「非日常」味わえる空間を 西銀座通り「マスケラード バー」編 勉強する心忘れずに

「非日常」味わえる空間を 西銀座通り「マスケラード バー」編 勉強する心忘れずに

熊本市のバーテンダーたちの「ちょっといい話、クスッとする話」を、それにまつわるお酒とともに紹介する「熊本のバー探訪」シリーズ。今回は「マスケラード バー」(熊本市中央区新市街 西銀座通り)のオーナー末廣安孝さん(54)に登場してもらいます。

「マスケラード バー」のオーナー末廣安孝さん=2019年9月24日、熊本市中央区新市街

このコンテンツは、熊本日日新聞夕刊で連載した「夜話(やわ)カクテル」(2015年3月~2017年6月)を再構成し、インタビューや店舗情報などを加えました。

(記事中の情報は掲載時点、後段の店舗情報は2019年9月28日時点です。変更されている場合がありますので、来店前に電話でご確認ください)

ウイスキーフロート】 いろんなスタイルで楽しめる

ウイスキーフロート

ウイスキーフロート

常連のお客さまの一人に、とにかくウイスキーが好きな50代の男性がいらっしゃいます。銘柄もさることながら、いろんなスタイルで飲みたいらしいのです。

そんな“欲張り”なお客さまに提案したのが、ウイスキーフロート。水に大きな氷を入れて最後にウイスキーをそっと注ぐと、ウイスキーが上層1センチほどに滞留します。そのまま飲めばストレート、氷に口を付けて飲めばロック、混ぜると水割り、ソーダのチェイサーと一緒に飲めばハイボールです。

ただ、ウイスキーと水を上手に分けるには、水をよく冷やし、常温の酒をつぐという秘けつがあります。ある時、男性に秘けつを「だれにも内緒ですよ」と明かしました。

男性はよく女性と2人連れで来店されるのですが、その度に私の前で堂々と秘けつを自慢げに明かされています。とても楽しそうなので「良し」としましょう。

(2015年9月1日掲載)

【カイピリーニャ】 ブラジルの国民酒とライム、砂糖で

カイピリーニャ

カイピリーニャ

80代ぐらいのご夫婦がいらっしゃったことがありました。初めてのお客さまで、どなたかの紹介で来店したということでした。

2人は普段はお酒を飲まないそうですが、その時は、「ブラジルの酒を飲みたい」と注文されました。そこで、サトウキビを原料とした蒸留酒で、ブラジルの国民酒「カシャッサ(ピンガ)」とライム、砂糖を使うカクテル「カイピリーニャ」をお出ししました。

「こういう味だったね」などと話しながら、懐かしそうに飲んでおられました。お客さまの素性は私たちからお聞きしないので、確かではありませんが、ブラジル移民の経験がある方たちだろうと思います。男性の顔の深いしわに、これまでのご苦労が刻まれているような気がしました。

最後に「分かってくれてありがとう」と言って帰っていかれました。確かその年は、ブラジル移民100周年の2008年だったと思います。

(2015年9月8日掲載)

ソルティローズ】 ウオッカの代わりにバラのシロップ

ソルティローズ

ソルティローズ

バーでは、お酒だけではなく、雰囲気も楽しんでいただきたいと思っています。私の店では、ベルベット生地製の赤いバラを敷き詰めたガラス張りのカウンターを楽しんでいただきたいですね。

18年前、ここに店を出した時、周辺は年間売上高1億円を超える店や、全国的に有名な店などの繁盛店がひしめいていました。そこで何とかインパクトが出せないかと考えついたのが、このカウンターでした。今でもカウンターを目当てに来店されるお客さまもいらっしゃいますので、“作戦”は成功だったようです。

また、お酒を飲めない方もバーを楽しんでいただくため、ノンアルコールカクテルの注文も大歓迎です。バラにちなんだノンアルコールカクテルの一例として、ソルティドッグのウオツカの代わりにバラのシロップを入れるとおいしいですよ。名前は「ソルティローズ」とでもしましょうか。

(2015年9月15日掲載)

