在地に本社を開設した平成弓具
2014年 大気圧プラズマ放電による矢竹表面の加工技術で特許を取得
2016年 レーザー光線で矢羽根を成型する技術で特許を取得
2017年 矢羽根の軸に精巧な溝を彫り、接着の精度を増す技術で特許を取得

「平成弓具」店舗情報

住所 熊本県大津町大字杉水2969-6

アクセス 国道57号(菊陽バイパス)から国道325号を北へ約4キロ
営業時間 9時~18時
定休日 日、月曜
電話 096-285-4400
公式HP http://www.heisei-kyugu.com/
CATEGORIES
TAGS