【ダイキリ】 「君の気持ちは分かった」

ダイキリ

ダイキリ

熊本市のバーでアルバイトをしていた20代のころ、有名なバーのマスターが客として来店され、「おいしいダイキリを」と注文されたことがあります。

ダイキリはラムを使ったカクテルの代表格。ライムとシロップをシェイクして作ります。私は自分がおいしいと思っていた作り方で出すと、「君の気持ちはよく分かった」と言われました。

その時は意味が分からなかったのですが、後で考えると作り方が自分本位で、お客さまのことは考えていませんでした。「君の気持ち」と言われたのは、そういう意味ではないかと思います。

バーテンダーは接客業。泥酔したお客さまに強いカクテルを出しても十分楽しんでいただけないように、プロなら相手の状態や好みに応じて、最適な酒の種類や分量を考える。30年たった今も自分への戒めとしています。

(2015年9月29日掲載)

末廣さんにインタビュー

「マスケラード バー」で末廣安孝さんに、お店の特徴などを聞きました。(2019年9月24日)

「マスケラード バー」の店内

ベルベット製の深紅のバラを敷き詰めたショーケースのようなカウンターが特徴の「マスケラード バー」の店内

――お店の名前の由来は。

末廣さん 「マスケラード」はバラの一種で、開花時は黄色で、その後オレンジ、赤と花びらの色が変わります。イタリア語ですが、英語読みだと「マスカレード」で「仮面舞踏会」の意味。「お客さまに変化を楽しんでいただきたい」という思いを込めています。

店のシンボルは、全面ガラス張りのショーケースのようなカウンターの内部に敷き詰めた、ベルベット製の深紅のバラ。1997年にオープンした時、ほかの店にない特徴を出そうと考えて作りました。インテリアはバラの深紅に合わせて黒が基調。熊本地震では壁が壊れたり、水が漏れたりして大変でしたが、昨年11月に改装オープンできました。

バーって、ほんの少し〝不健全〟というか、非日常の雰囲気があったほうがいいと思うんです。でも一歩入れば気楽にお酒を楽しめる、そういうお店づくりを心掛けています。

――どんなお客さまが来られますか。

末廣さん 客層は20代から80代まで、男女はほぼ同じくらい。スタンダードメニューは、季節の果物を使ったフルーツカクテル。秋なら巨峰やモモ、梨を使ったものが人気ですね。あとはモルトウイスキー。スコッチなど約400種類置いてあり、飲み方もストレート、ロックなどさまざまです。

末廣さん

ブラジルの国民酒「カシャッサ」に砂糖、ライムを入れ「カイピリーニャ」を作る末廣さん

――モルトウイスキーの楽しみ方を教えてください。

末廣さん ぜひストレートで味わっていただきたいですね。40~50度の強いお酒なので、慣れない人がいきなり飲むとむせてしまいます。まず口に含んで、少し口の中で転がすと、だ液とお酒が混ざり合ってまろやかな味わいになります。その後で飲むと、おなかから芳醇(ほうじゅん)な香りが上がってくるのです。この香りを楽しむのが、モルト好きにはたまらないのですよ。

――バーテンダーとして心掛けていることは。

末廣さん 常に勉強する心を忘れないこと。休みの日は県外の美術館に足を運び、絵や彫刻などの芸術作品を観賞しています。カクテルのイメージやグラスの選び方、お客さまへの提供の仕方などにインスピレーションを受けることが多いですね。美術館巡りのついでに評判のいい店に行き、勉強することもあります。あとは健康の維持。自分の体調がよくないと、お客さまにも楽しんでいただけませんからね。

「マスケラード バー」の入り口

「マスケラード バー」の入り口。通りから階段を下りた地下にある

「マスケラード バー」店舗情報

住所 熊本市中央区新市街3-2 夕立ビル地下(西銀座通り)

アクセス 熊本市電「花畑町」電停から徒歩3分
営業時間 19時~26時
定休日 日曜日(祝日前は営業)
電話 096-356-8166
システム カクテル、ウイスキー1000円~、チャージ料金500円(いずれも税別)
CATEGORIES
TAGS